渋谷らくごプレビュー&レビュー
2019年 1月11日(金)~15日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
初心者向け:まもなく40歳になろうという文菊師匠、すでに風格はベテランそのもの。こんな若手真打がいるのかよととにかく衝撃を受けてもらいたい。おそらくは爆笑の連続になるかと思いますが、トリはなにが飛び出すかわかりません。
アングル:創作の貴婦人 粋歌さん、元気いっぱいの圓太郎師匠、絶好調男 昇々さん。一筋縄ではいかない個性的な面々。文菊師匠がどんな展開で高座を迎え、どう仕上げるのか。乞うご期待。
▽三遊亭粋歌 さんゆうてい すいか
2005年8月入門、現在13年目、2009年6月二つ目昇進。28歳で突如会社勤めをやめて、落語家になる。子育てのまっただ中。新作落語は喫茶店かファミレスに入ってつくる。NHKラジオ「すっぴん」に出演している。
▽橘家圓太郎 たちばなや えんたろう
19歳で入門、芸歴37年目、1997年3月真打ち昇進。怒りん坊なキャラクターで、オヤジの小言マシーンぶりは渋谷らくごでも爆笑を生んでいる。将来PTAの会長になるのではないかと危惧している。普段は優しく、裏表のない気持ち良い人なのです。
▽春風亭昇々 しゅんぷうてい しょうしょう
1984年11月26日、千葉県松戸市出身。2007年に入門、2011年二つ目昇進。楽屋で仲間を驚かせるためパンツ一枚になることがある。昨年末はインドに行き、インドに流れる時間に身をゆだねていた。最近電車内で吊革につかまらないとふらつくようになった。
▽古今亭文菊 ここんてい ぶんぎく
23歳で入門、芸歴16年目、2012年9月真打ち昇進。私服がおしゃれで、楽屋に入るとまず手を洗う。前座さんからスタッフにまで頭を下げて挨拶をする。まつげが長い。最近はキャリーバッグで楽屋入りする。
レビュー
1月13日(日)14-16「渋谷らくご」
三遊亭粋歌(さんゆうてい すいか) 「銀座なまはげ娘」
橘家圓太郎(たちばなや えんたろう) 「唖の釣り」
春風亭昇々(しゅんぷうてい しょうしょう) 「初天神」
古今亭文菊(ここんてい ぶんぎく) 「二番煎じ」
平成最後の1月を、いかがお過ごしでしょう。何か特別なことをするわけでもなく、私の1月は、初詣や寄席の初席に出かけた後、仕事始まりがあり、いつものように、1月の渋谷らくごが始まりました。
どうして、数年前から、渋谷らくごへ毎月通うようになったのかといえば、拝聴しはじめた落語家昔昔亭A太郎さんがかつて、渋谷らくごにご出演だったのがきっかけだった。 初めての来訪で、「どがちゃが」を読み、演者さんの紹介の丁寧さに驚いた。各回によってはテーマまであり、学生時代に受講していた先生の映画と文学の講義スタイルを思い出して懐かしくなったりもした。
演者さんのお名前にはふりがな付き。自分でも落語家さんの名字(?)が初めの頃は読めなかったので、きっと同じように読めない人を考慮しているのを感じた。2番太鼓の前に、サンキュータツオさんが、前に出て来られて、これからご出演の演者さんはどんな方なのかの説明をされる。時にはトークゲストまでいらっしゃって落語を聴いてみた体験や落語へのイメージをシェアされていた。こんなにいたれり尽くせりな落語会が、おもしろくない訳がなく、1回、2回と伺ううちに、それが毎月となっていった。
三遊亭粋歌さん
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三遊亭粋歌さん
橘家圓太郎師匠
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橘家圓太郎師匠
いつも出囃子の「圓太郎囃子」も特徴がある。売れっ子若手落語家さんの落語を聴きに来て圓太郎師匠のファンになっていく人は、きっと私だけではなくいると思う。今回のまくらの圓太郎師匠が「目標」という一見硬いものを、お茶を飲みたい例えで笑わせて伝えるたくみな話術に惚れ惚れする。圓太郎師匠は「努力」や「目標」というものを噺に入れて感動させることもできれば、ただ滑稽噺で笑わせることもできる。何度か客席で感動して涙あふれる体験をしたり、笑って終わるのを何度か味わうと、それが偶然ではないことを知る。圓太郎師匠の話術や間の取り方で、どこかで聞いた噺のはずなのに感動しているのである。噺が上手い!この噺の上手さに、圓太郎師匠が、陰で見えない努力と稽古の積み重ねをされているのも想像できる。圓太郎師匠にならば傍若無人にふるまわれても、そこがまた破天荒でステキに見える。 「唖の釣り」は殺生禁止のお寺の不忍池へ釣りに行くスリルもある上に、七ベえと与太郎のやりとりがおもしろくて良い噺。圓太郎師匠の江戸弁と与太郎のギャップに抱腹絶倒できて楽しい一席でした。
春風亭昇々さん
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春風亭昇々さん
古今亭文菊師匠
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古今亭文菊師匠
すうと高座に上がられる文菊師匠はお寺の僧のようで、鎌倉時代に戦場を語った琵琶法師のような方は文菊師匠のような語り部だったのではと、ふと思う。 文菊師匠は、落語通の男性からも人気の師匠で、馬石師匠と同様、仕草の美しい方だと思う。観ているだけで、江戸の街の寒さや、暗闇、雑談しながらの「火の用心」の掛け声もこえてきそうで、昼の講演時間なのに真夜中にひっそりと聴いているような心持ちになる。熱燗を付ける仕草も、鍋を食べる仕草のおいしそうなことと言ったら目の前にぐらぐらと煮えた鍋があるよう。
それでいて、文菊師匠の妙に上品な佇まいには、「片付いている部屋」で火の用心の人たちが寒さに震えている姿が思い浮かぶ。文菊師匠がはふはふと食べるしぐさをすると、扇子の先には、熱いお肉とネギがあるように見えて、とてもお腹がすいてしま。文菊師匠は、静かな空間でも絵になる方で、同時に食べ方もリアルで、美しい仕草の「めしテロ」に合っているような時間で、扇子の箸に肉とネギを挟んでいるのを見ながら今夜は鍋にしようと客席で密かに考えた。
【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」1/13 公演 感想まとめ
写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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