渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2018年 7月13日(金)~17日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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7月13日(金)20:00~22:00 立川笑二 橘家圓太郎 玉川太福* 瀧川鯉八

「渋谷らくご」瀧川鯉八がトリをとる会(CD販売記念)

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プレビュー

◎ニコニコ公式生放送「WOWOWぷらすと」中継あり(http://www.wowow.co.jp/plast/

 もっとも活躍した二つ目に贈られる2017年渋谷らくご大賞 瀧川鯉八さんがトリをとる会。渋谷らくご名演集のCDの販売&サイン会も終演後に行います。
 現代の寓話、落語という表現を用いた映画、あらゆる人のコンプレックスを笑い飛ばしてくれるNEXTラクゴの旗手。
 友だちを誘って観に来てくださいね!
 独自の解釈、演出、的確な表現で古典落語に新たな光をあてる二つ目 笑二さん、渋谷らくごのTHE落語 圓太郎師匠、最高のエンターティナー太福さんと充実のラインナップで、演芸の懐の深さに触れてください。

▽立川笑二 たてかわ しょうじ
20歳で入門、芸歴7年目、2014年6月に二つ目昇進。沖縄出身の落語家。飲み会に参加することが多いが、気付くと寝てしまっている。深夜映画館で映画を観ることが多い。最近観た映画は兄弟子の吉笑さんに紹介された「カメラを止めるな!」。

▽橘家圓太郎 たちばなや えんたろう
19歳で入門、芸歴37年目、1997年3月真打ち昇進。オヤジの小言マシーンぶりは渋谷らくごでも爆笑を生んでいる。食前と食後に身体に悪いと知りながら「源氏パイ」を食べてしまう。しかし最近は「源氏パイ」ではなく「きゅうり」を食べるようにしているらしい。

▽玉川太福 たまがわ だいふく
1979年8月2日、新潟県新潟市出身、2007年3月入門、2012年日本浪曲協会理事に就任。2017年文化庁芸術祭大衆芸能部門の新人賞を受賞。写真を撮られるときは、歯を出して笑いながら両手でVサインをしがち。

▽瀧川鯉八 たきがわ こいはち
24歳で入門、芸歴11年目、2010年二つ目昇進。2017年第三回渋谷らくご大賞「おもしろい二つ目賞」受賞。渋谷らくごオフィシャルCD「瀧川鯉八 渋谷らくご名演集」が販売中。渋谷らくごの受付で販売中。この夏ダイエットに取り組んでいる。麦茶が好き。

レビュー

文:さかうえかおり Twitter:@Caoleen1022 好みの男性のタイプ :殉星のシン

7月13日(金)20時-22時「渋谷らくご」
立川笑二(たてかわ しょうじ)「元犬」
橘家圓太郎(たちばなや えんたろう)「かんしゃく」
玉川太福(たまがわ だいふく)/玉川みね子(たまがわ みねこ)「大浦兼武」
瀧川鯉八(たきがわ こいはち)「おちよさん」「新日本風土記」

「覇者は誰だ」


人生のバイブルってそれぞれにありますよね。私の場合は「北斗の拳」です。あれは人生の全てが詰まっていると言って過言ではないと思ってます。妙にリアルな世界観と絶対あり得ない設定。これをよく噛み砕くと落語に通じませんか?時代劇でよく知ってる世界観だけど、エキセントリックな登場人物やストーリー。ただし、北斗と大きく違うのは落語はあたかも「普通」の皮を被ってること。

ケンシロウ×笑二さん

  • 立川笑二さん

    立川笑二さん

「元犬」
北斗神拳伝承者、ケンシロウ。北斗の拳の登場人物の中でもトップクラスに純粋な人だと思います。やる事はエグいので、実は純粋型サイコパスではとも思っています。純粋さは少年ジャンプの主人公の必須項目。その反面、濃いキャラの脇役に美味しいとこを持っていかれ、埋もれがちです。その証拠に稀勢の里の横綱三揃の化粧マワシはラオウが真ん中。
じゃ、純粋なのにキャラが濃くて埋もれなかったら?そんなケンシロウが見てみたい。それが笑二さんの「元犬」です。天真爛漫な風貌の笑二さん。妙に可愛いシロ。突き抜けた素直さは時として岩をも砕く鋭さがあります。特に犬っぽさが抜けないタダシロウさん。私だって高収入だったら使用人として雇いたい。純粋さはここまで個性になり得るので、脇役に埋もれがちな全国の主人公たちは参考にしてみてはどうだろうか。

ラオウ×圓太郎師匠

  • 橘家圓太郎師匠

    橘家圓太郎師匠

「かんしゃく」
北斗の拳が好きな理由の一つが、キャラ設定のブレに情緒があること。極悪非道の恐怖による支配をしているはずだったラオウもその一人。ストーリーが進めば進むほど良い奴になっていくんですよね。もしかするとラオウが死なずに200巻くらい連載が続けば、強くて優しい人になっているのでは…。なんとなくその像は圓太郎師匠のような気がします。
この「かんしゃく」では、傍若無人とも思える主人の小言でストーリーが進みます。現代を生きる者としては茶くらいてめぇで淹れろと思うのですが、最後に小言を言うことがなくなってしまった怒りは可愛いのなんの。圓太郎師匠ってマクラを聞いていると優しい人なんだろうなと思う一方、見た目がいかついので傍若無人な悪役もピタっときます。そんなところがラオウ感なんだと思うんです。ラオウが199X年の核戦争ではなく大正時代に生きているなら…なんて考えるのも、自由な見方ができる落語の楽しさです。

ジャギ×太福さん

  • 玉川太福さん・玉川みね子師匠

    玉川太福さん・玉川みね子師匠

「大浦兼武」
まず太福さんごめんなさい。まず、ジャギって訳を聞いてください。そもそも北斗の拳がストーリーとして成立するには、ジャギがシンを誑かさないと始まらないのです。ジャギがいなければケンシロウとユリアは幸せに暮らして終わりです。胸に七つの傷なんてありません。アッサリ死んだジャギですが、彼が北斗の世界を変えたと言っても過言ではないんです。浪曲を知らない者としては太福さんの存在って大きくて、一気に浪曲を身近なエンターテイメントにしてくれました。北斗の世界を変えた男・ジャギ。私の中の浪曲を変えた男・太福。俺の名を言ってみろ。
「大浦兼武」は明治の政治家ですが、こういう題材も浪曲の古典なんだとちょっとびっくり。出世物語だし明治って最近のイメージがありつつ150年も前だし、冷静に考えればそりゃ立派な古典だよなぁと。明治は華やかな反面、チャンバラ好きにはちょっと物足りない時代ではあるのですが、明治のイメージすら覆りました。やはりこの男がいないと始まらないのです。俺の名を言ってみろ。

トキ×鯉八さん

  • 瀧川鯉八さん

    瀧川鯉八さん

「おちよさん」「新日本風土記」
トキの拳と言えばラオウと対照の柔の拳。相手の力を受け流す技はラオウですら恐れて直接対決を避けていました。そんなトキのような柔の拳の達人・鯉八さん。
落語ってわりと正面から当たってくるような噺家さんが多いと思うんです。サイドから攻めてきたとしても、こちらの笑いは全力で正面から受け止めてくれるような。だから、落語を観るときは「手合わせを願おう」と思って臨んでいます。もはやガチンコ勝負。そこに来て鯉八さんの落語は、こちらの笑いすらスッと受け流し、そのスキを突いて攻撃してくるまるでトキのような落語で、妙な心地良さは有情拳そのもの。油断したら「いい気持ちだ〜!ちにゃ!」って身体の内側から爆発します。
でも、覚えてますか?トキは刹活孔を突いて剛の拳を手に入れ、ラオウに泣きながら「き…きかぬのだ」と言われてしまうのを。じゃ、トキの剛の拳もやばかったら?それが2席目のサゲなのです。最後の最後にやばい拳ぶっこんできました。ぜひ鯉八さんの剛の拳受けてみて下さい。


【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」7/13 公演 感想まとめ

写真:渋谷らくごスタッフ
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