渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2020年 2月14日(金)~18日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

イラスト

イラスト

2月15日(土)17:00~19:00 柳家小せん 立川寸志 橘家文蔵 瀧川鯉八

「渋谷らくご」瀧川鯉八がトリをとる 実力派勢ぞろい!

ツイート

今月の見どころを表示

プレビュー

この会は、本年真打昇進を控える瀧川鯉八さんを中心に、さまざまな芸風の演者を堪能していただける会となっております。
力まず、聴く人に負担をかけない語り口で、自然と落語の世界に誘う小せん師匠、流れるような語り口でぐいぐい自分の世界にひきこむ寸志さん、ぽつぽつと語りながら観客を集中させて的確なパンチ力あるフレーズを放り込んでくる文蔵師匠。どの方もも逃せないです。
トリの鯉八さんは現代の寓話、落語の可能性を拡げるニュータイプの落語家です。

▽柳家小せん やなぎや こせん
22歳で入門、芸歴22年目、2010年9月真打ち昇進。橘家文蔵師匠と入船亭扇辰師匠と音楽ユニット「三K辰文舎」としても活動中。先日、玉川みね子師匠のお三味線で、浪曲に挑戦した。今月はじめ、ベトナムのフーコック島に行ってきた。

▽立川寸志 たてかわ すんし
44歳で入門、芸歴8年目、2015年二つ目昇進。編集マンをやめて、落語家になった。チラシの構成から、文章まで編集マンの能力を遺憾なく発揮する。鉄道も好き。先日乗ったランライズ出雲では車窓からレールを眺め大興奮した。

▽橘家文蔵 たちばなや ぶんぞう
24歳で入門、芸歴33年目、2001年真打昇進。晴れている日は積極的にお布団を干す。ツイッターで、朝ご飯や酒の肴など、日々の料理をつぶやいている。先日突然歯が痛くなった。最近つくった料理は「セロリの葉とトマトを入れ赤ワインで煮込んだタンシチュー」。

▽瀧川鯉八 たきがわ こいはち
24歳で入門、芸歴13年目、2010年二つ目昇進。2020年5月に真打に昇進することが決定。寒くなってくるとモンベルのウィンドブレーカーを着る。先日玉川みね子師匠と並んでラーメンを食べた。鯉八さんの似顔絵のLINEスタンプが発売中、スタンプは2種類ある。

レビュー

文:とも朕 Twitter:@toyono2010 (シンガポール育ち。落語、漫画、読書、映画が大好き。)

柳家小せん(やなぎや こせん)-新聞記事
立川寸志(たてかわ すんし)-疝気の虫
橘家文蔵(たちばなや ぶんぞう)-ちりとてちん
瀧川鯉八(たきがわ こいはち)-いまじん

「渋谷らくご」瀧川鯉八がトリをとる 実力派勢ぞろい!
今年のアカデミー賞、ご覧になりましたか?アジア勢の快挙!韓国映画「パラサイト 半地下の家族」の受賞に興奮しました。この作品は100%ポンジュノ監督のオリジナル、正に創作の力です。
さて、創作といえばこの方、本日のトリ・瀧川鯉八さん。今年真打昇進を控えるニュータイプの落語家さんです。オリジナルストーリーの独特な展開が、映画好きな私にはたまりません!
そして今日は、自然体の小せん師匠、語りの力に引き込まれる寸志さん、迫力の文蔵師匠。どの方も実力派で楽しみです!

柳家小せん「新聞記事」

  • 柳家小せん師匠

クルーズ船のお仕事から帰って来たばかり、という師匠。横浜に停泊中の「あの船」だったら、今頃渋谷らくごの高座には上がっておられない筈。ご無事で何よりです!
今日のお噺は、上方落語「阿弥陀ヶ池」と同じく、最新ニュースをチェックしていない人にいっぱい食わせる「新聞記事」。小せん師匠の飄々としたキャラが、自分の知らない大事件におののく主人公のトボけた演技にピッタリで、大笑いでした。
ボーッと生きてんじゃねーよ!とチコちゃんに叱られない様に新聞はちゃんと読みましょうね。

立川寸志「疝気の虫」

  • 立川寸志さん

プレビューによると「鉄道好き。先日乗ったランライズ出雲では車窓からレールを眺め大興奮した。」とのこと。私も乗り鉄は大好きです。いつか鉄道の話も聴かせて下さいね!
今日のまくらは、昆虫食ブームについて。栄養たっぷりで人類の食糧難を救うという昆虫食。でも寸志さんはコオロギ混ぜご飯の写真を見て、これを食べるなら死んだ方がマシ、と思ってしまったそうです(私も無理かも)。
そしてお噺にも、虫たちが登場。おしゃべりでお茶目な虫たちの様子がアニメみたいで、なんか「ミニオンズ」を想像してしまいました。唐辛子で退治されるラストでは、可愛い虫たちがちょっと可哀想になってしまいました。虫にまで感情移入できるのは、やはり寸志さんの語りの力のおかげですね!
(そういえば翌日の日曜日、近所の図書館に寸志さんがいらっしゃいました!どうやら学生寄席の審査員をされてたようです。色々な所でご活躍なんですねー。)

橘家文蔵 「ちりとてちん」

  • 橘家文蔵師匠

神田伯山先生に襲名披露のご祝儀を二度送ってしまったという、うっかりさんの師匠。先の小せん師匠のお噺を受けて、ボーッとしてると損する、とぼやいておられました。
今日は、夏に良く登場するお噺「酢豆腐」と同じく、小憎らしい人に腐ったお豆腐を食べさせてしまう「ちりとてちん」。最近は地球温暖化で冬でも食べ物は腐りやすいから、要注意ですね。
なお、このお噺では食べる仕草が沢山出てきます。
さすが、ツイッターでご飯や酒の肴など日々の料理についてつぶやいている師匠。お酒を飲んだり、食べたりする演技が本当に美味しそう!鯛のお刺身とうなぎの蒲焼きが猛烈に食べたくなりました。灘の生一本というお酒も飲んでみたい!
落語を見ているだけでお腹が鳴ってしまう、という経験をしてしまいました。文蔵師匠の表現力、恐るべし!

瀧川鯉八 「いまじん」

  • 瀧川鯉八さん

今年5月に真打ち昇進予定の鯉八さん。伯山先生の様に文蔵師匠から二度ご祝儀がいただけるか期待してる、とのこと。
最近は、豊島区民プールに通って真打ち披露に向け体力作りに励んでいるそう。区民プールは、お年寄りと子供たちに支配された「浅くて狭い」世界。新しい発見が色々あるそうです。
さて、今日のお噺「いまじん」は、妄想の時代劇を繰り広げる下級武士、になる妄想をする労働者たち、のイマジネーションが炸裂する複雑ファンタジー。
想像する意識が何層にも重なるストーリー展開は、攻殻機動隊の押井守監督作品のよう。同監督の昔の作品「うる星やつら2・ビューティフルドリーマー」を思い出してしまいました。鯉八さんは、こんな面白いストーリーをどうやって思いつくのでしょうか?
今年のアカデミー賞でポンジュノ監督が引用したスコセッシの言葉は「最も個人的なことが最も創造的である」でした。鯉八さんも、これからますます日常からヒントを得て(区民プールとか、笑)、どんどん面白いお噺を作って下さると良いですね!
【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」2/15 公演 感想まとめ

写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
写真の無断転載・無断利用を禁じます。