渋谷らくごプレビュー&レビュー
2017年 8月11日(金)~15日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
アーカイブ
- 2025年04月
- 2025年03月
- 2025年02月
- 2025年01月
- 2024年12月
- 2024年11月
- 2024年10月
- 2024年09月
- 2024年08月
- 2024年07月
- 2024年06月
- 2024年05月
- 2024年04月
- 2024年03月
- 2024年02月
- 2024年01月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年09月
- 2023年08月
- 2023年07月
- 2023年06月
- 2023年05月
- 2023年04月
- 2023年03月
- 2023年02月
- 2023年01月
- 2022年12月
- 2022年11月
- 2022年10月
- 2022年09月
- 2022年08月
- 2022年07月
- 2022年06月
- 2022年05月
- 2022年04月
- 2022年03月
- 2022年02月
- 2022年01月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年09月
- 2021年08月
- 2021年07月
- 2021年06月
- 2021年05月
- 2021年04月
- 2021年03月
- 2021年02月
- 2021年01月
- 2020年12月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年09月
- 2020年08月
- 2020年07月
- 2020年06月
- 2020年05月
- 2020年04月
- 2020年03月
- 2020年02月
- 2020年01月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年09月
- 2019年08月
- 2019年07月
- 2019年06月
- 2019年05月
- 2019年04月
- 2019年03月
- 2019年02月
- 2019年01月
- 2018年12月
- 2018年11月
- 2018年10月
- 2018年09月
- 2018年08月
- 2018年07月
- 2018年06月
- 2018年05月
- 2018年04月
- 2018年03月
- 2018年02月
- 2018年01月
- 2017年12月
- 2017年11月
- 2017年10月
- 2017年09月
- 2017年08月
- 2017年07月
- 2017年06月
- 2017年05月
- 2017年04月
- 2017年03月
- 2017年02月
- 2017年01月
- 2016年12月
- 2016年11月
- 2016年10月
- 2016年09月
- 2016年08月
- 2016年07月
- 2016年06月
- 2016年05月
- 2016年04月
- 2016年03月
- 2016年02月
- 2016年01月
- 2015年12月
- 2015年11月
- 2015年10月
- 2015年09月
- 2015年08月
- 2015年07月
- 2015年06月
- 2015年05月
- 2015年04月
プレビュー
東の一之輔、西の春蝶。
講談の松之丞、浪曲の太福。
私は常にそう思って「渋谷らくご」に出てもらっています。とにかく一度聴いてください。
この二人はとんでもない領域に足を踏み入れています。努力する才能、裏切らない場数、圧倒的なサービス精神。
満足度120%をあなたに。お盆にシブラクに足を運ぶだけの価値は、この二人が保証してくれます。
▽玉川太福 たまがわ だいふく
1979年8月2日、新潟県新潟市出身、2007年3月入門、2012年日本浪曲協会理事に就任。「わかりやすい浪曲」を目指して日々奮闘中。大学までラグビーを続けていた熱血漢。2015年「渋谷らくご創作らくご大賞」を受賞。疲れたときは、ニンニク注射をしてスタミナを回復する。毎晩娘さんを寝かせてから、夜中作業を始める。たまに娘さんと一緒に朝まで寝てしまう。
▽桂春蝶 かつら しゅんちょう
19歳で入門、芸歴23年目、2009年8月、父の名「春蝶」を襲名する。
関東と関西を行き来される生活をする。岡本太郎の太陽の塔のブローチをつけている。先日引っ越して、その時断捨離をした。10年前銭湯で買った不思議な瓶のジュースがインテリアとして美しく、捨てるかどうか迷う。猫を飼っていて、お名前は「千代」。
レビュー
文:瀧美保 Twitter:@Takky_step 事務職 趣味:演劇・美術鑑賞、秩父に行くこと
「ふたりらくご」
玉川太福(たまがわ だいふく)/玉川みね子(たまがわ みねこ)-悲しみは埼玉に向けて
桂春蝶(かつら しゅんちょう)–天災
今回の演目は、三遊亭円丈師匠作「悲しみは埼玉に向けて」の浪曲バージョン。「きたせんじゅ(ひらがなで)」という言葉には、悲しみに満ちた響きがあるという。特に「じゅ」の部分。じゅじゅじゅじゅじゅじゅじゅ……。愁いを帯びた太福さんの表情と語り。でもどこか可笑しみを感じるのは何故だろう。20年前の北千住の景色。パチンコ店が2軒に居酒屋が1軒。居酒屋での役職の無駄遣い、ちょっと使ってみたくなる。当時の景色や日常を描写しているだけなのに、その視点や愛を込めて茶化しているのが面白い。
19時43分発、準急、新栃木行き。叙情的な雰囲気の中、繰り返される言葉。力強い語りだが、どこか寂しさを漂わせる。間に北千住のたくさんの別名や沿線の駅の情報、さりげなく勉強。へーそうだったのかーと思いながら、北千住のまとう空気の意味を知った……のかもしれない(笑)。そうそう、あれは密かな宣伝だったのかしら?太福さんの「三ノ輪橋とか、くる?」、あの話も好き。太福さんが描く日常の物語は、私たちの当たり前の毎日に寄り添って、不条理なことやちょっとした面倒なことを、大きな愛で笑いに変えてくれる。少し見方を変える為の気づきを与えてくれるのかも。おお。電車のマナー広告も色々あるけれど「やめましょう。電車に石を投げるのは」って。この広告、本当に?って思ってしまうんですが。これはオリジナルにあるのかしら?太福さんの発見?マナー広告からそんな味を出しているなんて、楽し過ぎる。
物語の後半は、心の声がふんだんに織り込まれた場面場面が楽しい。東京未来大学の学生……かもしれない彼女。チエちゃんという名前で振られた……のかもしれない。母親はスナックをやっていて、親に心配をかけないように、リンゴをむきながら一人、悲しみにくれる……かもしれない。妄想に妄想を重ね、聴いているこちらも心でツッコミまくりです。「変な気持ちは、ほぼ無い」って、ゼロじゃない所がリアルでいい。2回言うくらい、本当にゼロじゃない(笑)。彼女に声をかけなきゃ、と強く思いながら、急な展開を見せる最後。劇的、かつ当たり前な行動に笑ってしまいます。去っていく電車を見送る最後が、映画のラストシーンのよう。全編を通して漂う哀しみの中のおかしみ。太福さんの風景描写のチカラ、魅力を堪能です。
そんな一つ一つの事柄が異彩を放つ、普通でいられない人々。いやいや、その方々にとってはそれが普通なのでしょうが、私なんぞにはその瞬間にその選択肢はないなぁと思う。やしきたかじんさんの突き抜けた遊び方や、「落語はな、向こから来んのや」という言葉。ある壁を超えたからこそ見える世界なのでしょうか?春蝶師匠と一緒に”困惑の種”を抱えて(嬉しいけれど)、いつかわかる日が来るのかどうか……。
この日は心学の出てくる噺、「天災」。この噺を好きだとおっしゃる通り、とても楽しそうな春蝶師匠。心学の先生、ホリカンことホリサダカンベエのドヤ顔が好き。親を蹴るような乱暴者の八五郎に話を聞かせる技も凄いけれど、あのちょっとワルイ顔がいい。手紙を読みながら、交互に八五郎を見る時の、目の座った無表情もなんとも言えない。
春蝶師匠の高座での自然な姿はとても魅力的です。力強く動いたりしゃべったり、切り替わる人物も、とても自然。そういう人たちがいる、と感じる。だからこちらもとても自然にその世界に入っていて、楽しい。観ている方には自然でも、きっと師匠は全身を使って話しているから大変だろうと思う。でも無理を感じない何気なさ。木を描く八五郎のけだるげな、それでいて大きな動きが印象に残っている。あー、でも単純に笑っちゃったのは、自由な高座でストレス発散している師匠の姿かもしれません(笑)。
それから思ったのが、言葉を繰り返すことで生まれてくる面白さ。よく浪曲でズルいなぁと感じていたけれど、春蝶師匠も落語の中でやっているのを見て、繰り返しを面白く感じさせる技術があるんだと思う。ただ繰り返してもそれだけ。繰り返し時にどう繰り返すのか、そのチョイスが太福さんも春蝶師匠も絶妙。
後半の、天災を知って「キュンときた」八五郎が好き。その素直さに観ててこちらもキュンとしちゃう。そして天災を知ってからの八五郎の尊大でありながら、何かが変わった八五郎の姿がいい。頭でわかったというより、感覚で理解したようなその自由さ。春蝶師匠の自然さにも通じる自由さが、八五郎をイヤな奴と感じさせ過ぎないのかなと思う。困ったヤツ。春蝶師匠の自然さをもっともっといろんな噺で観てみたいですね。
【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」8/14 公演 感想まとめ
写真:渋谷らくごスタッフ
「ふたりらくご」
玉川太福(たまがわ だいふく)/玉川みね子(たまがわ みねこ)-悲しみは埼玉に向けて
桂春蝶(かつら しゅんちょう)–天災
玉川太福/玉川みね子-悲しみは埼玉に向けて
-
玉川太福さん・玉川みね子師匠
今回の演目は、三遊亭円丈師匠作「悲しみは埼玉に向けて」の浪曲バージョン。「きたせんじゅ(ひらがなで)」という言葉には、悲しみに満ちた響きがあるという。特に「じゅ」の部分。じゅじゅじゅじゅじゅじゅじゅ……。愁いを帯びた太福さんの表情と語り。でもどこか可笑しみを感じるのは何故だろう。20年前の北千住の景色。パチンコ店が2軒に居酒屋が1軒。居酒屋での役職の無駄遣い、ちょっと使ってみたくなる。当時の景色や日常を描写しているだけなのに、その視点や愛を込めて茶化しているのが面白い。
19時43分発、準急、新栃木行き。叙情的な雰囲気の中、繰り返される言葉。力強い語りだが、どこか寂しさを漂わせる。間に北千住のたくさんの別名や沿線の駅の情報、さりげなく勉強。へーそうだったのかーと思いながら、北千住のまとう空気の意味を知った……のかもしれない(笑)。そうそう、あれは密かな宣伝だったのかしら?太福さんの「三ノ輪橋とか、くる?」、あの話も好き。太福さんが描く日常の物語は、私たちの当たり前の毎日に寄り添って、不条理なことやちょっとした面倒なことを、大きな愛で笑いに変えてくれる。少し見方を変える為の気づきを与えてくれるのかも。おお。電車のマナー広告も色々あるけれど「やめましょう。電車に石を投げるのは」って。この広告、本当に?って思ってしまうんですが。これはオリジナルにあるのかしら?太福さんの発見?マナー広告からそんな味を出しているなんて、楽し過ぎる。
物語の後半は、心の声がふんだんに織り込まれた場面場面が楽しい。東京未来大学の学生……かもしれない彼女。チエちゃんという名前で振られた……のかもしれない。母親はスナックをやっていて、親に心配をかけないように、リンゴをむきながら一人、悲しみにくれる……かもしれない。妄想に妄想を重ね、聴いているこちらも心でツッコミまくりです。「変な気持ちは、ほぼ無い」って、ゼロじゃない所がリアルでいい。2回言うくらい、本当にゼロじゃない(笑)。彼女に声をかけなきゃ、と強く思いながら、急な展開を見せる最後。劇的、かつ当たり前な行動に笑ってしまいます。去っていく電車を見送る最後が、映画のラストシーンのよう。全編を通して漂う哀しみの中のおかしみ。太福さんの風景描写のチカラ、魅力を堪能です。
桂春蝶-天災
-
桂春蝶師匠
そんな一つ一つの事柄が異彩を放つ、普通でいられない人々。いやいや、その方々にとってはそれが普通なのでしょうが、私なんぞにはその瞬間にその選択肢はないなぁと思う。やしきたかじんさんの突き抜けた遊び方や、「落語はな、向こから来んのや」という言葉。ある壁を超えたからこそ見える世界なのでしょうか?春蝶師匠と一緒に”困惑の種”を抱えて(嬉しいけれど)、いつかわかる日が来るのかどうか……。
この日は心学の出てくる噺、「天災」。この噺を好きだとおっしゃる通り、とても楽しそうな春蝶師匠。心学の先生、ホリカンことホリサダカンベエのドヤ顔が好き。親を蹴るような乱暴者の八五郎に話を聞かせる技も凄いけれど、あのちょっとワルイ顔がいい。手紙を読みながら、交互に八五郎を見る時の、目の座った無表情もなんとも言えない。
春蝶師匠の高座での自然な姿はとても魅力的です。力強く動いたりしゃべったり、切り替わる人物も、とても自然。そういう人たちがいる、と感じる。だからこちらもとても自然にその世界に入っていて、楽しい。観ている方には自然でも、きっと師匠は全身を使って話しているから大変だろうと思う。でも無理を感じない何気なさ。木を描く八五郎のけだるげな、それでいて大きな動きが印象に残っている。あー、でも単純に笑っちゃったのは、自由な高座でストレス発散している師匠の姿かもしれません(笑)。
それから思ったのが、言葉を繰り返すことで生まれてくる面白さ。よく浪曲でズルいなぁと感じていたけれど、春蝶師匠も落語の中でやっているのを見て、繰り返しを面白く感じさせる技術があるんだと思う。ただ繰り返してもそれだけ。繰り返し時にどう繰り返すのか、そのチョイスが太福さんも春蝶師匠も絶妙。
後半の、天災を知って「キュンときた」八五郎が好き。その素直さに観ててこちらもキュンとしちゃう。そして天災を知ってからの八五郎の尊大でありながら、何かが変わった八五郎の姿がいい。頭でわかったというより、感覚で理解したようなその自由さ。春蝶師匠の自然さにも通じる自由さが、八五郎をイヤな奴と感じさせ過ぎないのかなと思う。困ったヤツ。春蝶師匠の自然さをもっともっといろんな噺で観てみたいですね。
【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」8/14 公演 感想まとめ
写真:渋谷らくごスタッフ