渋谷らくごプレビュー&レビュー
2020年 3月13日(金)~17日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
古典落語の担い手のなかにあって、王道 柳家の若手真打、小八師匠。やる気のなさそうな、けだるい雰囲気のなかにギラリと光る技。前には、柳家の大ベテラン 小里ん師匠が、だれにも媚びず、おもねらず、それでいてだれしもがひきこまれる落語を披露します。 期待の若手 昇羊さん、マクラ、古典から新作、あらゆる方面から笑わせてくれる百栄師匠、どこをとっても見どころしかない土曜の昼公演です。
▽春風亭昇羊 しゅんぷうてい しょうよう
1991 年 1 月 17 日、神奈川県横浜市出身、2012 年入門、2016 年二つ目昇進。もうすぐ誕生日! 飲み会ではペースメーカーとなり、 一番盛り上がった時にしっかりと散会させる技術を持つ。先日、漢字検定2級を受験した、昨年よりも手応えがあった。
▽春風亭百栄 しゅんぷうてい ももえ
年を取らない妖精のような存在。さくらももことおなじ静岡県清水市(現・静岡市)出身、2008年9月真打ち昇進。
落語協会の野球チームでは、名ピッチャー。アメリカで寿司職人のバイトをしていた。日常生活の様子はわからないが、猫好き。
▽柳家小里ん やなぎや こりん
21歳で入門、芸歴50年目、1983年9月真打昇進。大の映画好き。浅草のパチンコ屋に出没する。浅草演芸ホールに出演する落語家さんが突然来られなくなり興行が滞りそうな時は、前座さんはパチンコ屋に走り、小里ん師匠を探す。浅草出身なので祭りがとにかく好き。
▽柳家小八 やなぎや こはち
25歳で柳家喜多八に入門、芸歴17年目、2017年3月真打昇進。ファッションにこだわっていて、冬は裏地が真っ赤なコートを着る。最近はちょっとずつツイッターを活用している。楽屋ではモンスターを飲んでいることが多い。
レビュー
春風亭昇洋(しゅんぷうてい しょうよう)-笠森お仙
春風亭百栄(しゅんぷうてい ももえ)-お血脈
柳家小里ん(やなぎや こまん)-蜘蛛駕籠
柳家小八(やなぎや こはち)-百年目
『答えは、あなたのなかに』
やってもやらなくても文句を言われるのなら、やって文句を言われた方が良いと思うほうだ。海援隊方式。いつでも私には立ち止まっている時間などなく、傷だらけになろうとも、翼が折れようとも、天使なんかじゃないと思っても、結局、進もうと決意した者だけが進むに値するし、笑いたいと思う者だけが笑うに値する。
宝くじを買わなければ宝くじに当たる可能性が無いように、会を開かなければ会に行って、素敵な演芸に出会う機会も無くなる。ならば、たとえ宝くじに外れようとも宝くじを買う気持ちと同じように、会を開いて会に行って、素敵な演芸に出会った方が得である。魚は水があるからこそ動ける、猿は木があるから昇降できる、演芸好きは演芸の会があるから笑える。だから、会が開かれるということは、とても重要なことなのだ。
どんなに努力したところで、人生は一度しかない。くよくよ立ち止まっている時間など無い。見えない不安に怯えるよりも、今ある幸福に笑おう。私はそう思う。
渋谷らくごは、流行りの細菌に対して細心の注意を払っていた。難しい言葉はよくわからないのだが、次亜塩素酸水を使って超音波噴霧をしているらしく、会場はとてもクリーンな感じがした。
細菌が入る余地もないほど、文句の付けようもないほど万全の態勢で落語会が開かれた。サンキュータツオさんを始め、スタッフの皆様もマスクをされており、会場に集まったお客様にとって、これ以上無いほどの気配りがなされていた落語会に参加し、私はとても感動した。
全員が、笑うために渋谷らくごに集まっている。開催する側も参加する側も、どちらも覚悟と、万全の体調で望んでいる。その事実が、私の胸を打った。
今宵は、どこをとっても見どころしかない会である。どこをとっても輝いていた四人の姿を、これから記すことにしよう。
春風亭昇羊 笠森お仙
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春風亭昇羊さん
そんな話題から、先月ネタおろししたばかりの疑似古典を語り始めた昇羊さん。本当に不思議なお話である。古典の中に怪獣のようなお婆さんが出たり、随所に工夫がなされていて面白い。語りのリズムの緩やかさが心地よかった。
春風亭百栄 お血脈
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春風亭百栄師匠
百栄師匠の独特の声色や、捲し立てるようなスピーディな語りが面白い。見た目はのんびりしているようでも、リズミカルに流れるような語りになったのは、マクラを喋りすぎてしまったせいだろうか。それでも、きちっきちっと細部を語りながら、額に押すと極楽へ行けるというお血脈について語り始める。
お血脈によって極楽へ行く人が増えたため、閑散とした地獄を嘆いた閻魔様が規制を緩くし、地獄行きになる者を増やすのだが、「そんな理由で地獄行きなのか!?」と思ってしまうほど、情けない理由で地獄行きになった人々の姿が面白い。
地獄からお血脈を盗むために地上に召喚された大泥棒の姿も、現代的な雰囲気に飲み込まれて何とも情けない。何の解決もなされないまま終わって行くお話の贅沢さが素晴らしかった。
柳家小里ん 蜘蛛駕籠
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柳家小里ん師匠
駕籠というのは、今で言えばタクシーのようなもので、大きな駕籠の中に客が入り、前後に担ぎ手がいて、えっちらおっちらと目的の場所まで人力で移動する乗り物である。
そんな駕籠に何とかして乗ってもらいたいと思う駕籠舁きの姿が面白い。すぐ傍の店の主に声をかけたり、酔っ払いに声をかけられたり、不思議な客に声をかけたりと、商売はなかなか上手くいかない。特に、酔客の様子が面白く、同じお話を何度も繰り返してしまう様子が面白い。絶対に絡まれたら面倒な客なのに、延々と同じ話をするのだが、毎回新鮮な感動で語る姿に笑ってしまう。日常生活でも「あ、この話、前にも二~三回聞いたな」と思う話でも、さも初めて聞いたかのような素振りをしなければならないような状況がある。そんな光景を見ているようで面白かった。
ようやく客を乗せたかと思っても、不思議な趣向の客を乗せてしまい、最後はなんだかよく分からないオチでお話が終わる。何の教訓もなく、ただただ駕籠舁きが振り回されるだけのお話である。それでも、小里ん師匠の語りには正に江戸の雰囲気があり、古典落語を聞いたなぁ、という思いになるのだった。
柳家小八 百年目
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柳家小八師匠
とても素敵なお話で、コミカルで面白い。小八師匠らしい番頭さんや大旦那の姿が実に良かった。ほのぼのとしていて良い。
たとえ、周りにはひた隠しにしていたことが、ふとした弾みで露見してしまったとしても、懐の大きな人に包まれれば、人は立ち上がれる生き物なのかも知れない。
どれだけ心が傷つこうとも、どれだけ恥ずかしい思いをしようとも、前に進むか、立ち止まるかは、結局のところ、自分しか決めることができない。
大きな不安を前にして、どう行動するべきか。結局、答えはあなたのなかにしかない。
そんなことを感じながら、終演後、外に出ると大雪が降っていた。まるでスノードームの中にいるかのような思いを抱きながら、私は私だけの答えを抱えて会場を去るのだった。
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「渋谷らくご」3/14 公演 感想まとめ
写真:渋谷らくごスタッフ
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