渋谷らくごプレビュー&レビュー
2016年 2月12日(金)~16日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
この回、特記すべきは講談の松之丞さんが普通にトリをとること。トリとは一公演の一番最後に出てきて、観客を満足させて帰すという演芸界では最も重要なポジションです。渋谷らくごは、4組全員がトリといってもいい配分かもしれませんが、それでもトリは大事な位置ですね。渋谷らくごでは、松之丞さんは現在32歳という若さで、これで3度目のトリです。
最初のトリは昨年5月、観客を爆笑と感動の渦に巻き込んだ新作講談「グレーゾーン」。2度目は昨年10月、息を飲むことも忘れさせた古典講談「中村仲蔵」、客席は張りつめた緊張から生み出された感動で涙を流している人が続出。そしてこの回で、3度目のトリです。いま演芸界を席巻している最大瞬間風速が吹き続けている松之丞さんの講談ははたしてどうなるのか、講談がなにかわからない方でも、大丈夫。なにも知らないまま、松之丞さんの次の伝説を体感してみてください。気負わず、普通に。松之丞が普通にトリをとる会です。
松之丞さんへの襷は、今年のお正月に松之丞さんと一緒にベトナムに行った鯉八さんからスタート。鯉八さんは、落語の世界をアップデートし続ける創作らくごの使い手。二番手のわさびさんは、先月、実力派真打にはさまった三番手に出て、爆笑をかっさらった男。落語ならではの表現手法で会場も、中継していたネット上でも爆笑を生み出しました。そして3番手の百栄師匠は、ぜひ一度見て頂きたい不思議なオーラを放っている師匠です。緻密に練り上げられた作品と、客席に張り巡らされるセンサーで常に爆笑を生み出し続けています。松之丞さんへの流れは盤石。松之丞さんは、この流れを攻略するかも見物です。
レビュー
文:つぐはらさとむ 男・20 代 会社員
2 月 12 日(金) 20 時~22 時「渋谷らくご」
瀧川鯉八(たきがわ こいはち)「いまじん」
柳家わさび(やなぎや わさび)「紺屋高尾(こんやたかお)」
春風亭百栄(しゅんぷうてい ももえ)「今どきの作文」
神田松之丞(かんだ まつのじょう)「慶安太平記 ~鐵誠道人(てっせいどうじん)~」
渋谷と全国が、4人の話術と想像力で、ひとつになった夜
想像の世界で、ゆらゆらと戯れる、鯉八さん
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瀧川鯉八さん
「いまじん」は、仲間が 3 人集まって、それぞれが即興で役を演じて楽しむ、 というお話でした。古典落語には、「二階ぞめき」や「湯屋番」など、自分の想 像の世界のいろんな役をひとりで演じる、という話はありますが、想像の世界 のいろんな役をみんなで演じる、という話は、初めて聞いた気がします。
とにかく、仲間が集まってアドリブで演じて遊ぶ、という設定は、とても新鮮 に感じました。見ていて、わくわくしましたが、一方で、その状況を表現でき てしまう鯉八さんってすごいなぁと思いました。「何かを演じている人たち」を 演じ分けるのって、普段の落語に比べると、また違う種類の難しさがあるので はないのかなぁと。
ひとりの妄想ではなく、みんなの妄想だからこそ、それぞれがそれぞれの役に 対するこだわりとか想いがあり、その状況ならではの、奇妙な会話が生まれる、 面白い話だなぁと思いました。
大人たちが戯れている落語。こういう落語を、どんどん見たいなぁと思いました。
弱々しさを武器に、観客を引き込む、わさびさん
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柳家わさびさん
今までの紺屋高尾の印象は、「職人さんと No. 1の花魁との恋が成就する感動ス トーリー」というドラマチックなものでしたが、わさびさんの紺屋高尾は、「う ぶな少年の初恋の物語」っぽくて、主人公が身近に感じられる落語になっていました。
物語の登場人物、ではなく、どこにでもいる少年が、恋をする。だからこそ、この少年を自然に応援したくなるのかなぁと思いました。軽快で、あっさりしていて、大事件のはずなのに、日常を感じる、そんな、紺屋高尾でした。
まくらを話されなかったからかもしれませんが、わさびさんがお客さんに語り かける、というよりは、お客さんからわさびさんに声をかけたくなるような雰 囲気だった気がしました。わさびさんの、ある種の弱々しい雰囲気が、逆に、 お客さんを落語の世界に引き込む強さになっているんだなぁと思いました。
ぬいぐるみのような安心感で、会場を包み込む、百栄さん
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春風亭百栄師匠
くまのぬいぐるみの安心感というか、風貌がくまっぽくも、ぬいぐるみっぽく もないのですが、百栄さんから、くまのぬいぐるみに感じるような温かさを感 じました。立ち見も出るような超満員の会場の雰囲気は、熱気が溢れ、お祭り のような状態なのですが、ひとり、いつも通り、淡々と話されている様子が、 とてもかっこよかったです。いろんな子供が書いた作文を大人が読む、という 設定で、真っ正面から面白くて、くすくす笑いが止まらない落語でした。
非日常な空間にいるはずなのに、百栄さんを見ると、とてもリラックスできる のは、なぜなのか。アットホームな雰囲気ってこのことを言うんだなぁと。で も、それを、ユーロスペースという空間で作り出せるって、なぜなのでしょう。
百栄さんがいれば、宇宙ステーションのなかでも、くつろげそうな気がしました。
圧倒的な迫力で、劇的な空間を生み出す、松之丞さん
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神田松之丞さん
張り扇をパンパン叩き、体を肩から左右に大きく振りながら、緊張感を積み上 げていく。その迫力に、ぎゅー、ぎゅーと、胸が締め付けられるように感じ、 会場の空気が張り詰めていくのが、手に取るようにわかりました。
ざっくりではありますが、かっこよく美しい声、ドスの効いた怖い声、お茶目 で高い声、の三種類の声を使って、劇的に状況を描かれているように感じまし た。今回は、人間の凶悪さ、ズルさ、弱さ、が全面に表現された物語だったの で、とてつもなく恐ろしく感じました。でも、もしも違うタイプのお話、例え ば、サザエさんのような日常が舞台のお話を語られたら、劇的な語り口とのギ ャップで、逆にめちゃくちゃ面白いのかもしれないなぁと思いました。
また、この迫力を残したまま、松之丞さんが落語をやるところを見てみたいな ぁと思いました。「田能久」や「鼠穴」、「らくだ」といった落語を、松之丞さん が演じられたら、ものすごいんじゃないかと妄想して、ひとりでわくわくしま した。
落語家の方が講談をやられるのなら、講談師の方が落語をやるのもありなんじ ゃないのか、という素人の考えですが、いつか見てみたいなぁと思いました。
最後に・・・
今回の会は、超満員札止めの会でした。また、『WOWOW ぷらすと』の中継で、 全国で 22,554 人が視聴した会でもありました。現地で見ていて、落語のお祭り に参加したような気分になりました。
また、ちょっと気になって調べてみたのですが、2 万人って、武道館に入りきら ない人数なのですね。落語のライブ配信ができる時代だからこそ、こんなすご いことが起こるんだなぁと思いました。これから、どんどん落語の楽しみ方が 広がっていく時代なのかもしれないなぁと。
数年後には、バーチャルリアリティー技術を使って、家に落語家さんを呼べる ようになるかもしれません。江戸時代と同じように、落語をお座敷芸として楽 しめる時代になったら、その時、誰が活躍されていて、どんな落語が見られる のだろう、と想像するだけで楽しみになりました。
会場で見る楽しみと、家で見る楽しみが共存する時代って、それだけで面白い なぁと思いました。
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トークゲスト:池田裕子さんと
【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」2/12 公演 感想まとめ