渋谷らくごプレビュー&レビュー
2018年 7月13日(金)~17日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
ネタ数を増やし、表現力を磨き、ひたすら高座をつとめてついにすべての高座で「個性」を光らせる40代。50代からは、歴史上の演者との闘いにもなっていく。馬石師匠の実力は、寄席や各落語会でも周知のことではありますが、キャリアはまだ五合目にさしかかったあたり。このあともグングン高みに連れていってくれます。ここのところ毎月キャリアハイ、競技レコードをたたき出しているかのような圧倒的な高座の連続ですが、この夏はどうなりましょう。
談吉さん、粋歌さん、わさびさんという、早くも「個性」を身につけ始めている二つ目さんたちの熱演のあと、馬石ワールドをご堪能ください。
▽立川談吉 たてかわ だんきち
26歳で入門、芸歴11年目、2011年6月二つ目昇進。事務作業で家から出られない日は、土井善晴さんのレシピをもとに豚の角煮をつくりテンションをあげる。最近くるぶしまでの靴下を勧められて買う。携帯電話を変えたらLINEが移行できなくなった。
▽三遊亭粋歌 さんゆうてい すいか
2005年8月入門、現在13年目、2009年6月二つ目昇進。28歳で突如会社勤めをやめて、落語家になる。子育てのまっただ中。可愛いネコのツイートをいいね!しているがネコはあまり好きではなく、本当はイヌの方が好き。
▽柳家わさび やなぎや わさび
23歳で入門、芸歴14年目、2008年二つ目昇進。痩せ形で現在の体重は52kg。1ヶ月ほど欧州落語ツアーにいってきた。欧州には絵の具とパレットを持っていき、土地土地で絵を描く。
▽隅田川馬石 すみだがわ ばせき
24歳で入門、芸歴25年目、2007年3月真打昇進。高座を終えて楽屋を出る速度が渋谷らくごの出演者の中で最も早い。暑がりで、楽屋入りすると涼みたがる。毎日ランニングを欠かさず、近場の移動には自転車をつかうことを心がけている。時間がたくさんあるときのマクラも、オチ優先でなくコラム的な味わいで楽しい。
レビュー
7/15(日)20:00-22:00「渋谷らくご」
立川談吉(たてかわ だんきち) 「看板の一」
三遊亭粋歌(さんゆうてい すいか) 「夏の思い出/すぶや」
柳家わさび(やなぎや わさび) 「青菜」
隅田川馬石(すみだがわ ばせき) 「締め込み」
立川談吉-看板の一
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立川談吉さん
マクラでは日本の北と南の砂糖の違いを教えてくれた。なんでも全く同じ砂糖ではないらしい。北の方はてん菜、南の方はサトウキビを原材料としている。てん菜は体を温めサトウキビは逆に冷やすという。てん菜は、談吉さんご出身北海道を中心に栽培されている。毎日のように口にするものでも、知らない事がまだまだあって、新たに知ると誰かに披露したくなる。不思議だなあ。
披露したくなるといえば、この噺の男もそう。
博徒たちにせがまれ、渋々胴元になった隠居。プルプルと震えた手で壺を伏せるがサイコロのピンの目が外へ顔を出している。これじゃあ賭けにならない。やれやれ年はとりたくないものだと博徒たちが呆れていると、隠居は自信満々にさあ賭けろと言う。博徒たちは黙って有り金全てをピンに賭けた。
隠居が言う。「これは看板のピンだ、壺の中には本当のサイコロがある。俺の見立てでは中のサイコロは5が出ているだろう。」
華麗に開けた壺、中には見事にサイコロの5の目。周りは驚き隠居に誓う、もう賭け事はしないと。
こんなかっこいいシチュエーション、人生一度でいいからやってみたい。真似たくなるのも同感だ。セリフの一部始終、そっくりそのまま頂きたい。
まあもっとも、それが上手く披露出来ればの話だが。
三遊亭粋歌-夏の思い出/すぶや
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三遊亭粋歌さん
粋歌さんの演じる子供は「ザ・最近のガキ」という感じ、憎たらしくて最高だった。
オレの発音がいちいち気に障るし、かあちゃんさ~と独特の伸ばし方で母親に話しかけるのも、やけにムカつく。夏休みの宿題に一切手を付けず前半は漫画、後半はオンラインゲームに没頭。それどころかこんな状態のオレが宿題やったと思う?と母親に挑発する始末だ。お前は世の中舐めている小学生代表か。お尻引っ叩くぞ。
おっと、こんな風に言っていいのは学生の頃計画的に宿題を進めた大人だけなので、資格がない私はここら辺で止めておきましょう。後の人どうぞ。
すぶや
レビューをwordで書いていると、すぶやという文字に赤の下線が入って面白い。パソコンも困惑する単語だ。そもそも今時渋谷をすぶやなんて言う若者がこの世にいるのか。
東京の大学志望のアヤちゃんに、地元の国立大学志望のタカシは言う。東京は恐ろしい、すんずくもすぶやも危ない街だと。
訛り過ぎな二人の会話が実に愛らしいが、ほっこりするだけの噺ではない所に粋歌さんのスパイスがピリッと混じっていた。
二人の恋は、この夏ほど熱くならなかったみたいだ。
柳家わさび-青菜
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柳家わさびさん
この母親は思った。もう汗すら出ない。人間の大半は水分で出来ていると何かで見たが、その水分を全部失ってしまったら私には後何が残るのか。
わさびさんが教えてくれた暑い歌は、想像以上に暑かった。その後続けたのも暑い日の噺だった。
一部の人にしか伝わらない言葉は、私もすごく憧れる。例えば業界用語や略語、隠し言葉。
秘密の言葉のようでワクワクするし、根拠はないがちょっと凄い人に見える。ふんふんと分かったふりして後で調べる事も結構あったりする。あと単純に格好いい。やってみたい。
「鞍馬から牛若丸が出でまして名も九郎判官」「義経にしておこう」植木屋は家主と妻の、この不思議な会話に興味関心を持つ。菜のおひたしは食べちゃってもうないという報告だけなのになんか格好いい。まぁ実際は洒落なんだけど。
植木屋は家について早速嫁に話すが、この嫁との温度差がいい。はいはい、と子供を相手にするように話を聞き、興奮が収まらないので真似事に付き合ってあげる。普段の様子伺える微笑ましい瞬間に癒された。
隅田川馬石-締め込み
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隅田川馬石師匠
「思い出しながら聞かなくて良いです。僕が喋りますから。」って4年前のワールドカップの話してくれた。お陰で4年前って何歳だ?あの時何してたっけ?と思い出を振り返ったり懐かしんだりすることなく、馬石師匠の新幹線で電波が途切れ途切れなラジオを聞きながら試合の展開を予想するマクラに集中することが出来た。
いつもよりちょっと早く家に帰ったら、嫁の代わりに居間に大きな風呂敷があった。中を確認すると全部うちの着物だった。もしやあの女、余所で男を作って駆け落ちするつもりだな。この着物は売って金にするに違いない。旦那は憤慨。呑気に湯から帰ってきた嫁は身に覚えのない容疑に困惑。旦那は話をろくに聞かずに叫び、同じくらい熱く煮立っている茶瓶まで投げてきた。誰か止めて、と思った所で風呂敷の持ち主が登場。いくら空き巣だって極悪人ではない。自分のせいで夫婦がこんなことになっていたら止めざるを得ない。仲裁に入って収まったは良いが、今度は自分の収まりが悪い。さっさと退散したいが夫婦は自分に感謝し酒までご馳走する。 早とちりで感情的な旦那、大声を出されてもなだめるようにいつも通り話す嫁。間に二人の馴れ初めを挟み込みながら。夫婦の掛け合いがテンポよく進み、とても夫婦らしくて良かった。
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