渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2015年 6月12日(金)~16日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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6月16日(火)20:00~22:00 三遊亭歌太郎、玉川太福、瀧川鯉斗、立川生志

「渋谷らくご」立川生志、見参!

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プレビュー

歌太郎さんは、落語家12年目の35歳、東京都出身。
まもなく真打、という声が聞こえてくるキャリアですが、この方の落語の折り目正しさったらない。リズムにのってしゃべっているようにも聞こえ、音楽を聴いているかのようです。公式プロフィールによると、趣味「水泳、野球、宇宙、筆ペン」だって! 筆ペン! それ以外は、ロマンを追い求める男、と捉えたい!

玉川太福さんは、35歳の浪曲師。
にこやかな笑顔、真面目にうなる表情、気分よく歌い上げる顔の向き、見ているだけで人を幸せにするパワーがこの浪曲師さんにはあります。古典も創作も両方演じ、つねにお客さんに「浪曲って、楽しんだよ」と言ってくれているような、それでいて肩に力を入れずリラックスさせてくれる、非常に頼もしい存在です。芸が明るくて楽しい!

鯉斗さんは30歳になったばかりのイケメン落語家!
元、名古屋の暴走族族長。本人も、まわりも、タレント志向なのかもしれませんが、私はこういう人にこそ、落語演じ続けてほしい! 暴走族時代を振り返るマクラ、何度聴いてもおもしろい! さっそくこの方、持ち時間よりものすごく早く終わってしまったり、「3ヶ月はおなじネタをやらない」というルールを破ったり、やりたい放題なのですが、それでも逃しません、出てもらいます。本人が苦しんだぶんだけ、明日が楽しみな存在です。

最後に、生志師匠がいらっしゃるから、安心してヒヤヒヤできるのです。
さあ、生志師匠、ニコニコ生放送で「渋谷らくご」の顔といってもいい存在になっていますが、今回はどんな噺をかけてくださるのか!? これぞ落語、これぞ立川流、これぞ生志師匠、という一席を毎回つとめてくださっております。

レビュー

文:松島やすこ Twitter:@yasco1candy 20代女性、Webディレクター

私が初めてシブラクを見にきたのが、生志師匠がトリで「紺屋高尾」を演じられた12月。それ以来ハマって、つい毎月足を運んでしまうのですが、もう半年が経ったんだなあとひとりで驚いていました。
そんな6月の「渋谷らくご」最終回、今回のトリも生志師匠。これまでに見たシブラクのなかでも、良い意味で「ゆるさ」がある番組だったと思います。というのも、歌太郎さん以外のお3方が演じたのが創作で、かつ太福さんは先月発表された新作のアレンジバージョン、鯉斗さんは「いつ本題に入るんだろう?」と思いつつ武勇伝の数々を聞いていたらいつの間にか終わっていて(お客さんもちょっとどよめいていたのが印象的でした)、生志師匠もいつもよりたっぷり枕をお話しされたあとの「マサコ」。それに普段ご出演されている神田松之丞さんの裏話も交えたトーク。

  • 神田松之丞&サンキュータツオ

    神田松之丞&サンキュータツオ

なので、落語をがっつり聴いた! という感じではなく、単純に面白い空気が流れていて、それをお客さんが吸いにきた…といったような良い意味での「ゆるさ」と「とっつきやすさ」がありました。
でも、もしかしたらこれは何度かシブラクに足を運んでいるから持つ感想なのかな、とも思います。今回ご出演された方のうち、太福さん、鯉斗さん、生志師匠は何度か拝見していて、古典をやられているところも見たことがあるうえで、今回の流れは新鮮味があり面白かった(特に太福さんが演じられた先月の再演は、太福さんファン・シブラクファンには特にたまらない内容だったと思います)。
ですが、もし私が初めて落語を聴く人だったとしたら、歌太郎さんに感動したんだろうな…と思います。枕から、しゃべりのリズムや音がすごく整っていて、「この人落語家さんだ!!!」(当たり前なのですが)とつかみで思わせ、小咄でしっかり引き込みつつ、トップバッターにふさわしい、丁寧な話しぶりに引き込まれました。

【三遊亭歌太郎-磯の鮑】

先述の通り、落語の世界観に引き込むまでの過程がすごく丁寧で、初心者にとっても嬉しい落語家さんでした。
そのなかでやられていた「酒粕」という小咄、実は私も落語を習っていて、一番最初に覚えたもののひとつだったのですが、タツオさんもトークでおっしゃっていた通り、短いのもあり、ネタの単純さもあり、なかなか笑わせるのは難しいもの。私なんかは自分でやってみて、「だめ!小咄とか面白くない!」と諦めてしまったのですが、それで見事に笑わされ、我が身を反省するとともに、これが落語家さんの技術!!と感服。
ちなみに今回やられた「磯の鮑」という噺は、昔ながらの洒落や、吉原ならではのしきたりが多数出てきて、現代と結びつけるのが難しいためか、口演される方は少ないのだそう。そのネタを、しっかり我々に情景を想像させながら演じてくださった歌太郎さん、お見事でした。

【玉川太福/玉川みね子-おめぇ、三ノ輪橋とか、くるのか】

先月ネタおろしをされた、「三ノ輪橋とか、くる?」の侠客バージョン。太福さんの創作浪曲は、力強い節回しと、間に挟まる、ぼそぼそしたリアル芝居とのギャップが魅力的だな、と思っていたのですが、今回のバージョンも、また違ったギャップが満載。
話し口はめちゃめちゃ硬派なのに、場所は喫茶店で、話しているのが「…この水、お前の水より少なくない?」などの細かすぎる内容…以前タツオさんが冗談まじりに「技術の無駄遣い」と評されていたのを伺ったことがありますが、逆に技術がないと笑わせられない、超高等な浪曲だなと感じています。

【瀧川鯉斗-暴走烈伝】

  • 瀧川鯉斗

    瀧川鯉斗

元暴走族総長という異色の経歴を持つ鯉斗さん。逆になんで落語家になったんだろう…というところにむしろ興味がわくのですが、今回のお噺は「暴走烈伝」。ご自身の武勇伝を、Web上には書けないような噺まで(笑)、たっぷりと語ってくださいました。
落語家さんの枕って、「あるある」話に落語家さんならではの視点で突っ込みを入れたりしているものが多くて、それも勿論共感するし面白いのですが、「暴走族あるある」って我々カタギの人間からは全く共感しえない話で、それを皆が想像できるように語る…って、ある意味「江戸あるある」が詰め込まれた落語と同じだな、と思いながら聴いていました(そういえば、生志師匠の「談志あるある」も同じジャンルかもしれません)。

【立川生志-マサコ (昇太作)】

  • 立川生志

    立川生志

生志師匠のマサコ、先月の独演会でも口演されていたのを聴いていたのですが、松之丞さんもアフタートークでおっしゃっていた通り「お前だ!!!」でお客さんが驚くかどうかにすごくかかっている噺。私も先月聴いた時には声を出して驚いてしまい、少し恥ずかしかったので、今回その瞬間に客席から「きゃっ!!」という声が聞こえた瞬間「そうだよね、驚くよね…」と、ちょっと安心してしまいました。シブラクでは古典をメインにやられている生志師匠のマサコ、この流れでなければ聴けなかっただろうな、と思いますし、このシメでシブラクの新しい一面が見られたようにも思います。

【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」6/16 日 公演 感想まとめ