渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2017年 7月14日(金)~18日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

イラスト

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7月18日(火)18:00~19:00 古今亭志ん八 古今亭文菊

「ふたりらくご」平日18時、古典を聴こう

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プレビュー

学生や自由人が気軽に行ける時間帯に、1時間の異世界トリップ体験を。
食事の前に、翌日のエネルギー補給を。
古典落語の世界に浸るために、達人を聴くことをオススメします。
今月は、真打を目前にした二つ目の古今亭志ん八さんが、先輩に挑む二番勝負を企画しました。
この日はおなじユニット「TEN」の同志、文菊師匠との競演です。

▽古今亭志ん八 ここんてい しんぱち
28歳で入門、芸歴14年目、2006年11月二つ目昇進。今年9月に真打ち昇進決定。入門した師匠である「志ん五」の名跡を襲名する。この「どがちゃが」では、志ん八さんの4コマ漫画が掲載中。先月「創作らくごの鬼軍曹」林家彦いち師匠などと一緒に対馬へキャンプに出かける。彦いち師匠から渓谷釣りを教わる。先日4匹のメダカがたまごからかえったとのこと。

▽古今亭文菊 ここんてい ぶんぎく
23歳で入門、芸歴15年目、2012年9月真打ち昇進。この夏に解散する落語協会若手ユニット「TEN」のメンバーのリーダー的存在。志ん八さんの直接の先輩で前座修行を共にしていた。細身のジーンズにハットを華麗に着こなす。当日の前座さんからスタッフまで全員の方々に頭をさげてくださるほどに全員に優しい。

レビュー

文:さとーちずる Twitter:@chinnensadak 年代:30代、職業:普通の会社員、趣味:ビュッフェに行く。水泳。吉本新喜劇のすち子シリーズを見る。

7月18日(火)18時-19時「ふたりらくご」
古今亭志ん八(ここんてい しんぱち) 「粗忽長屋」
古今亭文菊(ここんてい ぶんぎく) 「青菜」


この日のふたりらくごは、古典落語の世界に浸る会。
古今亭志ん八さんと、古今亭文菊師匠。直接の先輩後輩関係にあたるお二人ということで、どんな空気感が生み出されるのかを楽しみにユーロライブを訪れました。

古今亭志ん八さん

  • 古今亭志ん八さん

    古今亭志ん八さん

落語の話からは少し外れますが以前、志ん八さんがしぶらくで配布される読み物「どがちゃが」の4コマ漫画の作者であることを知り、急に親近感が湧いたことを覚えています。それ以来「どがちゃが」を手にすると、まずは志ん八さんの4コマ漫画からページをめくるようになりました。
さて、落語の方ですが、まくらから本編まで隙なく楽しませていただきました。
まくらでは文菊師匠が真打に昇進された際の志ん八さんの武勇伝(?)を披露して下さいました。文菊師匠の祝宴の幹事を任された志ん八さんが焼肉屋のお会計で天国と地獄を見た話。肉の日(29日)には全ての焼肉屋が半額キャンペーンをするわけではないので、きちんと確認しましょう!というご自身の粗忽エピソードから本編は「粗忽長屋」へと移っていきました。
長屋の隣同士に住んでいる八と熊は揃って粗忽者。八が浅草の観音様にお参りに行くと、黒山の人だかり。なんとか人の股ぐらをかき分け最前列にたどり着くとそこには行き倒れが。行き倒れの顔を見るとそこにいたのはなんと熊公?!本当に熊の死骸なのか。確認するために、長屋まで熊本人を呼びに帰る。熊も熊で、八に言いくるめられ自分の死骸を確認しに行くというなんともおバカな二人の話。
登場人物たちのボケとツッコミの掛け合いがとにかく面白い。志ん八さんの言い回しや間や表情全てがおかしくてしょうがない。
真打になられても、お客さんを大切になさる、優しい志ん八さんのままでいてください。これからも志ん八(志ん五)落語を楽しみにしています。

古今亭文菊師匠

  • 古今亭文菊師匠

    古今亭文菊師匠

私にとって文菊師匠の落語はこの日が初めて。綺麗に剃られた頭が印象的で、御年38歳とは思えない貫録を感じました。
演題は「青菜」。ある植木屋がお屋敷の仕事をさぼってボケッとしていると、そこの主人に声をかけられ酒を勧められる。酒だけでなく鯉の洗いまでご馳走になる。そして主人が菜もご馳走しようと奥さんを呼ぶと「菜は食べてしまったから無い」という意味の隠し言葉が披露される。すっかり感心した植木屋は長屋に帰ると、自分も隠し言葉を試してみたくなる。奥さんを無理やり押し入れに隠れさせ、たまたま通りかかった熊を相手に再現しようとするが、なかなかうまくいかないという噺。
序盤に植木屋が冷酒やら鯉の洗いやら氷を口に含むシーンは何とも涼しげでうっとり。文菊師匠の口調や声色が「これぞ古典落語」という感じで、ゆったりと拝聴していました。しかし中盤あたり、植木屋が驚いて発した「びゃおう」という奇声に不意打ちされました。このあたりから植木屋の滑稽さにエンジンがかかります。文菊師匠の計算通りなのでしょうけど、終盤に向かうにつれ、お客さんの笑いも加速していきます。コミカルな動き、惚けた表情、屋敷の主人のように理想通りには進まないセリフ回し。前の笑いの余韻が消失しないうちに、笑いの波が次々と押し寄せてくる。植木屋の奥さんが暑さでぐったりとして押し入れから登場する頃には、滑稽の極みに達していました。単純に面白かった。この日初めて文菊師匠の落語を知ることができて嬉しかったです。

志ん八さんの「粗忽長屋」から文菊師匠の「青菜」へと、今回は「長屋」&「粗忽者」繋がりのふたりらくごでした。ひょうの降る悪天候の日に足を運んだ甲斐があり、お二人の競演を大いに楽しませていただきました。

【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」7/18 公演 感想まとめ

写真:渋谷らくごスタッフ