渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2016年 11月11日(金)~16日(水)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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11月13日(日)17:00~19:00 立川志ら乃 瀧川鯉八 雷門小助六 橘家圓太郎

「渋谷らくご」圓太郎シリーズ!!

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プレビュー

トークゲスト:トミヤマユキコさん ライター/研究者 twitter@tomicatomica

まくらから落語への流れが、現代に落語を聴く若いお客さんにとってはとても自然だと感じられる、志ら乃師匠。
映画のような手法でカット割りをする落語、鯉八さんをはさみ、丁寧で平易な言葉で世界を積み重ねていく小助六師匠。
どのようなテーマのネタでもなんなく料理してしまう、芸域の広い圓太郎師匠。渋谷らくごを支え続けるこの圓太郎師匠に、若手三人が挑む!

▽立川志ら乃 たてかわ しらの
24歳で入門、芸歴19年目、2012年12月真打昇進。趣味は、アイドルと声優と相撲とプロレス。『昭和元禄落語心中』から派生したイベント「声優落語天狗連」では声優さんに落語を稽古している。スーパーマーケットが好きすぎるあまり、朝日新聞で記事を書いたり、トークライブをしたり、スーパーマーケットをモチーフにした創作らくごをつくったりする。

▽瀧川鯉八 たきがわ こいはち
24歳で入門、芸歴11年目、2010年二つ目昇進。2015年第一回渋谷らくご大賞受賞。「圧倒的な才能」が好きとのことで、宇多田ヒカルが好き。そして男はつらいよの渥美清も好き。寅さんに扮した写真がツイッターでアップされる。ツイートと写真が一致していない。

▽雷門小助六 かみなりもん こすけろく
17歳で入門、芸歴18年目、2013年5月真打ち昇進。趣味は演芸関係の資料収集。
「じんわり」と良さが波及していく芸と、戦慄を覚える芸の両面を持つ。小学校などでの落語教室などにも精力的。猫を可愛がる。
学校公演を明日に控えた小痴楽さんが「大丈夫かな 小助六兄さん来てくれー」とツイート、それに対して小助六師匠は「行ってやりたいのは山々だけど明日は一日ネコと遊ぶ予定だから」と返事。後輩よりも猫を可愛がる。

▽橘家圓太郎 たちばなや えんたろう
19歳で入門、芸歴35年目、1997年3月真打ち昇進。高校までラグビーをやり、現在もトライアスロンをやる熱血男。8月にギックリ腰を経験されて辛そうでありながらも絶品の落語を披露。電子タバコiQOSユーザー。熱血で小言マシーンになる。この小言マシーンっぷりは爆笑を生む。その一方会場を感動させる人情噺も得意とする。
独演会「圓太郎ばなし」「圓太郎商店」シリーズがライフワーク。

レビュー

文:瀧美保 Twitter:@Takky_step 事務職 趣味:演劇・美術鑑賞、秩父に行くこと

11月13日(日)17:00~19:00
「渋谷らくご」
立川志ら乃(たてかわ しらの)-粗忽長屋
瀧川鯉八(たきがわ こいはち)-ぷかぷか
雷門小助六(かみなりもん こすけろく)-擬宝珠
橘家圓太郎(たちばなや えんたろう)-ねずみ
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サンキュータツオさんとゲストさんのトークから始まる2周年記念シブラク。
開演時間の少し前から始まることもあって、なんだか浮足立った気持ち。
これが祭ってことかしらと思っていると、早速始まるトークタイム。
この回のゲストはライター/研究者のトミヤマユキコさん。
この方もなにやら面白い。
見た目の可愛らしさ、そのポップさ同様というのかな?
落語を気軽に楽しんでいる様子がいいなぁと思う。
この日が鯉八さん初めて、という気になる発言もあり。
鯉八さん観終わってどんな言葉が飛び出すのか。ワクワクのスタートです。

  • トークゲスト:トミヤマユキコさんと

    トークゲスト:トミヤマユキコさんと


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立川志ら乃-粗忽長屋



  • 立川志ら乃師匠

    立川志ら乃師匠


前回スーパーマーケットの話を聴いてから、気になっている志ら乃師匠。
落語もとても面白かったんですが、スーパーマーケットの印象が私の中に残りまくりで。
今回のマクラもまたいいのです。

弟子入りしようとする若者から受け取った履歴書が事の起こり。
その履歴書にダメ出しする、志ら乃師匠のおかみさん。
「顔がイヤ」もさることながら、「何この住所」って。住所にまでダメ出しが(笑)。
志ら乃師匠に弟子入りするには、住む場所から考えないといけないのね!
気に入らない住所について、翌日まで引きずる怒りといい、おかみさんがいい味出しまくりです。
そんなおかみさんに押され気味なのかと思いきや、この話をサラリと語る志ら乃師匠の姿からは、いい夫婦関係が見えるような気も?

次に身分証明書取得のお話。
免許証などの身分証明書がなかったので、役所の窓口で発行してもらおうと思ったら、その手続きの為に身分証明書が必要という悲しさ。
売れない芸人、役者、ミュージシャンなどなど……あるあるかもしれない……。せつないね……。

そしてそして苦労の結果が……「女って大事」。
その言い切り素敵ですっ!
またその女性が今のおかみさんってのがズルイわ。

そうして始まる粗忽長屋。
語りが速いってわけじゃないと思うのに、スピーディで心地よい。
コロコロと話が転がっていくうちに、相手にそう思わせてしまう説得力のある主人公。
あげくに行き倒れの知人を探していた世話人さえも、その勢いに巻き込まれていく。
世話人までもが説得されてしまうパターンは初めてでびっくり。
世話人が納得してしまうのがわかる位、観ているこちらもそう思ってしまう理屈づけ、そのとてつもない説得力。
終わりのトークタイムでサンキュータツオさんが言っていた主観の肯定。
立川流の粗忽長屋。
だまされてというか、そんなことありえないけれど、説得されて「そうかもしれない」と思わされる粗忽長屋は初めてで、なんだか気持ち良い(笑)。

他の立川流の方々の粗忽長屋もぜひ聴いてみたいですなぁ。

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瀧川鯉八-ぷかぷか



  • 瀧川鯉八さん

    瀧川鯉八さん


シブラク2周年記念で、毎日連続出演の鯉八さん。
たくさんの師匠方の中、本当に大変なことだと思うけれど、始まりの挨拶がいつも通りのあの「チャオ」で嬉しい。

「ぷかぷか」を観るのは2回目。
やっぱり不思議な物語を観ている気持ちになります。
「なんかいーことないかなー」とゆる〜く始まるのが、もう面白いし。
こんな時、江戸っ子なら大家さんの所に行くのかもしれませんが、江戸っ子じゃないので行きません(笑)。
周りがなんか言ってますが、気にせず歩きます。
気づいたら人気者になっていたマンタロウに、ファンコールが。
「ナイフ!ナイフ!ナイフ!」
ゆる〜くコブシを上げて声援を送るたくさんのファンたち。
何人いるのかはわかりませんが、私にはたくさんのモブが見えました(笑)。

声援もゆる〜く、激しさが無い分、広がる世界。
溢れるモブ。
「キスタロウ!キスタロウ!キスタロウ!」
再び溢れるモブ。

凄い世界です。
その世界には浸れません。
けれどよくわからないけど、面白い。
なんなんでしょうか?
私にはまだうまく伝えられませんが、この衝撃は見て欲しい。
そして何がこんなに気になったのか、誰か私に教えてください(笑)。

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雷門小助六-擬宝珠



  • 雷門小助六師匠

    雷門小助六師匠


初めての小助六師匠は、小痴楽さんより猫が好きというお話から(笑)。
シブラクのプレビューでも触れられている、ツイッターでのお二人のやりとりが元ですね。
お二人の仲の良さも感じますけれどそれよりも、淡々と、でも中身は濃ゆい感じで小助六師匠の猫好きが伝わってきます。
私も猫が好きですが、でもなぜかしら、小助六師匠の猫を語る姿には「仲間だー」という共感より、キモチ悪さを感じます(笑)。
何かを超えた猫好きワールドを感じるのかしら……?
本当は猫を4匹飼っているのに、聞いた人の印象を考えて2匹と言ってみたり、猫アレルギーなのに、猫好きというところから感じる強さというか……うまく言えませんが、嫌いじゃないです(笑)。

そしてそこから始まる「擬宝珠」。
キモチ悪さがここにつながるのか、と納得!
「金物をなめるのがたまらなく好きなんだ」という若旦那と、その同じ気持ちを持つ両親。
嬉しそうに語る小助六師匠の姿から浮かび上がる家族のカタチ。
うひゃー。
そんなに好きなのねーと、ある種憧れのような気持ちを持ちながら、でも傍観する私。
そこに近づいて行こうとは思わないけれど、はたから見ている分には楽しい、そんな感じ。
ちょうどこの噺の主人公・熊さんの気持ちに近いかもしれませんね。
マクラのせいか、小助六師匠は若旦那の方に思い入れがありそうな気がしますけれど(笑)。

っていうか、もしかしたら、あのマクラのキモチ悪さも演出なのかしらん?!
どうなの?そうなの?
噺に繋げるためのワザとそうしているの?
それともやっぱりそういうのが好きなだけなの?

小助六師匠が本当はどんな人なのか、私が演出に騙されていたのか、もっといろんな噺を聴いてみなくちゃですね。

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橘家圓太郎-ねずみ



  • 橘家圓太郎師匠

    橘家圓太郎師匠


あれ?この流れ、前にもあったな~と思う。
鯉八さんの「ぷかぷか」からの、圓太郎師匠。
調べてみたら5月のシブラクで観た回がそうでした。

あの時の圓太郎師匠の噺は「かんしゃく」。
めちゃくちゃ力いっぱい、顔を真っ赤にして怒っていらっしゃって、楽しかったなぁ。
すんごい怒っているんだけど、自分が言われたら怖いのかもしれないけれど、なんだかかわいい。
鯉八さんへのダメ出しからの流れで噺に入り、これが落語だろう!というような激しさがなんとも言えず面白かった。

「なんかいいことないかなー」
「なんかいいことないかウィー!」
と聞いていたら、今回も腹が立ってきたとおっしゃる圓太郎師匠(笑)。
「なんかいいことないかウィー!」って言っちゃうお姿が素敵。
けれど、その腹が立つという言い方も意外にさらっとした感じだったところを見ると、もしかして圓太郎師匠も鯉八さんの新作に慣れてきたのかしら……?
というか、鯉八さんをいじらずにはいられないのがいいです(笑)。

今回の「ねずみ」は大好きな左甚五郎の噺。
宿屋の子供がちょっと生意気なことを言うんだけれど、圓太郎師匠のやる子供の小生意気さがいい。
大人から見ると微妙に小憎らしい感じが、
こんな子いそうー、と微笑ましくなるのです。
その子と対応する圓太郎師匠の甚五郎の姿には体温のある感じがします。

そうそう、宿帳に書くために甚五郎が語る「神田小柳町」という地名にびっくりです。
実はその日のシブラクの14時の回も観ていて、その落語の始まりが神田小柳町だったんです。
落語によく出てくる地名ってことかもしれないけれど、神田小柳町に始まって、神田小柳町に終わるっていうのが自分的に面白い!
大工が住む町だったってことですよね。たぶん(違ってたらごめんなさい)。

今回は圓太郎師匠の熱さが控え目なのが残念だったけれど、ねずみ屋親子と甚五郎、虎屋の二人、近所の人々(めっちゃ好き!)それぞれのやりとりが楽しくて、圓太郎師匠にしっかり締めて頂いて幸せな1日でした。

熱い熱い圓太郎師匠はまた次回の楽しみにしておきますっ!

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落語が終わって、トミヤマユキコさんのゲストトーク。
鯉八さんの落語への感想が、何ともわかる〜って気持ちになりました。
鯉八ワールドは初めスッゴク驚くけれど、後からじわじわ来るのです。
しばらく経ってから、トミヤマさんがどう感じ、考えているのか……ぜひ後日談が聞いてみたいですねぇ。

2周年記念シブラク、素敵な時間をありがとう!



【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」11/13 公演 感想まとめ

写真:渋谷らくごスタッフ