渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2022年 6月10日(金)~15日(水)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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6月12日(日)14:00~16:00 柳亭市童 立川吉笑 橘家文蔵 桂佐ん吉

「渋谷らくご」カリスマたち 上方らくご:佐ん吉師匠登場

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プレビュー

 独自の活動の幅を広げ、ほかにかえの利かない演者たちが集合しました!
 昨年も出演していただいた上方の桂佐ん吉師匠が本公演の主任、すでに実力はだれもが認める二つ目の市童さん、吉笑さんがお客様の想像力の限界に挑戦します。芸歴35年の文蔵師匠、演目選びから噺の緻密さまで生で堪能する醍醐味に溢れた高座が見ものです。乞うご期待!

▽柳亭市童 りゅうてい いちどう 落語協会
18歳で入門、芸歴12年目、2015年5月二つ目昇進。インスタグラムにラーメンの写真を積極的にアップする。最近ボードゲームにはまり続けている、「マーダーミステリー」という謎解きのゲームを最近プレーした。ストレスがたまったときは辛いものを食べる。

▽立川吉笑 たてかわ きっしょう 落語立川流
26歳で入門、現在芸歴12年目、2012年4月二つ目昇進。「渋谷らくご大賞2021」&「創作大賞 2021」初のW受賞者。もともとは酒豪だったが、酒断ちをしていまは炭酸水で過ごす。ちょっとした作業をするときは、コンセントが設置されているのでベローチェを選ぶ。

▽橘家文蔵 たちばなや ぶんぞう 落語協会
24歳で入門、芸歴35年目、2001年真打昇進。ツイッターで、朝ご飯や酒の肴など、日々の料理をつぶやいている。最近つくった料理は「新玉ねぎと2時間ボイルした豚バラとキノコがたっぷり入ったクリームシチュー」。最近はお腹が減って目が覚めてしまう。

▽桂佐ん吉 かつら さんきち 上方落語協会
2001年17歳で桂吉朝師匠に入門、現在芸歴21年目。先日讃岐うどんのお店を1日で4軒巡った。インスタグラムでの発信の仕方がイマイチわかっていない。トイレを我慢しているときは、ツイッターをして気を紛らわせる。先日頭皮の状態を診断してもらった。

レビュー

文:とも朕 Twitter:@toyono2010 (ともちん。シンガポール育ち、帰国子女。落語、漫画、読書、映画が大好き!)

柳亭市童(りゅうてい いちどう)-おしくら
立川吉笑(たてかわ きっしょう)-ぞおん
橘家文蔵(たちばなや ぶんぞう)-夏泥
桂佐ん吉(かつら さんきち)-仔猫

最近「大河への道」という面白い映画を観ました。千葉県香取市の人々が地元の有名人・伊能忠敬を大河ドラマにしようと奔走するうちに、忠敬の偉業を支えた沢山の名も無き協力者達の努力に気付く、という感動の物語。
原作はなんと立川志の輔師匠の創作落語!こんな素敵な映画にもなってしまうなんて、落語が持つ可能性の豊かさに驚きました。
今日の皆さんも、様々なチャレンジを行う創造力豊かな方々ばかり!(市童さん→ラップ、吉笑さん→三題噺、文蔵師匠→バンドやお料理)。
そして、トリは初めましての佐ん吉師匠。上方落語は初めて聴くので本当に楽しみです!

柳亭市童さん「おしくら」

  • 柳亭市童さん

雨の日曜日、開口一番は市童さん。子ダヌキのような可愛いらしいお顔を見るだけで幸せな気分になれます。
さて、今日のお噺には、字の読めない3人組が登場。旅行中ですが宿屋の看板が読めないため、宿泊先が分からず辿り着けない!しかし、人に聞くのは江戸っ子のプライドが許さない。というわけで、驚きの方法で宿に自分達を見つけてもらうよう仕向けます!(こんなことするくらいなら素直に人に聞けば良いのに。江戸っ子って難しい。。)
そして無事宿にチェックインした後も、ピンチは訪れます。昔の旅館はお風呂や食事だけでなく、夜伽の女性も手配したのですねー。ふむふむ。
「平林」や「目薬」など字が読めない人がトラベルに巻き込まれる笑い話は数々あれど、これはプラスαがあって面白かったです。更に、市童さんの少しとぼけた演技や表情がお噺に似合っていて、とっても光っていました!

立川吉笑さん「ぞおん」

  • 立川吉笑さん

ダイエット続行中の吉笑さん、引き締まって精悍な顔つきに!
さて、まくらは上方の噺家さんとの思い出。上方の噺家さんには陽気な方々が多いそう。今日のトリの佐ん吉師匠とは、オンライン将棋で対戦したことがあるそう(とってもお強いそうです)。又、桂三四郎さん繋がりで「各地の方言でラジオ体操」という「けったいな」お仕事を受け、「ラジオてーそーでーいちー、ひいふうみい」と、江戸弁でのラジオ体操を担当したとか。。(ちなみに吉笑さんは京都出身)
今日のお噺は「ぞおん」。商売熱心すぎて超越的意識ゾーンに突入してしまう番頭さん。F1レーサーのようですね。そして、その超人的番頭さんに振り回される奉公人達。偽古典+SFのユニークな創作落語は、正に宇宙的面白さ。この方の世界観は、本当に唯一無二ですね。
さて、3月の三題噺から4ヵ月連続で、毎月観ているマイ・フェイバリット吉笑さん。同じ演者さんを続けて聴いていると、今まで「点」だった魅力が、こんなこともあんなこともこの人の面白さなんだ、と繋がり「線」になって魅力倍増に感じられました!(ダイエットでハンサムになりつつあるところも。。笑)

橘家文蔵師匠「夏泥」

  • 橘家文蔵師匠

夜中に胸が苦しくなり、救急車で運ばれたという文蔵師匠(!)。救急隊員に名前を聞かれ(←多分意識があるかの確認)、苦しさの中で朦朧としながらも「本名と芸名と、どっちを言おうか?」と迷っていたそう。などというピンチも、まくらで面白おかしく笑いに変えてしまう文蔵師匠。胸の苦しさは血中酸素不足だったそうです。深刻な病気でなくて良かったですね。
今日は泥棒さんのお噺。泥棒が登場するお噺というのは「懐に入る」ということで縁起が良いとされているそう。
貧乏長屋に忍び込んだ泥棒さん。何も盗る物がなく困っていると、家の中に誰かいる!ここの家主のあまりにも悲惨な状態に、泥棒さんは逆に恵んであげたくなってしまいますが。。
強盗に入って凄む冒頭の恐しい場面から、同情しながら困った優しい表情になるメリハリが上手で、さすがの文蔵師匠。あ、元のお顔が怖いから、とかではありませんよ!

桂佐ん吉師匠「仔猫」

  • 桂佐ん吉師匠

ツヤツヤとした印象の佐ん吉師匠。まくらでは、大阪の人間国宝・桂米朝師匠との思い出について。大酒呑みでステーキ大好きな肉食系、7年前に89歳で亡くなったそう。こういうダイナミックな方が長生きできるのですねー。
というわけで、ご自身も内弟子だったことから、今日は船場の奉公人達のお噺。田舎から出てきた奉公人・おなべさん。美人ではないけれど、働き者で情が深く、たちまちお店の人気者に。しかし、夜になると奇行に及ぶおなべさん。さて、彼女の正体は?
可愛いタイトルとは裏腹に、怪談チックな珍しいお噺。佐ん吉師匠の滑らかで優しい関西弁に乗って、テンポ良く語られる不思議なストーリーに、すっかり引き込まれてしまいました!上方落語って面白い!大阪の寄席に行ってみたくなりました。落語にはまだまだ知らない世界が沢山あるのですねー、

写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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