渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2016年 7月8日(金)~12日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

イラスト

イラスト

7月12日(火)20:00~22:00 柳家わさび、雷門小助六、桂春蝶、橘家圓太郎

「渋谷らくご」

ツイート

今月の見どころを表示

プレビュー

 渋谷らくご7月の最終公演は、重厚感あふれる4人です。全員の放つオーラがこれほどまで違っている回も珍しいです。
わさびさんはひ弱な昭和の文学青年のようなオーラを出しているのですが、それはみせかけ、一度人の懐に入り込んだらかわいくなってしょうがない。計算高さと、芸人性を見事なバランスでもっている、貴重な二つ目さんです。8月はトリ公演を控えています。
小助六師匠は、いつまでも隠し続けている刀があるのですが、毎回シブラクで、小助六師匠は次々と隠し持っている技を見せてくださっています。今回はどのような技を見せてくださるのか楽しみです。
春蝶師匠はとにかく華をもっていらっしゃいます。「華」というのは、落語家さんが舞台に現れた瞬間に感じるまぶしさのこと。それは照明の具合ではなく、なぜか明るく見えてしまう。空間が光に包まれるような感覚です。
最後に登場するのが圓太郎師匠。熱血漢なあまり小言マシーンとなっている様が爆笑でしかありません。意見が合わない人がいるかもしれない、なんていう心配ばかりをしてしまう現代。そんな時代にあって、自分の視点で世界を切り取ることに躊躇がない落語家が、私は最強だと思っています。圓太郎師匠もは、そんな「主観」の面白い落語家さんの代表格だと思います。

▽柳家わさび やなぎや わさび
23歳で入門、芸歴13年目、2008年二つ目昇進。古典落語だけでなく、創作落語という隠し刀をもつ実力派。イラストが可愛い。
昨今珍しく、師匠の家に住み込み修行した落語家。8月、渋谷らくごでトリをとる。

▽雷門小助六 かみなりもん こすけろく
17歳で入門、芸歴18年目、2013年5月真打ち昇進。趣味は演芸関係の資料収集。「じんわり」と良さが波及していく芸と、戦慄を覚える芸の両面を持つ。

▽桂春蝶 かつら しゅんちょう
19歳で入門、芸歴23年目、2009年8月「春蝶」を襲名する。お父様は2代目桂春蝶。最近ベトナムで落語公演を行なう。

▽橘家圓太郎 たちばなや えんたろう
19歳で入門、芸歴35年目、1997年3月真打ち昇進。高校までラグビーをやり、現在もトライアスロンをやる熱血男。愛犬はゴールデンレトリバーのケチャップくん。

レビュー

文:桜もち Twitter@kasiwamoti55 
こんにちは、桜もちです。 レビューお読みいただいてありがとうございます。
今回は7月一番最後の回を担当させていただきます。よろしくお願いいたします。

「それぞれ個性的で、でも落ち着いて聞ける会でした。」

柳家 わさび(やなぎや わさび)    「臆病源兵衛」
雷門小助六(かみなりもん こすけろく)「お見立て」
桂春蝶 (かつら しゅんちょう) 「輪違屋」
橘家圓太郎 (たちばなや えんたろう)「試し酒」

以前、落語家さんが高座でお話しくださった中に、「落語ってものは聞いて楽しいなって笑ってもらって、それですぐ忘れてしまう、もう帰り道には「あれ何の話だったっけ?」それでいいんです。そういう軽く楽しんでもらう、それがいいんです。」っていうのがあって、「あ、いいなぁ。」と思ったことがあります。
レビュー書きましょうと思って、演目の写真見てみたら「あれ?これどんなお話だったっけ?」ってちょっと焦ってしまって、で、そんなことを思い出して自己正当化してみました。

今回の会は「スタンダードな、落語会らしい落語会だったな。楽しかったな。」と思いながら帰ってきました。
トップバッターわさびさんが、「私はまず、落語ってこんなものなんだって思っていただければ、それでいいんです。」みたいなことをおっしゃって、
トリの圓太郎師匠は「もう寝る時間なんですよ。(ご自分がという意味で。)だからいい気持ちになるようなそんな話を聞いてもらって、お帰りいただこうと思っています。」(すみません、セリフはだいぶ違うかもしれませんが。)とおっしゃって…

そのとおりでした。

演芸の世界はお客さんを大事にしてくれる。
芸人さんは自分の個性を磨く、でも発表の場ではお客さん次第だったり、その時一緒に組む他の芸人さんとの兼ね合いがあったり。寄席では毎日そういうことが繰り返されてるんですね。すごい修行の場だなぁ。すごいなぁ。

  • 橘家圓太郎師匠

    橘家圓太郎師匠

今回、私の楽しみのひとつは、前回のシブラクで拝見したわさびさんは、いつものわさびさんとは違ってたのか?でした。
先月私にとって初めてだったわさびさん。すごいノリで「今日の私、漫談家みたいですね!」とご自分で言ってらした。
そうは言っても実はいつもこうだったりして?それとも違うのかな?どうなんだろう?と興味津々でした。
そして…「うん、確かに前回はハイテンションだったのかも。」

取り合わせの妙だったのか、いろんな噺、雰囲気を楽しめる会だったのにまとまっていて、「チームワークすごく良し!」と感じました。その場で気がついていなかったけど、こうして振り返ってみると、個性的と共同が同時、不思議です。

シブラクはいい会なので、「レビュー読むより何より、出かけてみてください!おしまい!」でいいと思っているところもあって、私のレビューがかえってお客様遠ざけてないか心配なぐらい。

ホントにね、本音が出ちゃいましたが、私のレビュー、何かちょっとぐらい役に立ってることあるんだろうか?と、常々思うところに、
今回はちょっといいネタがありましたので続けてみます。

  • 柳家わさびさん

    柳家わさびさん

春蝶さんの噺のお題「輪違屋(わちがいや)」って分かりましたか?
私は全然分からなくて、調べてみました。

「輪違屋」は今も京都市下京区島原にある!創業1688年(元禄時代)の置屋兼お茶屋だそうです。
春蝶さんの噺を聞くまで島原が花街だったのも知りませんでした。
歩いたことあるけど、何も考えてなかったなぁ。
(飛田新地は意識的に行ったことあります!)

出どころWikipediaネタばかりですみません(>_<)、ですが…
「1階には近藤勇書の屏風が、2階には桂小五郎書の掛軸がある。」とか「維新の名花といわれた桜木太夫を抱えていた」とか、ワクワクしますね。
有名なテレビドラマがあったようなので、その原作(赤川次郎)を読んだり、新撰組のことを改めて勉強してみたくなりました。
(幕末や維新についての知識が人並み以下なのでこの機会に。その時代について詳しくなると演芸がより楽しめそう。)

なんと!輪違屋さんには今も太夫がいらっしゃるそうです!「!」マークつけたけど「太夫」って何?
またまた、調べる。
「太夫」とはいろんな世界で使われている言葉で、花街関連だと遊女の最高位の呼び名。
あれ?それって「花魁」じゃないの?

どうやら花魁の方が後の呼び名のようです。関西の島原や新町では「太夫」の名称は残ったのですが、江戸の吉原では「花魁」に変わって「太夫」は無くなってしまった。そして島原では今も数名の「太夫」がいらっしゃるとのこと。
「太夫」=美貌と教養を兼ね備えた最高位の遊女。主に公家、大名、旗本ら上流階級を相手にした。長崎の丸山では中国人、オランダ人も。うーん、なんかすごい!今もいらっしゃるなんて全然知らなかった。

私は関西出身ですので、ちょうど今の季節に「祇園祭」の噺、嬉しかったです。(春蝶さん)
学生時代には友達と繰り出して、いろんな思い出がありますので情景が目に浮かぶ。「チキチキ」思い出させていただいて幸せでした。
上方落語も初めて、いいですね。

  • 桂春蝶師匠

    桂春蝶師匠

最後に今回お会いした演者さんそれぞれの噺から感じたこと。
「わさびさん」
わさびさんを楽しみにしていたのは前述のとおり。
今回のお噺は源兵衛の怖がり方のいろんなバリエーションを楽しみました。もう全部「あるある」なんだもん。こんなに何パターンもすごい!
そして話の展開がとても面白かったです。天国か地獄かわからない!シュールな現代芸術風。こういうの好み。

「雷門小助六」さん
猫4匹!飼ってらっしゃるそうです。ちょうど「猫飼いたい。」を具体的に考えた始めているので、猫話に食いついてしまいました。可愛いだろうなぁ…。
「お見立て」は何度か聞いているので、話を追いかける必要がなく、その分雰囲気を味わうことに集中できました。
声が良くて堂々としたダンディな感じ、聞きやすくて自分の中にスッと入ってくる。色っぽさも感じました。

「春蝶さん」
いろんな要素がバラエティ豊かでした。独特のやわらかさと、パッと明るい華やかな感じは上方落語なのか春蝶さんの個性なのか?今後の宿題です。春蝶さんも色っぽい。

「圓太郎師匠」
いろんな方のマクラに登場されるので、お会いするのを楽しみにしていました。
貫禄!いかにも落語の大師匠の感じ(「お父さん、デーン!」みたいな。)が良くて、マクラからもお噺からも落語の世界をいっぱい味わせていただきました。
また噺での飲みっぷりの仕草がよかった。そして、5升呑めるかどうかだけに豪遊できるぐらいの大金を賭けちゃう大らかさは「宵越しの銭は持たねえ」気質かな、さっぱり爽やか、そういう文化いいなって思いました。
以上です。お読みいただきありがとうございます。

ぜひ!シブラクへ!百聞は一見にしかず。

  • 雷門小助六師匠

    雷門小助六師匠

【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」7/12 公演 感想まとめ

写真:山下ヒデヨ Twitter:@komikifoto