渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2017年 8月11日(金)~15日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

イラスト

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8月12日(土)17:00~19:00 柳家わさび 雷門音助 三遊亭遊雀 古今亭菊之丞

「渋谷らくご」 菊之丞シリーズ 2017年夏

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プレビュー

 3ケ月に一度、渋谷らくごに出演してくださっている古今亭菊之丞師匠。油のりまくりの40代、低音と心地よいリズムで展開する語りの魅力を存分に味わっていただきたい。
 生まれてはじめて落語を聴くという方には全力でオススメしたいこの回は、二つ目の白眉・わさびさん、新星・音助さん、そしていかなる状況でも最高の仕事をしてくださる職人・遊雀師匠も登場。想像するだけでヨダレがでる菊之丞シリーズをどうぞ!


▽柳家わさび やなぎや わさび
23歳で入門、芸歴14年目、2008年二つ目昇進。映画『落語物語』では主演をつとめる。NHKBSの「our SPORTS!」に出演中。笑点の若手大喜利のメンバーに選ばれ、先日優勝した。前座時代は、師匠の家に住み込み修行をしていた。住み込みは、現在の落語界で珍しい。師匠から常に見張られているのではないかと疑心暗鬼になる。日常生活では眼鏡をしていて、かわいい。

▽雷門音助 かみなりもん おとすけ
23歳で入門、芸歴6年目、2016年2月二つ目昇進
落語家になる前は信用金庫で働いていたので、お金の枚数をかぞえるのがとても早い。学生時代は、京都の花街にあるおしゃれな喫茶店でバイトをしていたとのこと。日常生活では眼鏡をしていて、かわいい。好きな食べ物はそばとすあま。

▽三遊亭遊雀 さんゆうてい ゆうじゃく
23歳で入門、芸歴30年目、2001年9月真打ち昇進。とてつもない乗り物マニア。飛行機に関しては、「オールフライトニッポン」という本を出版している。バスに関しては、携帯灰皿に「バスで帰ろう」というスローガンを貼付けていた。日常生活では眼鏡をしている。おしゃれな眼鏡をたくさんもっていて、どれも個性的なのにおしゃれ。

▽古今亭菊之丞 ここんてい きくのじょう
18歳で入門、芸歴26年目、2003年9月真打ち昇進。この夏公開の映画、ディズニー・ピクサーの「ファインディング・ドリー」の吹き替えで、声優デビュー。去年の落語協会のイベントでは、約3000個のたこ焼きを焼ききる。今年も菊之丞師匠はたこ焼きを焼くとの噂。NHKドラマ、「64」に出演。役柄は、警察庁のキャリア官僚で、将来警察庁長官を狙う県警本部長役。

レビュー

文:えり Twitter:@eritasu 30歳 女性 進路に悩む事務職
8月12日(日)17時~19時「渋谷らくご」
柳家 わさび(やなぎや わさび)「宮戸川」
雷門 音助(かみなりもん おとすけ)「転宅」
三遊亭 遊雀(さんゆうてい ゆうじゃく)「堪忍袋」
古今亭 菊之丞(ここんてい きくのじょう)「唐茄子屋政談」

お盆で古典


  • 柳家わさびさん

    柳家わさびさん

落語の見方やしぐさ、専門用語をわかりやすく解説してくれるわさびさん。突然始まって戸惑わないように、優しく手を引いて落語の世界に導いてくれるような感じ。噺に出てくるのはお花ちゃんと半七、そして霊岸島の叔父さん。宮戸川で大抵演じられるのは笑いどころの多い前半部分で、後半はガラリと変わって怖い印象です。今回も楽しい楽しい前半の部分。笑いながらも肩の力を抜き、リラックスしていく感覚に身を委ねます。最後の色っぽい場面もやりすぎることなく、さらりと。爆笑系の噺を熱演されているときも素晴らしいわさびさんですが、今回のような軽い雰囲気は、四人のうちの一番目としても丁度良いバランスで、絶妙。かっこいいです。

  • 雷門音助さん

    雷門音助さん

前座さんの頃から妙に風格がある方だなぁと思っていました。お若く見えるのに、余裕を感じるしっかりとした口調とのギャップが素敵。女性の、特に年上の女性を演じるときの、声の色っぽさと知的な雰囲気がお見事。賢い女性が登場する「転宅」という噺はよく似合っていらっしゃるように感じます。笑いどころも多く、思いきり騙される様が爽快。泥棒の方もドジっぷりがなんだかかわいらしく愛嬌があって、終盤少し気の毒になるほどです。二つ目になりたての音助さんの三年後、五年後、十年後がどんな風に変わっていくのかとても興味深いです。

  • 三遊亭遊雀師匠

    三遊亭遊雀師匠

遊雀師匠はニコニコと軽く冗談を言いつつも、突然低い声で目がギラッとする瞬間があって、ドキッとします。「堪忍袋」は袋の中に愚痴を叫んで閉じ込めるという「王様の耳はロバの耳」的なシンプルな物語ですが、叫んだあと、袋の紐をギュッと絞めたときの妙に得意気な表情がおかしくてたまりません。細かい所作ひとつひとつにおかしさが詰め込まれていて、見るほどに引き込まれます。それと、遊雀師匠はお客さんの反応を見て、その対話を楽しんでいる感じがします。ライブ感が強いです。一筋縄じゃあいかないぞという余裕や、少しブラックな一面が見え隠れする大人の魅力も素敵です。

  • 古今亭菊之丞師匠

    古今亭菊之丞師匠

うふふっとつい微笑んでしまうほど、深みがあっていい声すぎる菊之丞師匠。落語の登場人物(八っつあん、熊さん、与太郎など)に自分を重ねて見ることは少ないのですが、若旦那はだけは近い存在に感じます。つい毎日のように落語や演芸に遊びにいってしまうもので、若旦那が怒られていると一緒に反省するのです。若旦那が売り声の練習中に花魁の妄想が激しくなり自然と歌いだす場面。歌があまりに素晴らしく、うっとり聞き惚れて、拍手したかったのにタイミングを逃しました。後半の、若旦那が粋な行いをする場面も、自分より困っている人に出会ったら助けてしまう江戸の人情が嬉しく、なんだかホッとします。前のお三人の流れがあっての、唐茄子屋政談。トリに相応しい人情味たっぷりの高座、聴けて嬉しかったです。

【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」8/12 公演 感想まとめ

写真:渋谷らくごスタッフ