渋谷らくごプレビュー&レビュー
2017年 3月10日(金)~14日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
昭和の世界と生き方にひたるおさん師匠。身辺雑記からふつうの人間ではない雰囲気がぷんぷん。
講談の世界に飛び込んだ松之丞さんは、ITを駆使する現代的感覚で講談を蘇生させる。
落語立川流という「流派」のなかで、落語にしかできないことをお笑い的仕掛けや発想で考え続ける吉笑さん。
コーヒーを豆から淹れたり銭湯めぐりをする柳朝師匠。
なにかにこだわる人たちの芸は、おもしろい。
▽台所おさん だいどころおさん
31歳で入門、芸歴15年目、2016年3月真打ち昇進。パチンコで帰りの電車賃つかってまでもパチンコに没頭し、そして負けて一文無しになる芸人的一面をもつ。ドトールで時間を潰す。映画が好き、アキ・カウリスマキ、成瀬巳喜男、黒澤明が好きな映画監督。
▽神田松之丞 かんだ まつのじょう
24歳で入門、芸歴11年目、2012年5月二つ目昇進。プロレス好き。iPadを使いこなす。冬はお洒落なグレーのニットの上着を羽織って楽屋入りする。鬼太郎の手提げバッグを愛用している。
▽立川吉笑 たてかわ きっしょう
26歳で入門、現在入門7年目、2012年4月二つ目昇進。2015年末『現在落語論』を出版。音楽番組の司会をつとめる。相当な酒豪で、毎日お酒を飲まれている。酒癖があまりよくないらしい。最近は、内閣府からの依頼仕事をうけたらしい。
▽春風亭柳朝 しゅんぷうてい りゅうちょう
23歳で入門、芸歴23年目、2007年真打ち昇進。毎朝、豆から挽いてホットコーヒーを入れている。銭湯巡りが趣味。朝起きるのが早い。2006年から毎日欠かさずブログを更新している。先月のシブラク前は、『Soup Stock Tokyo』に立ち寄る。私生活がとてもお若い。
レビュー
3月11日(土)14時から16時の「渋谷らくご」
台所おさん(だいどころおさん) 『出来心』
神田松之丞(かんだまつのじょう) 『寛永宮本武蔵伝~吉岡冶太夫』
立川吉笑(たてかわきっしょう) 『桜の男の子~立川春吾・作~』
春風亭柳朝(しゅんぷうていりゅうちょう) 『紺屋高尾』
3月11日のこの日、天気は快晴で、春の花も咲き出し、春めいて来ました。
渋谷らくごのある丸山町は、かつては花街があり、そのきっかけは、義太夫流しをしていた人が、芸者屋を開業したことによるものだそうです。徐々に料亭が集まって来て、三味線が聞こえて来たりしながらも、近くの代々木進駐軍の遊びに来る繁華街でもあり、和洋の混在する遊び場でした。現在でも置き屋の跡地を工夫したお店や、元料亭のおでん屋さん、5000枚のレコードを所有し名曲クラシックを紹介する名曲喫茶店が平成のライブハウスやユーロライブの劇場などと共存するのです。そんな界隈を歩き、お店を覗きながら、今月もユーロライブ2階の渋谷らくごへ行ってまいりました。
観ている側も楽しくなって来ちゃいます!
台所おさん師匠『出来心』
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台所おさん師匠
そして、罪を着せられた泥棒さんが最後に見つかる場面では、観たことのある『出来心』では罪を着せられた怒りで出て来る設定だったのですが、おさん師匠の泥棒さんは、思わずクスクス笑っている所を見つかってしまうのです。いつの間にか観ている側が楽しくなる、おさん師匠の『出来心』でした。
熱く凄みのある話術のおもしろさ!
神田松之丞さん『寛永宮本武蔵伝~吉岡冶太夫』
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神田松之丞さん
松之丞さんといえば、もはや落語や講談を聴いている人で、知らない人は居ないのではないでしょうか。講談をあまり聴いたことのない私でも松之丞さんは存じ上げております。
松之丞さんがご出演の場合は満員御礼も珍しくありません。松之丞さんはお稽古熱心としても有名です。池袋を、講談の台本を片手に持ち、読みながらランニングしていらっしゃったという目撃情報にも、どこか高座で垣間見る、松之丞さんの、熱く!凄みのある講談らしさに通じるところがあるのを感じます。今回もすっかり安定の『寛永宮本武蔵伝~吉岡冶太夫』では、京都の町人言葉、吉岡家の奉公人の訛り言葉まで使い分けておられて、改めて松之丞さんの芸達者ぶりに感激いたしました。
熱く!凄んだ台詞を吐いて、顔芸すらしない松之丞さんですが、会場は何度も、笑いに包まれるのです。松之丞さんの時に起こる「笑い」と「おもしろさ」は松之丞さんならではかも知れません。『寛永宮本武蔵伝』のシリーズは、洋画でいうとピーター・ジャクソン監督の『ロード・オブ・ザ・リング』のような騎士道(武士道?)物語で、長編なのは百も承知ですが、一席ずつ制覇して行き、いつか松之丞さんが最終章をかける日には、客席に駆けつけて、拝聴したいものです。
精巧に計算されたまくらから噺への仕掛けを堪能する
立川吉笑さん『桜の男の子~立川春吾・作』
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立川吉笑さん
NHKの落語番組の監修で、出演者の方に落語を教えていらっしゃるという吉笑さん。
「アマチュア落語家の役」の落語指導なんでと自虐的なオチを入れながらも、次から次へと展開する想定外のまくらで、観客は知らない内に吉笑さんの話術へ引き込まれてしまいます。おさん師匠が最近『あまちゃん』に嵌っているように、吉笑さんはプレステーションのゲームに嵌っていて、ゲームでは吉笑さんは落語でいうと前座マフィアになりたてで、先輩から無理難題を言われながら闘っていらっしゃるようです。そんなマフィア家業のゲームで先輩から電話が無理難題を言われ続けていると、夢で、師匠から電話がかかって来て「師匠と鈴本演芸場を襲撃しに行く」と言われ、ドスを持って鈴本演芸場に乗り込むという、落語家としての現実とゲームとが入り混じった夢の迷宮から、名作『桜の男の子』へ入る吉笑さんのテクニックには驚くばかりです。
『桜の男の子』は、今は廃業されている立川春吾さんの代表作です。満開の桜の中で、
「おとっつぁんの桜の木だけ、花が散っちゃったよ。えーん。」
と、泣いている男の子がなんとも幻想的で、記憶に焼きついて来ます。誰かが「大変だ」と戸をドンドン叩くと、夢を見ている人の夢が覚めて行く。吉笑さんは、この夢から夢への幻想的なお噺を「師匠と鈴本演芸場を襲撃する夢」とリンクさせたことに、最後にようやく気がつきました。自然で精巧に仕掛けられたまくらと新作落語、お見事でした。
繊細かつ軽やかでお優しい
春風亭柳朝師匠『紺屋高尾』
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春風亭柳朝師匠
江戸をテーマにお話ししますとの前置きからの『紺屋高尾』です。柳朝師匠の紺屋高尾は、軽やかで、場面の一つ一つが丁寧でした。雲助師匠からお借りした『吉原○○』に書いてあると、きちんと出典を明らかになさって、一番上のランクが松の位の太夫職で、三浦屋の高尾はその位であること、高尾を名乗っていたのは一人ではなく歌舞伎の襲名のように、11代高尾は続いたという説、その中で有名な高尾は、伊達騒動の伊達藩へ見受けされた仙台高尾、子持ち高尾、六つ指高尾、そして神田紺屋町の紺屋(染物屋)の女将さんになった紺屋高尾と、柳朝師匠は説明して下さいました。『紺屋高尾』は実在の人物をモデルにした良い噺ですし、時代背景が分かるとますます落語の内容が興味深く感じられます。
柳朝師匠は、ご自分が勉強されていらっしゃることを教えてくださる、噺の中の登場人物のやりとりも、親方のキャラを際立たせて、一途な久ちゃんも、親方も、女将さんも、医師も、人間味のある暖かい人達として描かれていたように感じました。それでいて、客席から「へー」と感心の声が聞こえると、「嘘ですよー」とおどけて笑わせていて、とても明るい高座でした。柳朝師匠の『紺屋高尾』は持参金のところをうやむやにしていたところも好きで、とても素敵な『紺屋高尾』が拝聴でき、幸せなひとときでした。
【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」3/11 公演 感想まとめ
写真:渋谷らくごスタッフ