渋谷らくごプレビュー&レビュー
2016年 7月8日(金)~12日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
神田松之丞という人の高座に、生で触れてみてください。それがすべてです。
幾度となく渋谷らくごでは最後に登場する=トリという責任重大なポジションをお願いしていますが、ものの見事に毎回そのプレッシャーをはねのけ、講談を世間に知らしめています。芸歴9年目とは思えない動きを、いまや彼は行なっています。講談、いや松之丞を見にきて欲しい。
これが「最初」でもいいです。松之丞さんは一回見たという「点」を、毎月見るという「線」の楽しみにしてくれる存在です。
▽古今亭志ん八 ここんてい しんぱち
28歳で入門、芸歴14年目、2006年11月二つ目昇進。趣味は、漫画をかくこと。落語会のパンフレットには可愛いイラストが入ることがある。ウェブサイトに4コマ連載中。
▽立川吉笑 たてかわ きっしょう
26歳で入門、現在入門5年目、2012年4月二つ目昇進。2015年『現在落語論』を出版。毎週独演会を開くプロジェクトが進行中。一年半での二つ目昇進は、立川流最速。
▽立川志ら乃 たてかわ しらの
24歳で入門、芸歴19年目、2012年12月真打昇進。趣味は、アイドルと声優と相撲とプロレス。クーポン好きのエピソードがシブラクのポッドキャストで配信中。漫画作品の落語化など、精力的に落語と他ジャンルの架け橋になっている。
▽神田松之丞 かんだ まつのじょう
24歳で入門、芸歴9年目、2012年5月二つ目昇進。現在の姿から、過去の美しい時代の女性の姿を想像し、実際にその写真を見て評議する「過去美人評論家」を自称。ランニングをしながら、稽古をしている様子がツイッターで確認できる。HPがすごい。
レビュー
文:えり Twitter:@eritasu 29歳 女性 事務職 趣味:フラメンコを踊ること
7月10日(土)17時~19時「渋谷らくご」
古今亭 志ん八(ここんてい しんぱち) 「黄金の大黒」
立川 吉笑 (たてかわ きっしょう) 「くじ悲喜」
立川 志ら乃(たてかわ しらの) 「蔵前駕籠」
神田 松之丞 (かんだ まつのじょう) 「真景累ヶ淵~宗悦殺し〜」
頭の中の情景
目の前の、お着物姿の演者さんの仕草、声色、言葉の情報から、お客さん一人一人が頭の中に情景を浮かべます。
誰にも邪魔されない自分だけの世界。
私はその場にいて、ただ見てただ聴いているだけなのに、演者さんによって知らない間に誘導されています。
その不思議な感覚が好きです。
【登場人物との距離感】
-
古今亭志ん八さん
新作派の演者さんがおやりになる古典って、なんだかプレミアム感あります。
黄金の大黒って「黄金」と書いて「きん」と読ませるところがかっこいいですよね。初心者引っかけ問題みたい。
お祝いの口上を噛みまくってるのに「言えた♪」って嬉しそうな金ちゃんに、さらに志ん八さんの温和そうなイメージが重なって思わずニヤけます。かわいい~。
この噺で1番好きなシーンは「あそこで長屋の連中が1枚の羽織を引っ張りっこしてる」と、大家さんが説明するところ。
冒頭の場面は長屋の人たちと一緒にいるような近い距離感ですが、そのセリフの場面では大家さんと一緒に、長屋の人たちを遠くから見ているような感じ。遠くでみんながわちゃわちゃしてる様子ってとても微笑ましい。見守ってるような気分です。
最後の最後で大黒様が勝手に動き出して、噺が突然ファンタジー化するところとかもモヤモヤして素敵。
この、ちょっとモヤモヤ感の入ったおもしろさは志ん八さんの描いていらっしゃるマンガの雰囲気にも近い気がしました。
【たった一言で切り替わる世界】
-
立川吉笑さん
吉笑さんはよく「擬古典」という古典落語の登場人物や時代背景を使った新作落語をおやりになりますが、今回の「くじ悲喜」は現代の設定で、擬人化されたキャラクターが登場するという特殊な世界観。 状況を説明するような部分は一切なく、冒頭のくじを引く人と係りの人の会話のシーンから、急に目線が切り替わり「…アイツが○○やったんや」というたった一言のセリフで、急に登場人物も場所も変わっていたことに気付かされます。 気づいたら知らない世界にストンと落ちていた。この不思議な感覚が脳トレとか閃きみたいなものに近くて、うわぁっと嬉しくなります。 登場する擬人化キャラクターは全身タイツのモジモジくんみたいなビジュアルをイメージしましたが、実際以前はコントでおやりになっていたらしく、納得。 また関西弁のセリフのリズムやニュアンスが心地よく、何度か聴いているとやっぱり自然とセリフ覚えてしまいます。「めくってくれやぁ」とか。「あがってますし」とか。まだまだ言えますよっ
【重なる面影】
-
立川志ら乃師匠
なんか操状態というか、目を爛々と輝やかせて凄い勢いで嬉しそうに喋る志ら乃師匠。急にテンションの高い人に会うとちょっと戸惑いますが、まさにそんな感じ。インパクト強め。
何をそんなに興奮していらっしゃるかというと、まさかの激安スーパーのハーゲンダッツの価格について!
奥様の好きな味を選んでいらしたり、愛妻家で倹約家で几帳面なイメージです。落語家さんの普段の生活の様子をこんなに細かく聞くことってなかなかないので新鮮です。
乗り物の噺をしますといい「蔵前駕籠」へ。
どーーしても吉原に行きたい!という、しょうもない気持ちを熱く伝える様子が馬鹿馬鹿しくって楽しい。
腕を組むときの、着物の袖を丁寧にくるりと巻きこむ仕草が素敵だなぁと感じます。個人的なイメージですが、こういう細かい仕草ひとつひとつに、志らく師匠や談志師匠の面影が少し重なるような気がしました。
【感覚が研ぎ澄まされる空気】
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神田松之丞さん
「真景累ヶ淵~宗悦殺し~」というタイトルの通り、宗悦さんという人が殺されてしまう物語なのですが、 松之丞さんの宗悦は死ぬ前から既にだいぶ気味悪いです。最高。 まくらを話しているときは普通だったのに、読み始めた途端に真っ暗な情景が浮かびあがり、会場丸ごと暗くて孤独な場所に置き去りにされたような感覚です。怖いせいか、目や耳が研ぎ澄まされるように敏感になって、じっと集中します。 演者さんによっては「怪談は怖くなり過ぎないように」心がけて喋ると聞きますが、松之丞さんの怪談は一切手加減なし。清清しいほどの悪人。 例えば、宗悦が斬られる場面「脅かすだけのつもりだったのに、酔っていて本身(切れちゃう)の刀と気付かずに斬ってしまい慌てる」という感じのパターンを見たこともあるのですが、松之丞さんは最初から本気で斬るつもりで斬ってました。 悪役は影で人気があったり、悪い人と知りつつ惚れてしまうなんてことを言いますが、なぜなのでしょう。 自分にない何かが魅力的に思えるのでしょうか。 昔は、なんでわざわざ怖い思いをしなくちゃいけないのよ、と思ったりして怪談は苦手でしたが、落語や講談を見始めてからはそんなことどうでもよくなるほど怪談が大好きになりました。
【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」7/9 公演 感想まとめ
写真:渋谷らくごスタッフ