渋谷らくごプレビュー&レビュー
2016年 7月8日(金)~12日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
落語には、代々受け継がれて継承されていく「古典落語」と、現代につくられた「創作落語」のふたつに大まかに分類されます。「古典落語」は代々受け継がれてきたわけなので、笑いどころをしっかり内蔵しているし、感動させるギミックも代々継ぎ足されていっています。しかし「創作落語」は違います、笑いどころも感動させるところも自分の力でつくりあげていなければいけないのです。これで失敗してしまうと「あいつの落語は面白くない…」といわれてしまう。リスクの大きな賭けです。この賭けに落語家人生を投じているのが、今回の5人。この回で披露していただくのは、なんどもなんども試行錯誤を繰り返して、現在の形になっている「創作らくご」です。いわばテッパンです。
「落語っていわれればわかるんだけれども、ちょっとイメージがしにくい」という方。この回がおすすめです。落語の持つややお固い印象もまったく消えるし、舞台はたぶん現代だし、難しい言葉や名前も出てきません。落語という芸能の面白さに気づいていただけると思います。
▽春風亭昇羊 しゅんぷうてい しょうよう
1991年1月17日、神奈川県横浜市出身、2012年入門、2016年二つ目昇進。2016年5月21日より二つ目に。おめでとうございます! 最近、母親がツイッターをはじめた模様。
▽三遊亭彩大 さんゆうてい さいだい
1971年8月7日、埼玉県出身。2001年入門、2015年真打ち昇進。
「創作落語っていうのは、自作PCみたいなものです。パソコンなんて買ってくればいいのに、わざわざ作るのが創作落語」と言っていたという噂(彦いち師匠・談)。物語性に定評がある。
▽春風亭百栄 しゅんぷうてい ももえ
年を取らない妖精のような存在です。静岡県静岡市出身、2008年9月真打ち昇進。
不思議な風貌で、危ないネタをかけつづているがシブラクでは圧倒的な女性人気をほこる。すべらない。
▽昔昔亭A太郎 せきせきてい えーたろう
1978年6月8日、京都府京都市出身、2006年入門、2006年2月二つ目昇進。
2015年12月渋谷らくご特別賞・「奇妙な二つ目賞」を受賞。先月、イタリアへ落語修行に向かった。メガネをかけたりかけなかったり。
▽林家彦いち はやしや ひこいち
1969年7月3日、鹿児島県日置郡出身、1989年12月入門、2002年3月真打昇進。
創作らくごの鬼。キャンプや登山を趣味とするアウトドア派な一面を持つ。集中する朝は、土鍋でご飯を炊く。毎週「久米宏のラジオなんですけど」で創作落語を披露している。
レビュー
文:重藤暁 男 大学院生 趣味:歌舞伎鑑賞
7月10日(日)17時~19時「創作らくご」
春風亭昇羊(しゅんぷうてい しょうよう)-犬が猿と雉に
三遊亭彩大(さんゆうてい さいだい)-引率教師の夜
春風亭百栄(しゅんぷうてい ももえ)-マイクパフォーマンス
昔昔亭A太郎(せきせきてい えーたろう)-迷答
林家彦いち(はやしや ひこいち)-遥かなるたぬきうどん
共感の創作らくご
創作らくごを5席聴いて2時間。この2時間で、客席は昔話の桃太郎の世界からエベレストの山頂まで誘われました。5席の世界観や物語展開のベクトルが大きく違っているのにも関わらず、5席全部の創作落語にドキドキして、大笑いしてしまう大満足の2時間。でもどうしてだろうと考えてみると、今回の5席に共通することは「なにかに追いつめられる」という点。
日常生活では、常になにかに追われています。それは「朝、通学の電車に遅れちゃうんじゃないか」とか、「確定申告ださなきゃ」とか「メールの返事を書かないと」とか。その「なにかに追われている」経験は誰しもが経験しているはずだし、「追われている」時は、思いもよらない行動をしてしまっている。なにかに追われた体験をしているのであれば、創作らくごに共感できるはずなんだなぁと実感しました。「教養としての創作らくご」を強く感じられた2時間でした。
「大きなミッションの前に」
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春風亭昇羊さん
昔話の桃太郎の世界観、いよいよこれから鬼が島に向かうその時に・・・というあらすじ。文化祭とか学園祭とかなにか面白い事をやろうとしていて、みんな集まったけれども、誰かの些細な一言がずっと心の中にモヤモヤになっていて…。そんなことを経験しているので、昇羊さんの創作らくごが究極のあるあるネタのように感じられました。
みんなの思いは一緒なのに些細なことがずっと引っ掛かって、じめじめとしたを昇華できない思いを抱えている。でも、これからはこんな経験をしてしまったら、昇羊さんの落語を思い出します。整腸剤みたいな素敵な落語でした。
「隠れてこそこそと」
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三遊亭彩大師匠
隠れてこそこそしている時の高揚感と、誰かにバレるんじゃないかという追いつめられた状況でのスリリングさ。誰もが経験しているのは、修学旅行での夜。そんな舞台を描いた創作らくごです。自分たちが隠れてこそこそしている時は、きっと裏側の世界も隠れてこそこそしているんだなぁと。
登場人物がみんなふざけていて、みんなヘラヘラしていて、そんな世界を可愛らしく描く彩大師匠。彩大師匠は優しいんだなぁと感じられた1席でした。
パラレルな世界との交差点
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春風亭百栄師匠
落語家がマイクパフォーマンスをする世界を描いた百栄師匠。実際に落語界にいる落語家さんが実名で登場するパラレルな落語界。百栄師匠が演じるパラレルな落語界と現実の落語界が交差する不思議体験をしました。百栄師匠が演じると、シブラクの高座で、その落語家さんが登場しているように思えるのです。そしてマイクのケーブルを右手に持ちながら、高座の上で仁王立ちする、その落語家さんが見えたのです。落語家さんを知らない人が聴いたとしても、いつかその落語家さんを寄席で見た時に、「あれ?この前百栄師匠の前面にいた人だ!」となるのではないかなぁと思うほど、目の前に映像が浮かんだ1席でした。
「不穏な空気が終わるまで」
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昔昔亭A太郎さん
インタビューをうける大物な雰囲気を持っている人物。その人物のインタビューを聴いていると、その時なにが起きていたか解明されていく展開。ただインタビューの内容を聴いている限り、辻褄があっておらず、なにが起きたもわからない。インタビューをしている人物は描かれていませんが、きっと混乱をしていたはず。その混乱している表情を想像してしまい不穏な笑いが起き続ける1席。描かれていない人を想像させる落語の醍醐味を思いっきり感じた1席でした。
「死が迫るまで」
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林家彦いち師匠
気を抜いたら死んでしまうという究極的に追いつめられた状況。映画「タイタニック」は、いつかこの船が沈没してしまってこの二人が永遠の別れをしてしまうというということがわかっている。「遥かなるたぬきうどん」は、うどん屋の大将がいつか死んでしまうのかもしれないと思いながら聴いていました。そしたら、やっていることが大変くだらない。この死が迫る状況でなにやってるんだよ!と爆笑しながらつっこみ続けていました。こんなに気持ちよくつっこめるなんて!とドキドキしつつも、でも最後は感動してしまう。とても気持ち良い一席でした。
【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」7/10 公演 感想まとめ
写真:渋谷らくごスタッフ