渋谷らくごプレビュー&レビュー
2020年 1月10日(金)~14日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
押せばひき、ひけば押す。客席との間合いを常に図りながら一席の落語を演じていく。落語はお客様との共同作業で完成します。その駆け引き上手たちの競演です。実力派真打3名に、実力派二つ目(?)の文吾さんが揃いました。
▽橘家文吾 たちばなや ぶんご
21歳で三代目橘家文蔵師匠に入門、芸歴6年目、2018年11月二つ目昇進。本名が「中西翼」とカッコいい。昨年末は、エレクトーン世界大会1位の方とコラボしてみた。くるぶしまでの靴下を愛用している。
▽雷門小助六 かみなりもん こすけろく
17歳で入門、芸歴20年目、2013年5月真打ち昇進。インスタグラムをやっているが、ほとんどの写真が猫、とにかく猫を可愛がっている。先日の渋谷らくごの楽屋では遊雀師匠の鉄道話に驚いていた。お酒をたくさん飲んだ時はポカリで酔いを覚ます。
▽三遊亭遊雀 さんゆうてい ゆうじゃく
23歳で入門、芸歴31年目、2001年9月真打昇進。後輩の落語家さんのお兄さん的存在。酒豪。高校生の時、スーツを着て変装してちょっぴり大人な映画館にこっそり入ったことがある。大変な鉄道好きで、スイッチが入ると鉄道話が溢れ出す。
▽橘家圓太郎 たちばなや えんたろう
19歳で入門、芸歴38年目、1997年3月真打昇進。怒りん坊なキャラクターで、オヤジの小言マシーンぶりは渋谷らくごでも爆笑を生んでいる。将来PTAの会長になるのではないかと危惧している。普段は優しく、裏表のない気持ち良い人なのです。
レビュー
2020.1.11(土)17-19「渋谷らくご」
橘家文吾(たちばなや ぶんご)-雪とん
雷門小助六(かみなりもん こすけろく)-禁酒番屋
三遊亭遊雀(さんゆうてい ゆうじゃく)-真田小僧
橘家圓太郎(たちばなや えんたろう)-棒鱈
1月11日、カレンダーを見ながら考える。
和スイーツやお茶が好きです。
実は、子供の頃は和スイーツより洋菓子、特に、バウムクーヘンが好きでした。少しヨーロッパへ行って、現地でホームシックを味わったり、日本文化に飢える体験をして、帰国した時に飲んだ、ペットボトルのお茶がとても美味しく感じ、日本らしい景色や日本語が聞こえるという日本にいれば当たり前のことに感動してからでしょうか。
帰国しても、何度も海外へ旅立ち、外国で暮らす人も少なくないのに、私の興味は、内向きになり、お茶や美しい和菓子、和のものが多くなって行きました。
渋谷らくごも、落語が、演者さんが、好きな演目が、響き合うように関連して、点から線へと連鎖して行ったものです。落語や講談は楽しいです。
令和2年1月も有意義な時間をすごせました。
橘家文吾さん
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橘家文吾さん
前座さんとして働いていた時から華やかで、存在感がある。
そして語りの上手さでいつの間にか真っ白な雪景色の中にいる気分にさせる。
人生の場数を踏んだような女将さんになったかと思えば、田舎から出て来て恋患いに苦しむ若旦那にもなる。文吾さんの落語は声質のせいか、淡々とクールに響いてくる。
音もなく降る雪景色の中、淡い恋に胸を焦がしながら、自分は美しいお嬢さまにふさわしくないと思う若旦那の恋に憔悴する様子の文吾師匠の語りは、お正月の初席の茶会に出される和菓子『花びら餅』を思わせる。
まだ踏み荒らされていない雪のように白い『花びら餅』のような恋、、、、。しかし、夜が明けると真っ白な雪を人が踏み荒らし、雪は日の光の中、少しづつ溶けて行く。文吾さんの語りが終わると、私たちは現実へ戻り、登場人物も、淡い夢から醒めて現実を思い知る。 雪景色は、やがて消える儚さが尊いのだと思わせる一席でした。
雷門小助六師匠
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雷門小助六師匠
猫ちゃん好きとして、私も密かにフォローしております。『これは○○師匠の流れの演目○○で』と、真面目に落語の伝承を語られる反面、皆様でお酒の席を楽しまれる小助六師匠は、いつも落語家さんや講談師の方々でのお酒の席のまくらが楽しい方です。特に落語芸術協会の酒盛り噺を聞くと、皆様仲良くていいなぁと思います。小助六師匠の酒盛りのまくらに羨望のまなざしを送る、落語も好きで宴会も好きなお客さまも多いのではないでしょうか。
そんなお酒が好きな小助六師匠は、今回『禁酒番屋』に入られました。お酒に酔って悲惨な事故が起こる。お酒が争いや事故の原因になるのが嫌で『禁酒番屋』を置いたお殿様の気持ちから入る小助六師匠のシリアスな語りは噺がピリッと絞まる気がして好きな処です。
好きなものを自ら絶つ約束をして絶つならともかく、強制の禁酒番屋なので反発も出て来てルールを破ろうとする人も少なくないのでしょう。
しかし、お酒の噺でありながら『カステラ』というお菓子の名前が出て来て、平和な『ぐりとぐら』というネズミたちが絵本に出てくるカステラの話を思い出しました。森の皆んなで、材料を運んで、大きなフライパンでカステラを焼いて、森の動物たち皆んなで仲良くカステラを食べるのです。
禁酒番屋の番屋を置くお殿様の心は、平和を願うあまりお酒を禁止しましたが、その前は皆様で小助六師匠のように宴を楽しんでいたと思われます。
お殿様の気持ちが癒えて、いつかぐりとぐらが森の皆んなで仲良くカステラを作って食べたように、禁酒番屋の登場人物たちも、好きなものを呑んだり食べたりして皆様で宴会を楽しめる日が来るのを願います。
三遊亭遊雀師匠
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三遊亭遊雀師匠
渋谷らくごでは、だいたい3番目に出て来られて、楽屋の状態をリポートする処もまた楽しい師匠です。そして、一気に盛り上げるのが本当に上手で、笑わせるだけ笑わせられた後に毎度この師匠の芸達者さに感心することになるのです。
今回の『真田小僧』は、おませな真田小僧が大人を出し抜いてお小遣い稼ぎに興じるのが見ものです。この『真田小僧』の父親からは、好きだから気になるという家族愛を感じます。
『好きな女房が自分の居ない時に何をしているか』どこか疑う気持ちにつけこむ罠や、騙されても、あの子は賢い、いや悪賢い、講談の『真田』になるか口が上手いので詐欺師になるのではと心配するのも、子を想う親の愛のなせる技なのでしょう。遊雀師匠は特に、軽く楽しい口調なので、悪知恵を働かせる子でも何故か憎めない、かわいい印象が残りました。
橘家圓太郎師匠
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橘家圓太郎師匠
きっとスポーツでも落語でも稽古や練習で落語や身体を鍛え上げている方だからこそ、時に辛辣にみえることも。
そんな圓太郎師匠が今回のトリで選んだのは『棒鱈』でした。無礼な人が無礼な人をけなして喧嘩になるという噺で、お酒の席でのそれぞれの態度、あらゆるお客様に合わせていく芸者たちの臨機応変ぶり」がにぎやかで大いにツボでした。
【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」1/11 公演 感想まとめ
写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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