渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2019年 12月13日(金)~17日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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12月15日(日)14:00~16:00 柳家勧之助 林家きく麿 神田鯉栄** 立川談笑

「渋谷らくご」立川談笑師匠、登場!

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プレビュー

 毎年12月、お忙しいなか「渋谷らくご」に出演いただいている立川談笑師匠。ありがたいことに今年も出演していただくことになりました! 渋谷らくごとしてはお弟子さんの吉笑さん、笑二さんにもお世話になっていますが、優秀な弟子を生み出す師匠には、それ相応の理由があります。ぜひそのあたりも感じ取っていただけたらと思います。
 前にあがるのは、若手真打! 勧之助師匠、きく麿師匠はそれぞれ古典、創作で個性を発揮する人気者。鯉栄先生は講談界からエントリー。12月は講談師にとっては特別な月ですが、いったいどうなりますでしょうか。ご期待ください。

▽柳家勧之助 やなぎや かんのすけ
21歳で入門、現在芸歴17年目、2018年9月真打昇進。先日、子供を産む夢をみた。ツイーッターでは「勧之助インタビュー」の断片を読むことができる。「まくら」をしゃべりすぎてしまう傾向にあるらしい。

▽林家きく麿  はやしや きくまろ
24歳で入門、芸歴23年目。2010年9月真打ち昇進。観光地などにおいてある顔ハメ看板には、必ず顔を入れる。画像合成を駆使して、全部の穴に顔をハメている写真を作った。ウォーキング用の靴を買おうとしている。

▽神田鯉栄 かんだ りえい
平成13年入門、芸歴18年目、2016年5月真打ち昇進。講談師になる前までは、旅行会社の添乗員をやっていた。ちくわの磯辺揚げが好き。糖質ダイエットをしていて、ブログに朝食の写真をアップしていた。この時期は薄手のロングコートを着る。

▽立川談笑 たてかわ だんしょう
27歳で入門。芸歴27年目。2003年真打昇進。早稲田大学法学部を卒業後、司法試験勉強中に落語に出会い落語家になる。司法試験の暗記法を駆使して、入門してすぐに落語50席を戦略的にマスターする。美白修正をした写真をツイッターにアップしている。

レビュー

文:月夜乃うさぎTwitter:@tukiusagisann 猫と抹茶と和菓子が好き♪

柳家勧之助(やなぎや かんのすけ)-権助提灯
林家きく麿(はやしや きくまろ)-半ソボン
神田鯉栄(かんだ りえい)-赤垣源蔵 徳利の別れ
立川談笑(たてかわ だんしょう)-時そば

11月末から12月初めにかけて京都へ行って来た。イベントのあった鞍馬口は、茶道を大成させた千利休の三千家の街だけあって、お茶の名店とカフェ巡りで、抹茶と和菓子をたくさん堪能してきた。東京に戻ると、令和元年もあと、2週間足らずなのに気が付いた。猪年の別れを惜しむように、イノシシが人里を駆け回ったニュースが流れて、慌ただしい猪(イノシシ)年の師走(しわす)を感じながら、令和元年最後も渋谷らくごを訪れた。

柳家勧之助師匠「権助提灯」

  • 柳家勧之助師匠

 開口一番は「しゃべっちゃいなよ」で創作らくごを披露してから、渋谷らくごの高座でもお馴染みになってきた勧之助師匠だ。まくらから面白い。お坊さんの弟子がいるエピソードで、早速客席の注目を引き付ける。落語教室の生徒さんと落語家さんとして取るお弟子さんは大きく異なるというのを前提とした話で・、会場はだんだん笑いに包まれていく。 
 すると、突然、勧之助師匠、何を思ったのか、客席にお子さんがいらっしゃることに触れ、「妾」という露骨なキーワードを口にしてからの「権助提灯」に入られた。ほどほどの「悪ふざけ」が心地よい。お妾さんを堂々と持てた時代といっても、本妻とお妾さんは「けして平気だったわけではない」というのを笑い噺にした名作「権助提灯」で、会場は更に抱腹絶倒する人たちの笑いが起こる。
 勧之助師匠、お見事!綺麗に整ったお顔立ちでありながら、全くイケメンと感じさせない爆笑芸に感激した。

林家きく麿師匠「半ソボン」

  • 林家きく麿師匠

 お次は癒しキャラでありながら爆笑王でもあるきく麿師匠の登場である。笑顔を見せるわけでもなく淡々と話しているのに、営業の旅に出ていたまくらに私は一気に引き込まれる。ドラマチックな 旅先の出来事。芸人きく麿師匠の語る旅の悲哀とおもしろさと人情味あふれる会話は、マドンナこそ現れないが、まるで「男はつらいよ」の寅さんのようだ。落語だけではなく、歌のリクエストも増えているきく麿師匠。私もきく麿師匠の歌うステージが大好きで、歌が聴けるとすごく嬉しい。そんなきく麿師匠は「半ソボン」という、半そで半ズボンで一年中すごしている人たちの掛け合い落語に入る。一年中半そで半ズボンの人たちって昔たまにいたことを、思い出す。きく麿師匠の落語は爆笑落語なのはもちろんだが、癒しの要素も高い。癒しの高い声が、ふんわりしたきく麿師匠の癒しの外見と一致していて、笑いながらもほっこりして癒される落語だ。(ゴチャゴチャ考えなくていいんだよ。ただ聞いていれば)といわれているかのよう。名店でも何でもない場所で「お茶をどうぞ」と出された一杯のおいしい煎茶のような気取らなさに癒される。今回も、ただ笑っているうちに、気持ちが軽くなっていった。

 

神田鯉栄先生「赤垣源蔵 徳利の別れ」

  • 神田鯉栄先生

 日本一男前の講談師とプレビューで紹介されている鯉栄先生。きりっとした袴姿で登場し、ハリ扇をパンと鳴らし挨拶する様子が凛々しくてカッコいい。ハリのあるよく通る声は、明朗活発なお人柄と芸達者さを思わせる。・・・・・・・・と、思いきや、客席にいる小学生の女の子に「女が生きて行くのは大変なのよ」と語りかける。鯉栄先生の案外、女性らしく気さくな会話に、会場から、どっと笑いが起こる。緊張と緩和、カッコよさと女という武器であやつる絶妙な話術。神田松之丞さんの姉弟子でいらっしゃるだけある。前日12月14日が赤穂義士が吉良邸に討ち入りした日だったというのもあり、赤穂浪士のエピソードを交えながら「赤垣源蔵 徳利の別れ」を読まれた。鯉栄先生が読み始めると、卍巴に降る雪の景色が脳裏をよぎる。会いたかった兄の羽織に徳利を傾けてお酒を呑む赤垣源蔵はどんな気持ちだったのか、お家断絶の悔しさも、忠誠心も、武士の活躍した時代を生きていない自分には想像もつかないが、だからこそ、未来まで語り継がれる噺の尊さを味わいたくなるのかも知れない。そして、この噺を、女が生きていく大変さを説ける鯉栄で拝聴出来て良かったと心から思った。


立川談笑師匠「時そば」

  • 立川談笑師匠

 1年に1回だけ、渋谷らくごの高座に上がられる渋谷らくごのサンタクロースのような談笑師匠。
美声の持ち主で、ラジオにご出演のときはうっとりして聞き入ってしまう。談笑師匠は数日前に手術したとは思えないお元気なご様子で高座に上がられた。吉笑さんと笑二さんの師匠だけあって、お蕎麦をすする音に変化を持たせたりと、遊び心のある師匠だ。今回かけられた時そばは、すっかり寒くなった今の季節は味わい深く、蕎麦をすする音で、熱い茹でたてのお蕎麦が食べたくなった。楽しい落語も講談も、美味しいものでも、生きているからこそ味わえる。生きているからお会いできる。今年の年末も談笑師匠はじめ皆さんの高座を聴けることに感謝し、年越し蕎麦を食べて良い年末を過ごそう。
 令和元年もお世話になりました。皆様も良い年をお過ごしくださいませ。  
【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」12/15 公演 感想まとめ

写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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