渋谷らくごプレビュー&レビュー
2016年 4月8日(金)~12日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
初心者の人からよく聴かれる質問があります。「落語って1度聴いたらストーリーがわかるから、2度目からつまらないんじゃないの?」。その質問に対して、はっきりと私は「落語は何度聴いても面白い!」と言うことができます。それは先月の渋谷らくごで圓太郎師匠の落語を聴いた時、改めて確信することができました。圓太郎師匠の「THE熱血漢」ともいうべき、熱いキャラクターによって何度も聞いた落語が、また面白く感じてしまう。正当派の王道古典落語なのに、登場人物が熱すぎるあまり心が動かさざるを得ない、抜群の安定感を誇る落語です。笑っちゃうから! がさつなようでいて、恐ろしく繊細で器用な方です!
2番手に登場する百栄師匠。この師匠は創作らくごの名手。百栄師匠しかやらない落語も多いので、続けて聴いていくと、必然的に何度か同じ噺を聴くことになります。けれども毎回面白いのは、いや、なんなら2回目以降はより爆笑をしてしまうのは、客席にあわせて落語を微調整されているからです。一度聴いた噺でも、全く違う印象を受ける。同じ落語でも究極的な一期一会なのだということがわかります。
トップバッターは三木男さん。テンポよく身辺雑記から、すっと落語に入った瞬間、三木男さんの落語の世界がはじまります。テンポがいいので、ずっと聴いていられる心地よさ。3番手の小辰さんは、王道古典落語を歩むと決意をした男。端正な身のこなしと、高い演技力で客席をうっとりさせるでしょう。何度も聴くにも、まずは1度聴かなければなりません。ぜひご来場ください。
橘家圓太郎
写真:橘蓮二
レビュー
文:吾妻あきち (Twitter:@azuma_akichi 趣味:旅行、アウトドア、サイクリング)
4月10日(火) 14時~ 16時「渋谷らくご」 桂三木男( かつら みきお ) 「花屋の仇討ち」 春風亭百栄( しゅんぷうてい ももえ ) 「寿司屋水滸伝」 入船亭小辰( いりふねてい こたつ ) 「紋三郎稲荷」 橘家圓太郎( たちばなや えんたろう ) 「野ざらし」
春の渋谷の陰で、宇宙
4月10日、土曜日。暖かい陽気に誘われて賑わう渋谷の街。この日渋谷らくごの14時の回に集まったのは94人。最近札止めが当たり前となりつつある渋谷らくごにしては随分少ないほうだ。
そりゃ春だもの。みんな外にでたい。
こんな日は本当は代々木公園の芝生で日向ぼっこしたり、カフェのテラスや日当たりのいい席でコーヒーを飲みたいのだ。
けれどそんな魅力に逆らってきた人だけが出会えた、魔法のような一席「野ざらし」。
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橘家圓太郎師匠
圓太郎師匠はとても素敵な師匠である。
私がそう思うようになったのは数年前に寄席へ行った時のこと。とある師匠を追いかけて10日間の興行のうち7日間くらい通ったことがある。そのとき仲トリに出ていたのが圓太郎師匠だった。私以外にも毎日のように通い詰める客が多いことに気付いてだろうが、圓太郎師匠は毎日ネタを変えて出てきた。そしてそれは毎日面白かった。なんていう安定感だろうと、その技量に驚かされた。言葉ではうまく表せないのだけれど、ほっとするような、それでいて笑ってしまう、けれどもこれ見よがしな感じのない、本当に魅力のある高座だった。それまでも何度も見たことはあったし好きではあったが、これを機会に師匠を見る目が全く変わってしまった。
圓太郎師匠はよくマクラで、高座に上がれる幸せを語る。小さいころからこの世界に憧れてそちら(客席)側から見てきた人間だから、いまこうして高座に上がれていることは本当に恵まれている、と。噺家の中には自分たちを蔑んでみたり自嘲的に言う人はいくらでもいる。それに慣れているからだろうか、こんなにストレートに落語家であることを幸せだという師匠が、とても稀で素敵に思えるのだ。大好きな落語家さんである。
そんな圓太郎師匠の「野ざらし」がこの日のトリ。
「野ざらし」はとことん明るい噺である。
朝から八五郎が怒って隣の隠居のところへやってくる。前の晩に隠居の家に若い女がいたのを見たという。日ごろ女の気配などなかったので、女の存在を自分には隠していたと思い、問いただしに来たのだ。すると驚いたことに、あの女は幽霊だったと告げられる。昼に向島へ釣りに行った際、川辺の茂みに野ざらし人骨があることに気付いたご隠居さんは、持っていた酒を骨にかけ手を合わせた。その骨こそあの女。成仏できた恩返しに彼のところへやってきたというのだ。
それを聞いた八五郎。怖がるどころか、幽霊でもいいから女に会せろと言い出す。自らも骨を釣りに行くと、ご隠居の大事な釣竿をふんだくりいざ大川へ。
さぁ、ここからは八五郎の妄想の世界。
大川へ繰り出せば集まる釣り人が全員女を釣りに来たと見える。ライバル心を燃やして餌もつけずに釣りにかかる。
どうせ釣るなら年増な女がいいし、そんな女に惚れこまれてみたい。あることないこと勝手に嫉妬していじける女につねられくすぐられ。宇宙のように無限に広がる想像力が抑えきれず、思わず言葉と態度に現れてしまう八五郎。八五郎の自由な妄想と、それを見る周りの釣り人の醒めた視線。妄想と現実がジェットコースターのように繰り広げられる。
圓太郎師匠の八五郎は、なんというかカラリとしている。江戸っ子らしくせっかちで、早合点で次の行動へ移る。周りの目なんか気にせず、自分の思う通りに突き進む。他の登場人物は八五郎に振り回され、迷惑するばかり。けれど憎めないのはこの男に裏がないからだ。裏がないどころか妄想すら言葉と態度に出してしまうのだから。噺は八五郎中心に進む。つまり八五郎はこの噺の太陽である。そう、この日の圓太郎師匠の「野ざらし」は、太陽にだって負けない魅力に溢れていた。
開口一番の桂三木男さん。春らしく「花見の仇討ち」。
春風亭百栄師匠は作り話の小噺を交えたマクラから「寿司屋水滸伝」。
入船亭小辰さんは師匠譲りの繊細な情景描写で「紋三郎稲荷」。
残念ながら入りは少なかったものの、十二分に豪華な番組だった。
だけども、来ない理由もよくわかる。
そりゃ私だって代々木公園の芝生で日向ぼっこしたかった。
よりによってこんな晴れた日の昼間に、と正直思った。
かの古今亭志ん朝師匠も、陽気がよくなると人が外に出始めて寄席に来なくなるのでよくないなんてネタで言っていた。みんな気持ちはよくわかる。
そう、泣く子も黙る春だもの。
でも不思議なことに、落語は人が少ないときに限って面白いものを見れたりする。
これまで大雨の日や、台風の予報があるときに寄席に行ったことがあるけれど、
そういう時に限って異様な盛り上がりを見せたり、いい一席に出会えたりするのだ。
だから魅力に抗っていくのも、たまには悪くない。
なんとなく春の明るさが憎く感じる時があったら
落語でも見てみるといい。
時には日差しを浴びるより心と体にいいこともあるものだ。
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桂三木男さん
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春風亭百栄師匠
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入船亭小辰さん
【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」4/10 公演 感想まとめ