渋谷らくごプレビュー&レビュー
2020年 1月10日(金)~14日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
自分の語り方の「型」をすでに完成させている演者さんたちによる爆笑必至の落語会。
3名の若手真打があがり、最後に本年真打に昇進する鯉八さんの一席です。いまから鯉八さんを追いかけよう!
渋谷らくご2015,2017,2018年の大賞受賞者 瀧川鯉八、本年もよろしくお願いします。
▽台所おさん だいどころ おさん
31歳で入門、芸歴18年目、2016年3月真打昇進。自分よりも年下の師匠に入門をする。落語家になる前に、東京から大阪まで歩いて旅したことがある。いま缶コーヒーでは「Café de BOSS ほろあまエスプレッソ」がお気に入り。新年会に参加すると、とにかく食べる。
▽立川こしら たてかわ こしら
21歳で入門、芸歴21年目、2012年12月真打昇進。フットワークが軽く、日本のみならず海外でも独演会を開催。マクドナルドやファミレスを好み、コーラを飲む。ピアスからワッペン、そしてインドの香辛料まで幅広く通信販売している、いま2020福袋発売中。
▽古今亭志ん五 ここんてい しんご
28歳で入門、芸歴16年目、2017年9月真打昇進。平成30年度国立演芸場「花形演芸大賞」で銀賞。渋谷らくごの公式読み物どがちゃがでは、志ん五師匠の似顔絵コラムが掲載中。1月1日より、志ん五LINEスタンプが発売になった。
▽瀧川鯉八 たきがわ こいはち
24歳で入門、芸歴13年目、2010年二つ目昇進。2020年5月に真打に昇進することが決定。寒くなってくるとモンベルのウィンドブレーカーを着る。街中華も大好き。鯉八さんの似顔絵のLINEスタンプが発売中、スタンプは2種類ある。
レビュー
台所おさん(だいどころ おさん)-金明竹
立川こしら(たてかわ こしら)-疝気の虫
古今亭志ん五(ここんてい しんご)-ん廻し
瀧川鯉八(たきがわ こいはち)-暴れ牛奇譚
新春の空気、というには大分生ぬるくなってしまった、のは新年に入って12日も経ったからなのか、それとも大暖冬と呼ばれる気候のせいなのか。それでも、演者の方々に代わる代わる「あけましておめでとうございます」と言われると、「あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いいたします」と返したくなる気持ちはやはり1月ならではのことだと思う。
台所おさん 「金明竹」(きんめいちく)
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台所おさん師匠
そんな落ち着きのない(と自称する)師匠が、落ち着きのない間抜けな与太郎というキャラを演じると、どんなに抜けていても、愛すべき存在に変貌する。不思議なのは、与太郎こそが正しい、間違ってない!と思ってしまうことだ。逆に与太郎の周囲の「まっとうな」人間を小賢しく、やかましく見えてくる。おさん師匠の与太郎はそんな愛すべき与太郎なのだ。
この日の見せ場は、関西弁の長広舌にもあった。今インターネットで「金明竹」の粗筋を検索して、この長広舌に含まれる漢字はわかったが、漢字を知っただけでもなんのことやら。そんな台詞だったので、噺の最中は、わからない、わからない、それこそこちらが与太郎化する。自分が与太郎化する楽しみ、そうだこれこそがおさん師匠の醍醐味なのだ。
立川こしら 「疝気の虫」
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>立川こしら師匠
そんなこしら師匠は、「落語はできない」と言いつつ、実は噺の基本はしっかり古典だ。そこに様々な現代的なネタを差し込み、それに対する観客の反応を見て、観客がどんな層かを判断されている。その差し込むネタの幅広さと言ったら。時代の先端を行く師匠だけあって、ネタが豊富すぎるのだ。このネタの展開に最後までついていけるのか、と一瞬不安になったりする。でも基本は古典だから、行き着くところに行き着く、安心していい(時に普通のサゲのその先にまでいくこともあるけれど)。わかるネタだけ笑えばいいのだ。「古典」プラス「最先端」、そんな楽しみを提供してくれる師匠であり、どこまで師匠の繰り出す小ネタについていけるかで自分の「先端度」を計ることもできる。こしら師匠の最先端度にどこまでついていけるか、師匠にはいつも試される。
古今亭志ん五「ん廻し」
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古今亭志ん五師匠
お正月の一門の様子を伝えるまくらから、酒飲みが集まる「ん廻し」の噺へ。集まっている人間たちのキャラが濃い。与太郎風の男から、お師匠さんに5年通ったという取り澄ました風の男、あるいは喧嘩っぱやそうな男など(師匠連の名前も聞こえたような)、単に話しているだけでも面白そうな輩が集まり、木ノ実田楽を賭けてかくし芸を披露したり、「ん」のつく言葉を言っていったりして遊んでいる。江戸っ子が無邪気で楽しそうであり、彼らへの愛情の深さまで感じる志ん五師匠の噺なのだった。
瀧川鯉八「暴れ牛奇譚」
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瀧川鯉八さん
その本編は、預言者たる(副)長老とそれに振り回される集落の人々の物語。特に後半は、来たる災害から集落を守るために生贄とされた女性の葛藤だが、それがまくらの40代女性と見事に対になっていた。つまり、美貌の、ゆえに無神経な女性がテレビ番組の女性だとすると、同様に集落内の美人(の存在)によって傷つけられ、集団から生贄にまでされる女性がこの噺の女性なのだった。男女問わず世の中のおそらく多数が多少ともこの後者の女性側の経験をしたことがあるはずだ。最後は、生贄にされた彼女の、どこか夢のような描写だったが、どうか幸せになっていただきたい。
全てのまくらがこうであるべき、とは個人的には思わない。たっぷり張られた伏線を、理解できるだろうかと緊張してしまい、落語を気軽に楽しめなくなりそうだから。それでもこの鯉八さんのまくらは一つの理想形のように、このまくらなくして、この落語が成り立つのか?と思わせられるほど、引き込む力のあるまくらと、その引力に負けない噺だった。
【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」1/12 公演 感想まとめ
写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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