渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2018年 8月10日(金)~14日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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8月13日(月)18:00~19:00 雷門音助 神田松之丞**

「ふたりらくご」神田松之丞、講談入門

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プレビュー

 『神田松之丞 講談入門』を出版した神田松之丞さん。先日は銀座博品館劇場で7日間連続の独演会を成功させ、演芸界ではいまもっともチケットの取りにくい演者です。
 音助さんは、松之丞さんとおなじく落語芸術協会に所属する若手二つ目。将来を嘱望される待望の男子誕生といった存在感で、落語王子といってもいいほど端正な落語です。贅沢な一時間にようこそ!
 「冬は義士 夏はお化けで 飯を食い」  渋谷らくごを大切にし続けてくれているこの日の松之丞さんがなにを繰り出すか!?

▽雷門音助 かみなりもん おとすけ
23歳で入門、芸歴7年目、2016年2月二つ目昇進。私服はチェックシャツを着こなし。レトロで可愛らしい眼鏡をかけている。先日舟漕ぎ体験をしたが、アマチュアとは思えないほどの手付きで櫓を操り船を動かした。学校寄席で生徒の心をつかむのがうまい。

▽神田松之丞 かんだ まつのじょう
24歳で入門、芸歴11年目、2012年5月二つ目昇進。プロレス好き。この夏『神田松之丞 講談入門』を出版した。TBSラジオにて「神田松之丞問わず語りの松之丞」が日曜日23時から放送中。最近、憧れの伊集院光さんに会うことができた。

レビュー

文:キュウぴろTwitter:@piroguramu 芸人

雷門音助(かみなりもん おとすけ) 「長短」
神田松之丞(かんだ まつのじょう) 「村井長庵 雨夜の裏田圃」

雷門音助さん

  • 雷門音助さん

    雷門音助さん

まず、僕は落語をよく知りません。ちゃんと落語を見たのもこれが2回目。そんな僕が落語に触れて思っていること、僕の中で落語は「不思議体験」だということです。要するに「なんじゃ こりゃ?」との出会い。それが今の僕にとっての落語。この日の雷門音助さんの話は「気の短い男と気の長い男の会話」 ゆっくりと喋る気の長い男と、せっかちで早く喋る気の短い男、 この2人の全く違うリズムの喋りを交互に使いこなし、1つの会話劇を見せていく。僕の目の前には2人の男が確実にいて、目をこらすと、落語家が1人いるだけ。なんじゃこりゃ? そう、演技力。声色、表情、リズム、全てを瞬時に変換させ、別人格を演じる 技の力。しかも、普通の2人ではない、極端に性質の違う2人。その見事な切り替えに見入ってしまう。そして、そんな話の随所に潜ませた「そんな奴いねぇだろ」と思わせるほどの大げさな形態模写。例えば、気の長い男の「タバコを吸う」という行為は、極端な表現として、まず吸い口をおでこに当て、そこからゆっくり1分くらいかけて口元まで下ろしていく。そして舐めるように吸う。加えてマヌケな表情。そんな奴いねぇだろ!と思うと笑えてしまう。そして、なるほど、こういう表現もあるのかと発見させられる。落語を見ていると、こういった不思議な体験をいくつもするができる。そして、体験は、実際に体をその環境に置かなければ出来ないもの。落語に対して少しでもつまらなそうだとか先入観を持っている人がいたら、一度でいいから寄席に足を運び、僕の言う不思議体験をしてもらいたい。落語は面白いですよ。笑

神田松之丞さん

  • 神田松之丞さん

    神田松之丞さん

僕の落語の楽しみ方の1つに、その落語家さんが舞台袖から出てきて座った瞬間の第1声があります。どんな声で、どんな話し方をするのか、そこが僕の中で最初に注目するところ。 神田松之丞さんは、僕の全神経を一気に集中させる、そんな存在感がありました。重みのある声と表情、やがて軽やかに体でリズムを刻んで喋っ ていく。いっそう喋りと体が一体化してしまっているような感 じ。まるでものすごく上手にスケボーを滑る映像を見ているような。スケボーも体の一部のような。スポーツ的感覚。重みのある力強い声と軽やかなリズム。そのある種矛盾したような話し方に僕は一気に惹きつけられました。この人、なんか 怪しいぞ、と。そして話に入るとその怪しさは確信に変わりました。内容は怪談。初めて聞く怪談。 話の内容は、言ってしまえばただ人が人を殺す話。しかし、その話の伝え方が不思議。講談と呼ばれるものらしいのですが、僕は全くの初見。膝下に台を置き、手に持った扇子のようなものでそれを叩き、音を立てながら話す。 その表現は、ものすごく感覚的な表現でいうと、話が飛び出してくる感じ。大げさでなく、3D映画を見てるような。目の前で1人の人がただ喋っているだけとは思えない立体感。神田松之丞さんの講談の運動神経のようなものをひしひしと感じ、見てるうちに、もう声なのか音なのか分からなくなりただただ圧倒されてしまいました。

神田松之丞さんの落語(スタッフ注 「講談」です)を聞きながら、落語(スタッフ注 「講談」です)はいろんなものを楽しむものなのだとなんとなく思いました。話の内容、演技、そ して技。その凄味を味わうもの。 僕は無知で単純なので、詳しい人からしたら的外れな感想を言ってしまっているかもしれないけれど、とにかく何か凄いものを 見た気がして、ふわふわした気分で帰りました。 これから出会う落語家さん一人一人に、こんな違った体験ができるとしたら、ただただ人生は楽しいなと思いました。

【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」8/13 公演 感想まとめ

写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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