渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2016年 11月11日(金)~16日(水)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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11月16日(水)20:00~22:00 柳家緑君 昔昔亭桃太郎 ★お楽しみ 瀧川鯉八

「渋谷らくご」瀧川鯉八、トリ公演

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プレビュー

トークゲスト:瀧川鯉八さん  twitter@koi_hachi

11月の「渋谷らくご」で紡いできた瀧川鯉八のストーリーは、この日が最終回です。
鯉八さんがトリを取ります。
16歳で入門した緑君さんのあとは、芸歴52年目の桃太郎師匠。お楽しみゲストをはさみ、最後は落語界に一石を投じ続ける鯉八さん。
この日、さまざまなバリエーションの落語が展開され、それは鯉八さんでとどめを指すことでしょう。


▽柳家緑君 やなぎや ろっくん
16歳で入門、芸歴11年目、2010年9月二つ目昇進。落語界はじめての平成生まれの落語家。落語家を追いかけるドキュメンタリーに偶然出演してしまう強運の持ち主。鯉斗さんが暴走族時代走っていた町で幼少時代を過ごす。

▽昔昔亭桃太郎 せきせきてい ももたろう
20歳で入門、芸歴52年目、1980年10月真打ち昇進。落語界の破壊者ともいえるべき圧倒的な存在感。読書好きでもあり、知識量も豊富。最近日焼けしている様子も素敵。落語芸術協会のイベントではサングラスをかけて人生相談を受ける。

▽お楽しみゲスト

▽瀧川鯉八 たきがわ こいはち
24歳で入門、芸歴11年目、2010年二つ目昇進。2015年第一回渋谷らくご大賞受賞。渋谷らくごではトリを取るのは2回目。1回目でトリを取られた時は、落語の歴史がかわったのではないか、落語のパラダイムシフトが起こったと確信できる衝撃的な落語を披露した。落語の世界をアップデートし続ける創作らくごのつかい手。

レビュー

文:えり Twitter:@eritasu 29歳 女性 事務職 趣味:フラメンコを踊ること

11月16日(水)20時~22時「渋谷らくご」
柳家 緑君(やなぎや ろっくん)      「湯屋番」
昔昔亭 桃太郎(せきせきてい ももたろう) 「ちりとてちん」
瀧川 鯉昇(たきがわ りしょう)      「時そば」
瀧川 鯉八(たきがわ こいはち)      「俺ほめ」「いぬいぬ」

「私が瀧川鯉八だ!」


【君の名は】



  • 柳家緑君さん

    柳家緑君さん


ろっくんさん。さかなクンさんと同じ葛藤が生まれます。
登場するやいなや鯉八さんの名前を間違えて喋り続け、気づいた途端頬に両手をあて、慌てふためく緑君。かわいらしい。「男子ーー」「はーーい」「女子ーー」「はーーい」「ろっくんのこと好きなひとーー」「はーーい」客席とコール&レスポンス。これは一体なんなのでしょう。かわいらしいとしか言いようがありません。
湯屋番の調子のいい若旦那の妄想も楽しく、妄想の中で若旦那が女性を抱き起こしながら歌舞伎のように見得を切ってビシッと台詞を言うシーンもかっこいい。ギャップがたまりません。平成生まれの若い落語家さんが5年後、10年後はどんな噺を聴かせてくれるのか。先の楽しみがまた一つ増えました。


【ショートパンツ】



  • 昔昔亭桃太郎師匠

    昔昔亭桃太郎師匠


桃太郎師匠といえば大好きな『カラオケ病院』や『カラオケ病院』のイメージが強く、古典を聴いたのは初めてでした。しかしやっぱり普段聴く『ちりとてちん』とはひと味違います。
ごちそうを勧められ食べる場面、なぜかボーっと無表情で繰り返し食べ続けます。お酒を注ぐ仕草も良い感じに雑。竹さんという登場人物は今まで「いけ好かないヤツ」という印象が強かったのですが、桃太郎師匠の竹さんは広沢虎造の浪花節(森の石松)を唸りながら登場したり、知ったかぶりするところも憎めないかわいらしさがあります。本当に嫌なヤツにはならず子供っぽいという印象で、傍から見てる感じがとても面白い。マクラの「なんでもかんでもすぐやらないとダメだねぇ」と、良いこと言ってる風の下ネタも最高。これはハマります。ぜひ他の古典も聴きたいです。


【愛される人】



  • 瀧川鯉昇師匠

    瀧川鯉昇師匠


誰からも愛される人っているんだなぁと、鯉昇師匠の高座を見るたびに思います。
鯉八祭り最終日のお楽しみゲストは鯉八さんの師匠である瀧川鯉昇師匠。今日も猫背で両手を膝の上で重ねて丸いシルエット。丁寧な言葉を選び、端正で落ち着いた声、語りかけるような口調。ギャップに魅せられて、次の展開がわかっていてもつい笑ってしまいます。時そばは今まで何度か聴きましたが、鯉昇師匠の時そばが1番笑いました。『時そば』なのに『時』は関係ありません。英語のセリフがでたり蕎麦屋がハーフだったりペルシャの焼き物だったり好きな甘味を聞いたり、かなり独特のくすぐりが入っていますが、スタンダードな時そばと頭の中で比較しながら聴くのもまた楽しい。
弟子の晴れ舞台を盛り上げ、サポートする鯉昇師匠、かっこよすぎです!


【覚悟の裏側】



  • 瀧川鯉八さん

    瀧川鯉八さん



開始前のトークコーナーで「こないだウケなくてショックで、誰にも挨拶せずすぐ帰りました」と鯉八さん。
私は見ているときあまり声に出さずニヤニヤ楽しんだり、スルメ的に味わうこともありますし、極端なことを言うと(わぁ今日はなんだか調子良くなさそう~)っていうときもむしろキュンとします。でもやはり演者さんには会場の笑い声の大きさは気になるのですね。鯉八さんが特別ナイーブとかではなく、それだけ力を入れて真剣に落語に向き合っていらっしゃるという証でしょう。観客には計り知れない感覚。その一端を見た気がしました。
特に、物語もセリフも間も抑揚も仕草もすべて0から自分で生み出している新作派の鯉八さんにとっては、自分の噺は自分自身のようなものかもしれません。
会場は既にホカホカ。さぁトリです。満を持して『俺ほめ』この楽しくかわいい雰囲気を説明するのは難しいのですが、とにかく名ゼリフだらけです。「いいねっ」「あらまっ」「いなせっ」「ハッフッホッ」見たらすぐ覚えてしまうインパクト。振り付きで再現したくなります。アンコール!と思っていたら続いてやってくれました『いぬいぬ』タイトルかわいい。セリフも動きもキレッキレ。だけど声に丸みがあるのでなんだかほっこり。登場人物の「まさる」と「かーさん」の会話のみのシンプルな構成なのに、次の展開が予想できないし、会話のテンポもよく引き込まれます。「かーさん!かーさん!」というセリフも、動きと声とリズムがマッチしてかわいくて笑ってしまいます。
個性の塊のような噺をぶつけてきてくれた鯉八さん。鯉八祭りのラストにふさわしい堂々たる高座でした。


【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」11/16 公演 感想まとめ

写真:渋谷らくごスタッフ