渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2017年 12月8日(金)~12日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

イラスト

イラスト

12月9日(土)17:00~19:00 台所おさん 春風亭百栄 入船亭扇里 春風亭昇々

「渋谷らくご」 二つ目 春風亭昇々が普通にトリをとる会

ツイート

今月の見どころを表示

プレビュー

 不定期 火曜放送中の、文化放送「サンキュータツオと渋谷らくご」でも好評の昇々さんとおさん師匠。
 唯一無二の百栄師匠と、語り部 扇里師匠が間に挟まり、「不思議な存在感を発揮する」人たちが勢ぞろいの落語会です。
 特徴のある落語家こそ、ちゃんとした意味での落語家です。出てくるだけで空気変わっちゃいますからね!


▽台所おさん だいどころおさん
31歳で入門、芸歴16年目、2016年3月真打ち昇進。最近まで、お財布とスイカをもっていなかった。小銭はポケットに押し込んでいたため、ポケットがパンパンに膨らんでいた。新幹線に乗った時に食べるアイスクリームが大好きで、冬でも食べて寒がる。

▽春風亭百栄 しゅんぷうてい ももえ
年を取らない妖精のような存在。静岡県静岡市出身、2008年9月真打ち昇進。
不思議な風貌で、危ないネタをかけつづている。落語協会の野球チームでは、名ピッチャーとして活躍する。
アメリカで寿司職人のバイトをしたことがある。猫が大変お好きという意外は日常生活の様子を見せない。

▽入船亭扇里 いりふねてい せんり
19歳で入門、芸歴21年目、2010年真打ち昇進。絵本作家。熱狂的な横浜DeNAベイスターズファン。渋谷らくごのポッドキャストから「扇里ファン」が急増中。最近歯科検診でイチゴ味のフッ素を塗られた。歯が丈夫。ニンニクが食べられない。

▽春風亭昇々 しゅんぷうてい しょうしょう
1984年11月26日、千葉県松戸市出身。2007年に入門、2011年二つ目昇進。フジテレビ「ポンキッキーズ」にレギュラー出演中。落語界を騒がせているタカラトミーがつくった「落語ガチャ」のナビゲーターを務め、昇々さんの特別映像を見ることができる。

レビュー

文:余白 Twitter:@kuroiyohakuネットもリアルも引きこもり脱却を画策中


12月10日(土) 17時~19時「渋谷らくご」

台所おさん(だいどころ おさん)「真田小僧」
春風亭百栄(しゅんぷうてい ももえ)「狸〜桃太郎後日談」
入船亭扇里(いりふねてい せんり)「穴どろ」
春風亭昇々(しゅんぷうてい しょうしょう)「湯屋番」

今年最後のシブラク三日目。 はじめにサンキュータツオさんからの注意事項などのお話からはじまりました。 個人的に紫を纏っていないタツオさんを見るのが初だったので、すごく新鮮な気持ちでした。 諸注意なども笑いに変えて伝えて下さって、さすがです! タツオさんによると、今日は『キワモノ会』という事で、みなさん個性的なご様子。 なんだかワクワクします。

台所おさん「真田小僧」


  • 台所おさん師匠

    台所おさん師匠

見るからに優しそうでキャラクター性に溢れていらっしゃる台所おさん師匠。
3つのお話をしてくださいました!

1つは、ピザをおかずに白ご飯を食べるというチャレンジングな試みをされたお話。
最近話題のラーメン二郎のピザトッピングより個人的には衝撃的!
会場も想像したくない様な組み合わせにどよめき、食した感想に大爆笑でした!

もう1つは、花緑師匠の代わりにゲスト出演を頼まれ、気合を入れて出番待ちをされていたのに、直前に小痴楽さんから嬉しそうに言われた”まさかの一言”で、意気消沈しながら高座にあがれたそう。
小痴楽さん尖ってますねー

そして、花緑師匠に親不幸にならないために師匠より長生きしたいけれど、おさん師匠の方が1歳上で、しかも占い師さん曰く花緑師匠は100歳以上生きられるらしいです。
おさん師匠も長生きしてくれそう!100歳越えしたおさん師匠の高座、楽しみにしています!

お話は「真田小僧」。
ザ江戸っ子的なお父さんvs国民的日曜アニメの弟の様な頭のいい子供。
この子供がお父さんからお小遣いを巻き上げるのが上手すぎて子憎たらしい感じのお話です。
時々いますよね。こういう頭の回転が異常に早いお子様!
そういう子は、きっと将来有望でITベンチャーの社長とかになるんでしょうねー。
ゆるりとした親子の会話からだんだんヒートアップしていき、それに合わせて会場もグググッと引き込まれていきました!
子供をやっている時のおさん師匠が、本当に憎たらし可愛いの最上級な表現をされていて、謎の親心的な感情に包まれました!(親になった事ないのでわかんないですけど)
最後の焼き芋の落ちはまさかの展開でした。

春風亭百栄「狸〜桃太郎後日談」


  • 春風亭百栄師匠

    春風亭百栄師匠

季節感たっぷりの柿色の着物に、銀杏色の羽織で登場された百栄師匠。
とても独特で魅力的な空気感をまとっていらっしゃる方でした。

近況報告は、今日改札を通った時に先に通った方の残高が”7円”でラッキーな気分だったことや、
機種変した時の担当、”ちょっと”という口癖を頻発される中国人シュウさんとのやりとり。
日常に散りばめられた小さな笑いも、百栄師匠目線で切り取られると、会場は大爆笑に早変わりです!

そして、百栄師匠のヘアースタイル誕生のお話も聞けました!
キャラ付けするために床屋さんと相談して、戦略的に編み出された髪型だそう!
当時、ぼっちゃん刈りでブルースリー似だった、おさん師匠にも許可済みの公認ヘアーだそうです!

そして台所という亭号が続いて行って欲しいというお話しをされながら、
いきなり羽織を脱ぎながら強引に噺に入ろうと見せかけて着直した百栄師匠に会場がどよめき、大笑い。
そして、台所つながりでネズミの話をするのかと思いきや、羽織をバサっと脱いで、噺に入っていかれ、会場中最高潮に笑いの渦が巻き起こりました!

そんな中、はじまったのは百栄師匠オリジナルの「狸〜桃太郎後日談」。
狸が助けてくれた人間に恩返しをするお話から始まります。
狸が人間に恩返しとして、借金を返すために、まさかのお金に変身します!
お札になって折りたたまれたり、苦難を乗り越え人間の元に大金を持って舞い戻る狸、そして隣町の噂話へと進みます。
それがなんとあの”桃太郎”の後日談です!
引きこもりになってしまった桃太郎とおごり高ぶってわがまま放題で村人を困らせる犬猿雉トリオ!
だいぶダークビターな展開ですけど、某通信会社のCM話なんかもネタにされ笑いどころ満載でした!
中でも「ケーン」と鳴く雉を演じている百栄師匠がめちゃくちゃ面白くて、会場でも大人気!!
百栄師匠の織りなす独特の世界観めっちゃたまらないです!

入船亭扇里「穴どろ」


  • 入船亭扇里師匠

    入船亭扇里師匠

「やせているのは、月をながめていると何となくお腹いっぱいになるからです。」と公式の自己PRに書かれていた扇里師匠。
まさに月明かりが似合う感じのお方です!

百栄師匠に初めてお会いされた時は、おじさんに見えたのに、最近おばさんに見えてきたそうです。
どうして年をとっておばさんになったのかとご本人に聞いたところ、百栄師匠がそうなったのには理由があって、それを受け入れて今にいたってらっしゃるとか。

師匠のお墓まいりに来週半ばにお参りに行かれるそうで、最近よく思い出されるそう。
扇理師匠がまだかばん時代に「あれ、何だっけ」を連発する師匠とのやりとりに苦戦していた思い出などを話されていました。

そして噺は、その師匠がこの季節によくされていたらしい古典落語の「穴どろ」。
借金にまみれたご主人が、奥さんに豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまえと罵倒され、逆ギレして飛び出したはいいけれど、お金を用意できるあてもなくさまよっていると、日が落ちてしまい気温も下がり、気がつくと妙に静かな屋敷町にたどり着くのですが、そのしーんと綺麗に澄んだ冷たさに包まれた屋敷町の情景が、扇理師匠の技で目の前に広がっているようでドキドキしました。

そして扉が開いたままのお屋敷を見つけ、忍び込んで見ると豪勢な宴会をしていたあとが残っているけれど、誰もいない。
ちょうどお腹が空いていたので、残り物の料理や酒に手を出すのですが、扇理師匠が演じると、本当に美味しそう!
くっとお酒を引っ掛けている仕草や、音を立ててズズッと食べている姿がグルメ番組を見ているかのよう!
さっき遅めの昼ごはんを食べたばかりの私も思わずお腹が空いてしまいました。
そして、小さな子供が出てきたので相手をしていると、思わず穴に落ちてしまい、そして屋敷の人たちに見つかってしまうのですが…
何だか年末にぴったりのお噺でした。受け継がれていくお話はやっぱり素敵ですね。

春風亭昇々「湯屋番」


  • 春風亭昇々さん

    春風亭昇々さん

何だかボリューム満点な昇々さん。
登場された途端、会場中のありとあらゆる隙間が昇々さんで埋め尽くされていくような容積率の高さのある方で、圧倒されました!

今日登場された方々に共通していることは、皆さん引っ込み思案で楽屋がシーンとしているのだそう。
今はもう楽屋に誰もいらっしゃらないとか。
昇々さんは年末なので、落語合戦(紅白ではない)イベントをしたいそうで、色々と構想を話されていました。何だか面白そうで興味津々の会場の皆さん!

昇々さんは最近沖縄に行かれたそうなんですが、仕事で行ったので『おじさん3人と行く!沖縄4日間の旅!』だったそうです。
しかも、学校寄席に呼ばれるタイプじゃないのに、高校での学校寄席だったそうで、大変だったご様子。
牛の乳の話とかネズミを捕まえる話を全身全霊でやったのに、高校生たちはサーッと引いている凪の超アウェイ状態で死にたくなったそうです。
今時の子怖いですねーあったかくないですねー
噺家はか弱くて面白くないと言われると死んじゃうらしいです。
しかも皆さんエゴサーチされているんだとか!
他にも、一緒に行かれた師匠や修学旅行中の友達いない男の子との思い出を話されていて、昇々さんワールドにみんな巻き込まれていきます。

お噺は「湯屋番」。
道楽者の若旦那が親に勘当されてしまい、ある親切なお家へ居候するけれど、1日中ゴロゴロしていることをよく思わない家の人達によって、うまいこと奉公に出るように仕向けられて、お湯屋さんへ奉公に行くが、番台の上で女性との出会いを中二病的な気持ち悪めな妄想を繰り広げるというお話。
奉公とはいえ女湯目当てだったり、お昼ご飯に文句を言って見たり。
そして、想像力豊かな若旦那の妄想が周囲にダダ漏れという鉄板な面白さに、昇々さんのパワフルな表現が加わり、面白さ炸裂で、会場中、大笑いで昇々さんフィーバーでした!

何というか、アメリカの通販番組を日本語吹き替えで見ているとなぜかわからないけれど、ハマってしまって見続けてしまうあの感覚と同じ、何だかわからないけど、めちゃくちゃ魅惑的である意味ミステリアスな昇々さん。楽しすぎました!

はじまる前に、サンキュータツオさんが「今日の演者さんたちは瞬き少なめなので、注意してください」とおっしゃっていたのですが、本当に皆さん瞬きなさらないし、眼力というか目の底の方の力がめちゃくちゃ強くて、個性豊かで最強な感じで、かっこよかったです!
今年の最後に見れたシブラクがこの回で本当に良かったです。
良い年の瀬が過ごせそうなパワーをいただけました!
来年のシブラクも楽しみにしています!

【この日のほかのお客様の感想】 「渋谷らくご」12/9 公演 感想まとめ
写真:渋谷らくごスタッフ