渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2015年 6月12日(金)~16日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

イラスト

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6月14日(日)17:00~19:00 立川こしら、柳家ろべえ、橘家圓太郎、柳家喜多八

「渋谷らくご」いざ、古典の会!

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プレビュー

柳家喜多八師匠は、国宝・柳家小三治師匠の弟子であり、またこの会の二番手にあがる柳家ろべえ(広島県出身38歳)さんの師匠でもあります。60代なかばに差し掛かりましたが、それでもモットーは「清く、けだるく、美しく」。けだるそうに見えて都内全域自転車で移動するなど、健康なのか、あるいは移動で疲れて高座がけだるいのか、はたまた育ちの良さがけだるく見せてしまうのか、でも決してやる気がないというわけではないことは、高座を一度ご覧になればわかるはず。「こういう手口だったのか」と気づくことでしょう。東京の人ならではの恥じらい、みたいなものでしょうか。いきなりズブリと鋭い刃物でえぐるような笑いを仕掛けてきますので、ご注意を。

そんな喜多八師匠の前には、福岡出身の圓太郎師匠。丸さとゴツさ、柔らかさと硬さ、女らしさと男らしさ、常に両面をもった古典保守本流の師匠があがります。

最初の出演するこしら師匠はあの手この手でみなさんのご機嫌をうかがうバラエティ組ですが、それでも、こしら師匠から喜多八師匠まで、古典落語の会になると思われます。こういう会もないと! 楽しみ!

レビュー

文:えりさん Twitter:@eritasu 20代女性 事務 フラメンコが趣味のOL

雨も降らず、涼しくちょうど良い気温の夕方でした。
が、私は原宿駅からユーロスペースまで急いで小走りで来たため、茹でダコのような顔で、汗だくでゼーゼー言ってました。受付のお姉さんを驚かせてしまったかもしれません。

しかしさすが映画館。会場がとても涼しい!ありがたい!すぐに汗が引きました。
逆に、寒がりな方は上着やひざ掛けが必須です。他の寄席よりも空調がしっかり効いてます。(はじめて行かれる方にぜひお伝えしたい!)

今日は「いざ、古典の会!」とのこと。「古典の会」ではなく「いざ、古典の会!」です。勢いがあります!
出演者を見ると、柳家・橘家・柳家、なるほど正統派古典!・・・こしら師匠大丈夫かしら!!?
なんて、失礼ながら勝手に心配してしまうファン心理を煽るように、タツオさんのTwitterには「こしら師匠には空気を読んでもらいます」なんてコメントが!(以前こしら師匠が、他の師匠方と一緒に楽屋に居るのが気まずくて出番までボイラー室に隠れていたというエピソードを思い出しました)

【こしら師匠-子ほめ】

まず「本日はお越しくださいまして誠にありがとうございます!落語界を代表してお礼を申し上げます!」という胡散臭い挨拶から。
こしら師匠は基本的に挨拶が胡散臭い感じがします。
「ありがとうございましたー」なんて、マニュアル通りに棒読みしているコンビニ店員のようです。
この胡散臭さが不思議で気になってしまい、どんどんのめり込んでしまうのです。危険です。
こしら師匠の噺は、落語をあまり知らなくても突飛なストーリーが新鮮で面白いのですが、噺の内容を知っていると思いっきり裏切られます。
よく「古典落語を崩して演じる」と言いますが、師匠の場合は崩すというより、爆破する、という感じでしょうか。とても爽快です。
今回の「子ほめ」も「随分大きなお子さんですねえ!」と子供を褒めているときに(あ、子供とお爺さんを間違えて褒めるところだ)と思っていると、「・・・だろ・・?大きすぎるよな・・・おかしいと思ってたんだ・・・」と神妙な顔で言いだし、自分の子供ではないかもしれないと話し始めます。
主人公は自分の想像と違う重い話になってしまい「・・・話題変えよう!」と言い出すが、結局変わらず。「え、俺どこでフラグ折った!?完全にバッドエンドに向かってるよね!?」と、オタク心をくすぐるネット用語も飛び出します。
それと、なぜかカニを紐で繋いで散歩させる人が登場しました。(衝撃的だったので書きました)この予想を裏切られる感覚が楽しくて「他の師匠の落語もたくさん聴いて正しいストーリーを覚えよう!」と、こしら師匠がきっかけで落語にのめり込んでいく人がいるほどです。(私です。)

【ろべえさん-お菊の皿】

あらやだ、爽やかな男前!少し日に焼けていて健康的!と思ったら、普段から自転車で移動されているそうです。
喜多八師匠との自転車エピソードを、喜多八師匠の仕草を真似しながら話していたのですが、これがすごくツボでした!
「どうすんだよー」と肘でくいくいとつっついたり、気怠げに下を向いて自分の首を触りながら話してる感じとか、小三治師匠の自宅や椿山荘に二人で自転車で行った話とか、ろべえさんは喜多八師匠のことが大好きなんだろうな~なんて思いながらニヤニヤして聴いていました。
まくらの緩めの喋り方から、噺に入ったときのスカッとかっこ良い声のギャップがとても素敵で、グッと引き込まれます。
それにしても若い男前が演じる女幽霊はどうしてこうも美しく色っぽいのでしょう!
お菊さんの怖さはもちろん、色っぽさ、かわいさ、かっこよさまで垣間見れて、お菊さんに惚れ込んでしまう登場人物たちに妙に共感できて笑ってしまいます。ちなみに、ろべえさんのお写真が見たくて画像検索してみたんですが、髪型が違うせいか全然雰囲気が違っていて驚きました。
他の噺を聴けばもっといろんな一面が見れるかしら・・・と、楽しみが一つ増えました。

【圓太郎師匠-祇園会】

圓太郎師匠の「祇園会」は古典の旨みがたっぷり!ずっとわくわくしながら聴いていました!
まず、「カラスみてぇな野郎だ」といわれる「ア゛ー ア゛ー ア゛ー」という笑い方!
嫌味たっぷりなのに不思議と愛嬌もあるのは、圓太郎師匠の素敵なお声のせいでしょうか。威勢良くまくし立てる口喧嘩を聴いているだけで、上方と江戸の言葉の違いの見事さとその雰囲気を堪能できてしまいます。
そしてなんといっても、祭囃子を相手にぶつけるように歌い合う場面のかっこよさ!笑えるのになんだか凄くかっこいい!ジャズのアドリブソロ対決!?ってくらい熱い節回しでした!!圓太郎師匠の熱演に応えるように、会場は拍手喝采。
ただ笑えるだけでなく、古典の芸の奥深さも味わえて「うーん、凄い・・・!」と唸ってしまいます。

【喜多八師匠-船徳】

ろべえさんにまくらで「師匠は高座では気怠い感じを演出しているが、普段は結構元気」といじられたからでしょうか?
いつもより気怠くないように見えてドキッとしました。
白い着物のろべえさんと黒い着物の喜多八師匠が二人で並んでいる様子を想像し、ああ師弟、素晴らしい・・・と勝手に妄想で感動。

それにしても、喜多八師匠にかかると登場人物全員からメロメロにされます!一番強烈なのはお騒がせな若旦那です。
以前船を転覆させて客を川に落っことしていたり、女の子の前でかっこつけたくてハチマキを勢いよく巻こうとしてみたり、漕いでる途中で棹を流してしまったり、船を石垣にぶつけたり。客から文句言われても全然へこたれない。開き直ってるし、むしろちょっと逆ギレしてる!それなのに、なぜだかとても魅力的!!無邪気で、お調子者で、ポジティブで、おもしろい!憎めない、むしろかわいい!
若旦那が船頭になりたいと言い出したとき、他の船頭さんたちが割と素直に賛成していたのは若旦那を普段から慕っているからなんだろうなぁとキュンとしました。最初は文句の多かった客も、途中からは、リズミカルにお互いにお辞儀し合ってしまうくらい揺れる船の上で、どうにか煙草を吸おうと試みていたり。

登場人物たちにキュンキュンして、終始ニヤーっとしながら声を出して笑ってしまいます。
なんて幸せな空間なんでしょう・・・・!堪りません。

【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」6/14 日 公演 感想まとめ