「渋谷らくご」～神田松之丞卒業公演～

文:とも朕 Twitter：@toyono2010　（シンガポール育ち。落語、漫画、読書、映画が大好き。今月観て面白かった映画は「決算！忠臣蔵」。）

三遊亭遊雀（さんゆうてい　ゆうじゃく）「淀五郎」
神田松之丞（かんだ　まつのじょう）　「中村仲蔵」

神田松之丞さんは、2014年12月より渋谷らくごに5年間ご出演。そして、来年、真打昇進および六代目神田伯山ご襲名とのことで、渋谷らく初の「卒業公演」です。おめでとうございます！
先ずは、開演前に松之丞さんとサンキュータツオさんのトーク。披露公演企画中の裏話や苦労話が炸裂です。色々と大変そうですが、ビッグイベントを控えた松之丞さんはとてもイキイキと楽しそう！披露公演には大物芸人さんなど、ビッグネームのサプライズも期待できるかも？！
そして今日のお噺は、遊雀師匠と、役者や芝居の世界に関するドラマチックな二本立てでした。

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三遊亭遊雀師匠「淀五郎」

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  三遊亭遊雀師匠

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  三遊亭遊雀師匠

松之丞さんがネタ帳を見て「これ！」と直前で無茶ぶりした演目を、20分でさらって完成させた遊雀師匠。噺家さんの記憶力、恐るべし！
「仮名手本忠臣蔵」の塩冶判官の代役に、座頭は若手の澤村淀五郎を抜擢。でも、演技はなかなか上手くいきません。思い余って親方に「どのように判官を務めたら良いか」と訊くも、「そんなことも解らないなら、本当に腹を切れ」とまで言われてしまいます。さて、淀五郎はどの様に芝居を成功させることが出来たでしょうか？
「努力は報われる」という感動的なラストが待っていました。
歌舞伎、落語、講談、浪曲などで同じテーマの演目がありますが、この「淀五郎」も松之丞さんの講談バージョンを聴いたことがあります。遊雀師匠の落語バージョンは、笑いも交えて、淀五郎と親方など他の登場人物の会話により進んで行くのが、重みのある講談に比べ軽快な感じがしました。
フランス映画「最強のふたり」と今月公開の「The Upside」のように、もとは味のあるヨーロッパ映画がハリウッドでリメイクされてより軽快なエンタメ作品になった、ような感じでした。
どちらも素敵！

神田松之丞さん「中村仲蔵」

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  神田松之丞さん

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  神田松之丞さん

さて、遊雀師匠の「淀五郎」から約30年前の、同じく役者のお噺。こちらも「才能」と「努力」がテーマでした。
芝居好きな７歳の仲蔵少年と、先輩役者の会話から始まる松之丞さんの「中村仲蔵」（この少年時代の回想が最後に出てくるのが、またドラマチック！）。才能豊かな、しかし「血の無い」役者・仲蔵は、周囲の激しいやっかみにさらされ、ひどく苦労します。
同僚に嫉妬され、上司に面白くない仕事をあてがわれ、数々のピンチを独自の工夫で乗り越えて成功させる仲蔵。企業版にすると、池井戸潤ぽいストーリー展開にワクワクしました。
物語中に（良い役者を夢中で観ているときは）「自分の唾を飲み込む音もうるさいと思った」という表現が出てきますが、今宵の公演がまさにそう！
絶望的な場面での悲痛な表情、鋭い目力が更にパワーアップした松之丞さんの鬼気迫る演技。身を乗り出して聴いている人も多く、観る方も演じる方も凄い集中力！
「50代60代と、この役者は良くなるよ」と見物人が誉める中村仲蔵に、松之丞さんの姿がダブりました。素敵に歳を重ねて、いつか人間国宝に！
神田松之丞さんとしては卒業、でも神田伯山先生として、再び登場して下さる日を楽しみにしてます！

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「渋谷らくご」12/13 公演 感想まとめ

写真：渋谷らくごスタッフ
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