渋谷らくごプレビュー&レビュー
2017年 12月8日(金)~12日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
最速・新解釈の落語の使い手 立川こしら師匠と、ゆったり・ヴィンテージの落語の使い手 入船亭扇里師匠。
落語界のエッジの効いた両極にいる、コントラスト比最大の落語会。渋谷らくごでは定期的に行っている組みあわせの1時間です。
▽立川こしら たてかわ こしら
21歳で入門、芸歴21年目、2012年12月真打昇進。フットワークがひたすらに軽く、日本のみならず海外でも独演会を開催している。音源収録・編集・ジャケットデザインまでをすべてプロデュースしたCD『死神』が12月27日 エイベックスから発売。
▽入船亭扇里 いりふねてい せんり
19歳で入門、芸歴22年目、2010年真打ち昇進。絵本作家。熱狂的な横浜DeNAベイスターズファン。食べられない時期は競馬で稼いでいた。渋谷らくごのポッドキャストから「扇里ファン」が急増中。いま太平記がマイブーム。寝起きで筋トレをしている。
レビュー
文:瀧美保 Twitter:@Takky_step 事務職 趣味:演劇・美術鑑賞、秩父に行くこと
12月8日18時〜19時「ふたりらくご」
立川こしら(たてかわ こしら)「死神見習い」
入船亭扇里(いりふねてい せんり)「文七元結」
それから扇里師匠と一緒の日は、自由にやる日だそうで。仲良しだー。
噺は師匠いわく「死神みたいなやつ」。こしら師匠の落語はまだ数回しか聴いたことがないけれど、いつも古典落語にオリジナルのアレンジが入っていて、もうすっかり別のストーリーになっています。そしてその古典との違いを楽しんだり、ええ!?そんな風になっちゃうの?という展開に驚き楽しませてもらってました。今回も出だしはそんな感じかなと思っていたのですが、いやもちろんそうなんだけど、これまで以上に見事に別のお話でした。むしろ設定にちょこっと古典の死神を使わせてもらっただけ、みたいな。その発想はどこから出てくるのかしら。
主人公がこれほど中身のないキャラクターなのがまず凄い。行動に理由がないというか、よくわからない(笑)。その行動をとった理由が見当たらないし、あえて言うならその時気が向いたから、でしょうか。死神の方もキャラクターは死神らしくクセのありそうなヤツなのに、杖をつかないし、光の方に行かないし、呪文も教えない。例のあの呪文は一回も出てこない。この設定の思い切りの良さったらないですね!見守り役のキヌさんもいるし、 話がどこへ向かうのか想像できないし、こしらワールドを思いっきり楽しませて頂きました。
そうして丁寧につむがれていく物語。左官の長兵衛は博打(ばくち)にハマって借金まみれだけれど、軽い男じゃない。女房の小言・泣き言にも少しバツの悪そうな顔はするけれど、納得しているからうんとうなづく。娘がいなくなったから、探しに行こうとしている。こんな男が博打に……?とは思わない。普通の真面目な人がかえって深みにはまっちゃったりするんだろうな。っていうか、扇里師匠も一時期それで生活してたって、まあ凄いことですわ。それでこそ落語家!?なのかどうかは知りません。でも、なんていうか、嘘くさくない感じ。朴訥としたこんな男がいるだろうってスルッと納得させる扇里師匠。
文七をつかむ長兵衛の腕と右手こぶしの力の強さ、言葉だけではなくて、全身で文七を止めている姿が印象的でした。
文七は真面目なんだけど、子供なんだなあって、扇里師匠の文七元結で初めて思いました。去勢を張っているけれど、散りばめられている子供らしい話しぶりや仕草。幼い考え方。対して佐野槌の女将さんのすっと伸びた背筋と首筋。それに合わせ、気持ち浮いたあごのライン。落ち着いた居住まいと、「その時はお久を店に出すよ」というある種の覚悟。「お前が悪いんだ」という言葉も長兵衛を責めるのではなく、現実を突きつける強さ。
それぞれの人物が丁寧に描かれていて、そこから広がっていく物語。好みの問題ですけど、お金を受け取るところの長兵衛と女房をもっとやって欲しかったなー。女房に更にしつこく袖を引っ張ってもらいたかった。あのやりとり好き。でもべっこう問屋の旦那がうまいこと言っちゃったから仕方ないかな。ストーリーテラー扇里師匠はこの日も健在でした。扇里師匠ありがとう。今年最後のシブラク初日からいいもの見ました。
【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」12/8 公演 感想まとめ
写真:渋谷らくごスタッフ
12月8日18時〜19時「ふたりらくご」
立川こしら(たてかわ こしら)「死神見習い」
入船亭扇里(いりふねてい せんり)「文七元結」
立川こしら-死神見習い
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立川こしら師匠
それから扇里師匠と一緒の日は、自由にやる日だそうで。仲良しだー。
噺は師匠いわく「死神みたいなやつ」。こしら師匠の落語はまだ数回しか聴いたことがないけれど、いつも古典落語にオリジナルのアレンジが入っていて、もうすっかり別のストーリーになっています。そしてその古典との違いを楽しんだり、ええ!?そんな風になっちゃうの?という展開に驚き楽しませてもらってました。今回も出だしはそんな感じかなと思っていたのですが、いやもちろんそうなんだけど、これまで以上に見事に別のお話でした。むしろ設定にちょこっと古典の死神を使わせてもらっただけ、みたいな。その発想はどこから出てくるのかしら。
主人公がこれほど中身のないキャラクターなのがまず凄い。行動に理由がないというか、よくわからない(笑)。その行動をとった理由が見当たらないし、あえて言うならその時気が向いたから、でしょうか。死神の方もキャラクターは死神らしくクセのありそうなヤツなのに、杖をつかないし、光の方に行かないし、呪文も教えない。例のあの呪文は一回も出てこない。この設定の思い切りの良さったらないですね!見守り役のキヌさんもいるし、 話がどこへ向かうのか想像できないし、こしらワールドを思いっきり楽しませて頂きました。
入船亭扇里-文七元結
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入船亭扇里師匠
そうして丁寧につむがれていく物語。左官の長兵衛は博打(ばくち)にハマって借金まみれだけれど、軽い男じゃない。女房の小言・泣き言にも少しバツの悪そうな顔はするけれど、納得しているからうんとうなづく。娘がいなくなったから、探しに行こうとしている。こんな男が博打に……?とは思わない。普通の真面目な人がかえって深みにはまっちゃったりするんだろうな。っていうか、扇里師匠も一時期それで生活してたって、まあ凄いことですわ。それでこそ落語家!?なのかどうかは知りません。でも、なんていうか、嘘くさくない感じ。朴訥としたこんな男がいるだろうってスルッと納得させる扇里師匠。
文七をつかむ長兵衛の腕と右手こぶしの力の強さ、言葉だけではなくて、全身で文七を止めている姿が印象的でした。
文七は真面目なんだけど、子供なんだなあって、扇里師匠の文七元結で初めて思いました。去勢を張っているけれど、散りばめられている子供らしい話しぶりや仕草。幼い考え方。対して佐野槌の女将さんのすっと伸びた背筋と首筋。それに合わせ、気持ち浮いたあごのライン。落ち着いた居住まいと、「その時はお久を店に出すよ」というある種の覚悟。「お前が悪いんだ」という言葉も長兵衛を責めるのではなく、現実を突きつける強さ。
それぞれの人物が丁寧に描かれていて、そこから広がっていく物語。好みの問題ですけど、お金を受け取るところの長兵衛と女房をもっとやって欲しかったなー。女房に更にしつこく袖を引っ張ってもらいたかった。あのやりとり好き。でもべっこう問屋の旦那がうまいこと言っちゃったから仕方ないかな。ストーリーテラー扇里師匠はこの日も健在でした。扇里師匠ありがとう。今年最後のシブラク初日からいいもの見ました。
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写真:渋谷らくごスタッフ