渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2018年 8月10日(金)~14日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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8月12日(日)17:00~19:00 柳家緑太 柳家小せん 玉川太福* 桂春蝶

「渋谷らくご」桂春蝶がトリをとる会

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プレビュー

 爆笑落語は当然のこと、人情噺や創作落語まで手掛ける桂春蝶師匠。上方落語の若手筆頭、落語の引き出しの多さと品の良さは天下一品!
 現代的な感覚と古典の感覚を両立させる二つ目注目株 緑太さん、聴いている人を疲れさせずに自然に笑わせてしまう小せん師匠、浪曲界の革命児 玉川太福さんとバラエティに富んだ面々で、春蝶師匠までの流れもぜひお楽しみください。最高の予感!

▽柳家緑太 やなぎや ろくた
25歳で入門、芸歴10年目、2014年11月二つ目昇進。古典落語をラップにしている。Youtubeで公開されていて、おそるべき完成度。Adobe製品を使いこなしチラシ作りからラップの映像編集まで難なくこなす。最近は自作のTシャツをつくってしまうほど器用。

▽柳家小せん やなぎや こせん
22歳で入門、芸歴22年目、2010年9月真打ち昇進。橘家文蔵師匠と入船亭扇辰師匠と音楽ユニット「三K辰文舎」としても活動中。先日水曜どうでしょうの聖地巡礼をした。この夏、夏バテをしている。

▽玉川太福 たまがわ だいふく
1979年8月2日、新潟県新潟市出身、2007年3月入門、2012年日本浪曲協会理事に就任。2017年文化庁芸術祭大衆芸能部門の新人賞を受賞。新潟に里帰りするときは畑仕事を手伝う。この夏は帰りに新潟万代の黄色いカレーを食べて東京に戻った。

▽桂春蝶 かつら しゅんちょう
19歳で入門、芸歴25年目、2009年8月、父の名「春蝶」を襲名する。積極的にツイートをしている。上方落語協会のファンイベント「彦八まつり」の実行委員長に選出される。8月15日(水)17時からユーロライブにて渋谷らくご特別興行『桂春蝶「ニライカナイで逢いましょう〜ひめゆり学徒隊秘抄録〜」を聴く会』が開催されます。

レビュー

文:月夜乃うさぎTwitter:@tukiusagisann 趣味:茶道 猫のいるカフェ巡り

柳家緑太(やなぎや ろくた) 「三枚起請」
柳家小せん(やなぎや こせん) 「ガーコン」
玉川太福(たまがわ だいふく)/玉川みね子(たまがわ みねこ) 「湯船の二人」
桂春蝶(かつら しゅんちょう) 「高尾」

 8月の渋谷らくごはお盆の時期に開催される。13日には迎え盆が行われている地域もあり、15日は終戦記念日を控えて3階の映画館では「野火」が、2階では桂春蝶師匠の独演会「ニライカナイで逢いましょう」が行われた。落語でも噺によってかけられる季節が違う場合もあり、今回も8月のお盆ならではの季節を噺や歌から味わえて楽しいひとときで、江戸落語、上方落語、浪曲、ガーコンというバラエティ豊かな神回をありがとうございました。

柳家緑太「三枚起請」

  • 柳家緑太さん

    柳家緑太さん

 老獪なご隠居のような声と細身で今風な容姿の緑太さん。花録師匠のお弟子さんで女性ファンがキャッキャしながら、緑太さんに話しかけているのをたまにイベントでみかける。女性に人気がある落語家さんかも知れない。知り合いでも緑太さんを好きな方がいて、高座で緑太さんを拝聴するときは、つい、注目してしまう。
今回の「三枚起請」は吉原に通う男性3人が、一人の遊女に騙されていたのを知るところから噺がおもしろ可笑しく展開して行く。(我こそは喜瀬川の間夫である)と信じていた男性側から見ると喜瀬川はとんでもない悪女であろう。しかし、喜瀬川側は、働く身の上で、一人でも多く自分のお客さまとして通わせなければいけない。通わせる方法としてあちこちに、色仕掛けをしたのかと思うと、「殴るなら私を見受けしてからしておくれよ」という返しに、遊女として働く喜瀬川の本音を感じた。見受けするほどの覚悟もお金もないお客さましか着瀬川にはいないから、毎年「来年の3月にはあがる」ことができないのだ。緑太さんならではの「じゃーん」というセリフやギャグが笑えて、3人の男性がとても魅力的に感じる。

柳家小せん「ガーコン」

  • 柳家小せん師匠

    柳家小せん師匠

 本寸法の美しい落語が定番の小せん師匠。今回、その小せん師匠が座布団の上で歌い出して驚いたのは、私ばかりではないと思う。現代で起きていることを歌に取り入れる「歌は世に連れ、世は歌に連れ」とよく通る声で昭和歌謡を始めとした当時の世相を表す流行歌が紹介されていく。今回は玉川太福さんがいらっしゃるので、浪曲を拝聴する覚悟はして家を出たが、小せん師匠から軍歌まで拝聴するとは!
 川柳川柳師匠が寄席でかける「ガーコン」という有名な作品だと後からわかった。終戦記念日が近いといえど、なんというサプライズ!しかも流行歌もジャズも軍歌も、小せん師匠は、自分の持ち歌のように歌い、時には座布団の上でリズムを踏む。
他の演者さんの定番を引き継いでいく落語の伝統芸能らしさを「ガーコン」で味わい、胸が熱くなる。

玉川太福「湯船の二人」

  • 玉川太福さん・玉川みね子師匠

    玉川太福さん・玉川みね子師匠

 最近「太福マガジン」が毎月行われていてあちこちで大好評な太福先生。寄席にもご出演されていて、お名前を拝見しない日はないこの頃である。特に新作浪曲「地べたの二人」はシリーズ化しているようである。確かに浪曲や講談で残念なのは途中で「お時間になりました。続きはまた」と、終わってしまうことだ。長講大歓迎、落語も講談も浪曲も、好きで続きが気になる作品であればあるほど、シリーズ化はありがたい。
今回の「湯船の二人」も「地べたの二人シリーズ」である。
 下町の銭湯の描写がのびやかな声で語られるのは気持ちよい。銭湯の湯気や脱衣所の会話ですっかり銭湯の大きな湯船に入り汗をかきたくなった。

   

桂春蝶「高尾」

  • 桂春蝶師匠

    桂春蝶師匠

 春蝶師匠をはじめて拝聴したのは何年前だっただろうか。イケメンというより男盛りの男前。関西弁の艶っぽい声に容姿端麗でありながら、話術で爆笑させられる感動巨編で涙を誘う芸の達者さ。
上方落語と不思議な心霊体験の噺もどれも心に残る。抱腹絶倒する爆笑落語も、東西の落語の違いに感心したりだけではない、春蝶師匠独自の世界が落語から垣間見れて春蝶師匠の落語はシンプルに楽しい。
 今回はマクラで軽く「○○念仏」で客席を盛り上げた後、上方落語「高尾」を熱演された。これがお盆の季節にぴったりで「お香」焚いて死んだ奥さんに逢おうと必死になっている旦那の姿に幽霊でなくともいじらしくほろっと来た。15日も戦いの中で思いやる帰らぬ人々と生きている人々との何かに感激して涙が止まらなかったが、この12日の回の春蝶師匠の落語も安定の素晴らしさである。

【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」8/12 公演 感想まとめ

写真:渋谷らくごスタッフ
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