渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2017年 3月10日(金)~14日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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3月13日(月)18:00~19:00 入船亭扇里 入船亭扇辰

「ふたりらくご」 流派で聴く:「扇派」

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プレビュー

柳家や春風亭を含めた、「扇橋」という名前から出た一門を「扇派」なんて言ったりします。
このお二人は、九代目入船亭扇橋(2015年没)のお弟子さん。おなじ師匠から、これだけ違う弟子が育っているということを感じてもらえるとうれしいです。どこかで共通点も感じられるはずです。


▽入船亭扇里 いりふねてい せんり
19歳で入門、芸歴21年目、2010年真打ち昇進。
趣味は競馬と野球観戦。絵本作家。熱狂的な横浜DeNAベイスターズファン。最近は麻雀熱が高まっている。毎日腕立て伏せをと腹筋をしているらしく、徐々に上半身はムキムキになっているとのこと。下半身のトレーニングは、散歩とのこと。

▽入船亭扇辰 いりふねてい せんたつ
25歳で入船亭扇橋師匠に入門、現在入門28年目、2002年3月真打昇進。
最近、iPadを駆使している。帰りの新幹線では、ハイボールとチーザを嗜まれるとのこと。先日のバリ島でのご旅行中につかった爪楊枝が大変フィットするとのこと、お土産に1万本の爪楊枝をお土産にされたとのこと。

レビュー

文:pem(ペム) Twitter:@shina1220  性別:女 年代:20代 趣味:宝塚・舞台全般観劇、時々ハロプロその他諸々
3月13日(月)18:00〜19:00
入船亭扇里(いりふねてい せんり) 「弥次郎」
入船亭扇辰(いりふねてい せんたつ)「五人廻し」



『何かにハマる時って客層って気になるよねっていうおはなし』



筆者は舞台・野球・アイドル・ゲームなどなど趣味が幅広くもはや客層なんて気にせず飛び込んでしまう人間なのですが普通の人はそうはいかないらしく宝塚を男性に勧めると『女の人ばっかりなんでしょ?』とかハロプロを女性に勧めたら『男の人ばっかりなんでしょ?』と少し抵抗があるようで(ちなみに宝塚は男性おひとりさまとか男性同士もいますし、ハロプロに関してはおじさんと若い女の子半々くらいだったりします)、落語気になりつつもそういうところでまだ一歩踏み出せないって人ももしかしたらいるやも知れません。

ということで渋谷らくごの客層はというと見た所、高校生〜80歳くらいまでいるかなといった感じで老若男女揃っております。そしてどのジャンルも普通はこの層が多いというのがありますが本当にかなりバラけててかなり特殊(一番近いもので言えば映画館?)男女も半々くらいに見えますし年齢でいうとあえていうなら20〜40代が多いかな??という感じ。そして男性も女性もおひとり様・お友達同士、カップル・夫婦・お仕事仲間といった感じでこれまた見事にいろんな方がいる。(こう書きながら気づいたことを言うと、落語家さんは高座に上がってから何の噺をするか考えたりすることが多いようですがこんなに客層がばらけてるとこの層ならこれが鉄板!というわけにもいかず選ぶのが難しそう…)

まあ何が言いたいかというと誰が誰と行こうと1人で行っても浮かないですし、誰が行ってもシブラクは面白いと感じていただける催し物だと思っておりますので“落語気になる”って方、次回のシブラクは4月14日(金)~18日(火)ですので気になった方は足を運んでみてはいかがでしょうか?来月まで待てないよ!という方はPodcastや動画が1席丸ごと配信されてますので渋谷らくごHPのトップページにURL貼ってありますのでぜひご覧ください。ということで、これからが本題の3月13日18時回のレビューになります。




入船亭 扇里『弥次郎』


  • 入船亭扇里師匠

    入船亭扇里師匠


ポッドキャストではよく聞いているのですが生で聴くのは今回が初めてです。個人的には扇里師匠、ベイスターズファンということでもう既に私の中の好感度だだ上がりです。

扇辰師匠がまくらでおっしゃって下さったのですが今回の扇里師匠のお着物は扇橋師匠の形見の品だそうです。そして噺は扇橋師匠がやってらした弥次郎ということも扇辰師匠がお話しして下さって、それを聴く前から面白かったのですが聴いた後はほっこりあたたかい幸福感に満たされました、扇辰師匠の補足に感謝しかない。

まくらでは花粉症だけど高座に上がるとピタッと症状が止まるので『あぁ緊張してるんだなあ、真面目に落語取り組んでるんだなあ。』ということで『もしも高座でクシャミしたときは見限ってください』とおっしゃるんもんだからフラグ立てちゃったよとちょっとドギマギしてしまいました(笑)あとは扇辰師匠のおはなしも。自分が7番弟子で扇辰師匠が6番目ということで大変お世話になった等々。こういう話を聞くと兄弟会っぽいと思ったのですがはじめての兄弟会なのでこういうのが正解はまだ知りません(汗)

お噺は弥次郎という男が武者修行に行ったということをご隠居に語るんですが、それがもうめちゃくちゃなので隠居が常にツッコミまくってさらに話が展開していくという流れなんですがもう内容がくだらない(笑)クスッと笑えるのオンパレード、でもクスッと笑い取れるっていうのがすごいんだろうなあという内容。それにしても“おはよう玉”のくだり聞きながらこの話考えた人の想像力の豊かさに感心してしまった。なんという柔らかい脳。私のツボだったところは『父ちゃんの仇ーー!!父ちゃんの仇ー!!』の猪がめっちゃ可愛かったところです。もう一度聴きたいのであそこの音源ください…。




入船亭 扇辰『五人廻し』


  • 入船亭扇辰師匠

    入船亭扇辰師匠


落語を生で聴くのは4回目なのですがとうとう生で聴くのは2回目となりました扇辰師匠。

扇里師匠が真打ちになってから兄弟会をするのは今回が初めてだそう(そんな貴重な会だったのか…この貴重な体験は私の中で今後落語に更にハマってから有り難みを実感するのだろう…)扇里師匠が入門するまでの間7年間末弟として過ごしてきたため入ってきたときは本当に嬉しかったが、しかし末弟ではなくなったことにより師匠のお付きとしての仕事もなくなったため収入源も減り次第に憎しみへと変わっていったと言いつつもそのことにより意識が変わったと感謝を述べる扇辰師匠。

そこから娯楽の話に変わったのですが私の一番ツボだったところは「こんなに娯楽で溢れてるのに渋谷らくご、その中でも入船亭の兄弟会に来るなんて世を捨てたとしか思えない。」でした。世捨て人約70人くらい集結しちゃったよ!笑
そして今ではなくなった娯楽がある。それは吉原ということで吉原のお話に。1月の渋谷らくごの時もそうだったのですがお噺にいく前に聞く側がわからないと思われることを面白くそして丁寧に説明してくださるので置いてかれず話もスッと入ってきて存分に楽しめるので初心者にとっても優しい扇辰師匠。それにしても最近、吉原について詳しくなる日々。

ということで昔、関東の遊郭には“廻し”といって複数の泊まり客に対して遊女1人でお相手するというものがあったらしくまぁ嫌われるとちょっとしか顔出さなかったり全然来なかったりしたらしく、逆にちょっとでも長くいてくれるとそれがたまらないというものだったらしく『五人廻し』は7人登場人物がいたんですがその内の遊女が廻ってこなくて揚げ代クレームを出す4人がとにかく濃い!(笑)しかも濃さがみんな違う方向で怒ってるんだけど愉快でしょうがない、この一癖も二癖もあるクレーマー達(いや気持ちは勿論わかるけど、でもやっかいな性格ばかり)に対応する若い者(従業員)に同情しつつももれなく面白い勝ちます(笑)サゲは遊女・喜瀬川の強かさが光る内容で、一枚上手。でもこういうのをいつも相手にしてるんだから強くもなるよね…。既にもう一回聴きたい。聴きたいのに舞台と違って演目が基本出てないから聴きたくても聴きに行けないのがちょっと悲しい。


私にとってはじめてのふたりらくご・兄弟会だったのですが平日20時回や土日の回とはまた違った空気感と人数が落ち着いてるためなんとも言えない贅沢さに包まれた上質な1時間…。そして兄弟会、はじめてなので比べるものがないのでなんと言えばいいのか難しいんですがまくらでお互いのことを語ったり昔の話だったりお師匠様のお話しとほっこりするような空気を感じて心地の良いひとときでございました。


【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」3/13 公演 感想まとめ

写真:渋谷らくごスタッフ