渋谷らくごプレビュー&レビュー
2019年 2月8日(金)~12日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
初心者向け:日本で一番顔が怖い三代目、橘家文蔵師匠。けどひとたび高座を見れば、たちどころに優しく可愛らしい一面にキュンとなるにちがいない! そんな文蔵師匠の至言「稽古が仕事、高座は集金」は仕事人ぶりをうかがわせる。若手真打有望株のおさん師匠のキャラクター、上方落語 春蝶師匠の深さを感じさせる明るさ、成長株 二つ目 緑太さんの奮闘など、見どころの多い会です。文蔵師匠が最後にどんな演目でお客さんをもてなすのか、楽しみです。
アングル:唯一の二つ目 緑太さんがトリ前の登場、上方の春蝶師匠、そしてトリの文蔵師匠という実力派に挟まれての一席、ごまかしはききません。どんな落語を聴かせてくれるのか、演目選びからすでに見どころです。
▽台所おさん だいどころ おさん
31歳で入門、芸歴17年目、2016年3月真打ち昇進。落語家になる前に、東京から大阪まで歩いて旅したことがある。毎朝、ケチャップのついたソーセージをおかずにして大量の白米を食べる。米とパンとドトールと公園をこよなく愛する癒し系。
▽桂春蝶 かつら しゅんちょう
19歳で入門、芸歴25年目、2009年8月、父の名「春蝶」を襲名する。猫と暮らしていて、時間がある日は猫と一緒に映画を観る。青い鳥が描いてあるマグカップでコーヒーを飲む。ナポリンタンが好き。インスタグラムのお写真が綺麗。
▽柳家緑太 やなぎや ろくた
25歳で入門、芸歴10年目、2014年11月二つ目昇進。古典落語をラップにしている。Youtubeで公開されていて、おそるべき完成度。最近は缶バッチを自作している。日本語が話せない海外の方とも、なぜか打ち解けることができる。TBSラジオの「エレ片」リスナー。
▽橘家文蔵 たちばなや ぶんぞう
24歳で入門、芸歴33年目、2001年真打昇進。ツイッターで、朝ご飯や酒の肴など、日々の料理をつぶやいている。家にラジオがたくさんある。ずっとつけっぱなし。最近つくった料理は「豚角煮ベースに大根・ちくわぶ・里芋・椎茸・生揚げを煮たもの」。噺も料理も仕事が細かく、それでいてでたとこ勝負を楽しむ。
レビュー
2月10日(日)17:00~19:00 「渋谷らくご」
台所おさん(だいどころ おさん) 「花見小僧」
桂春蝶(かつら しゅんちょう) 「山内一豊と千代」
柳家緑太(やなぎや ろくた) 「雛鍔」
橘家文蔵(たちばなや ぶんぞう) 「文七元結」
「冬から春へ」
今日も寒い。口を開くと寒いとばかり言ってしまうくらい寒い。けれども会場内は暖かで、着ていたコートをもぞもぞと脱ぐ。
席に座って今月のプレビューを読む。文蔵師匠の至言として「稽古が仕事、高座は集金」という言葉が載せられている。深い、深いという言葉を使うと浅くなってしまうけれども、深い。寒くて丸まっていた背中が少しだけシャンとした。
今日はいったいどんな二時間になるのだろうか、とぼんやりしていると軽やかな出囃子が聴こえてきた。
台所おさん「花見小僧」
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台所おさん師匠
まだ寒さは厳しい季節だけれども、「花見小僧」は春を感じさせる物語。娘と手代の徳三郎がお花見に行ったときのことを聞き出そうとして、あの手この手を使ってくる旦那。あのことだなと思いつつも、可愛らしくはぐらかす丁稚の定吉。
厳しい追及をしているはずなのに、どこかあたたかくポカポカした気持ちになる二人のやり取り。この旦那いい人なのだろうなぁと感じさせるやり取りが続いているのを味わううちに、真面目な日常から、心地よく落語を楽しむ気持ちに変化していく。
桂春蝶「山内一豊と千代」
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桂春蝶師匠
いかに短い言葉で女性を口説けるかのまくらから、「山内一豊と千代」へ。
貧乏な一豊と、工夫を重ねて支える妻の千代。ここ一番の場面でスッとお金を工面したり、背中をポンと押す姿。だからこそ、信長から褒美は何がいいかと訊かれた際に簪を所望する場面で、フッとやわらかな気持ちに包まれる。
地の文の語りが多く、本筋ではうつくしき夫婦の物語が進み、それでいて急に馬が話し始めるような横道の笑いも多くて心地よい時間だった。
柳家緑太「雛鍔」
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柳家緑太さん
お後たっぷりですからと「雛鍔」へ。お屋敷での出来事をしみじみと話す父親、そのエピソードを利用しようとする息子。ちゃっかりしている子どもの愛らしさもあれば、勘違いを活かそうとする父親の愛らしさも感じられる。
とても笑いが多い展開ではなく、かといってつまらないわけではない。三番手として上がる難しさのなかで、ほどほどに盛り上がって心地よくトリへと繋がる佳き一席。
橘家文蔵「文七元結」
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橘家文蔵師匠
寒風吹きすさぶ冬の暮。博奕に手を出したどうしようもない職人の男が家に帰ってくると、娘のお久がいなくなっていた。娘だってどこか男の所に遊びにいったのだろうと、下卑た発言をきっかけにして夫婦喧嘩が始まりそうな時に現れた使いの男。どうやらお久は吉原の佐野槌にいるらしい。妻の着ていた女物の着物で佐野槌へと向かう男に、使いの男が自分の着ていた羽織をさりげなく渡す。
私はこの使いの男が着ていた羽織を貸すという描写がとても好きだ。その時、その場で、自分にできる精一杯の優しさというあたたかさを感じるからかもしれない。それは大金を渡すような大きな優しさではないけれど、羽織一枚分の小さな優しさだからこそ伝わってくるものがあるのだと思う。
佐野槌の女将さんからの言葉を受け取りながら、男の心境は少しずつ変化を見せていく。そしてようやく男に憑いている薄汚れた部分が落とされた際に、初めて素直な本当の言葉を話せるようになる。父親から娘に対する不器用な感謝の言葉と、娘からの母親を気遣うように伝えられる言葉。そしてついに五十両の金を手にする男。
文蔵師匠はこの変化の部分をみっちりと描いていて、グググっと集中して一つ一つの言葉を味わった。
真っ暗な夜のなかに煌々と明るい吉原を背にして家路を急ぐ男の前に、橋から今にも身投げをしようとしている男が現れる。劇的なことが起こり続けるなかで、男はいま手にしたばかりの五十両の金を渡してしまう。夜空を見上げながら「お天道様はお見通しか」という言葉が自然と口からこぼれだすように見えて、そこには重たさと晴れやかさが感じられた。
要所要所でグッとくるところもあれば、思わずクスッと笑ってしまうところもあり。気付いたら一時間が経過していた。こんなに一時間って短かっただろうか。とにかく最高だったなぁ、うん、と幸せ噛みしめた帰り道。
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