渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2016年 3月11日(金)~15日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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3月15日(火)18:00~19:00 瀧川鯉斗、玉川太福

「ふたりらくご」太福シリーズ!その2 VS鯉斗

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プレビュー

 先月の渋谷らくごで堂々のトリをとり、客席を興奮させ、笑いが止まらなかった浪曲の玉川太福さん。そんな太福さんに18時からの「ふたりらくご」を背負って立っていただく企画「3月の太福シリーズ」。第2戦目のお相手は、既存の落語家の規格からはずれてしまっている男・瀧川鯉斗さんです。

 鯉斗さんは、見るからに風貌が良く、上品で、着物の色合いも素敵。そして顔が落語家のイメージとはかけ離れ続けているくらいカッコいい。落語家になる前は、名古屋で暴走族の総長で、落語家に弟子入りするきっかけは、バイト先の居酒屋に偶然お客として来ていた落語家、瀧川鯉昇師匠の落語に惚れたから。19歳で入門、リアル「タイガー&ドラゴン」とも言うべき、落語家の規格から外れまくっている方です。先輩に落語を教わって「これおもしろいんですか?」と言ったり、「付け焼刃ははげやすい」を「つけまつげははげやすい」と覚えてしまったり、まったく落語を知らない青年のシクジリ列伝も、ときにまくらで飛び出すのが面白いです。自分の言葉で語ろうとする姿勢。噛んだり、構成がとっちらかっちゃったりというのは些末なこと。その堂々とした姿が「渋谷らくご」の萌えキャラたるゆえんです。

 一方、太福さんは、大学までラグビーに打ち込み、ふと気がつくと「なにものになりたいのか」迷い、そして偶然浪曲に出会った若者です。ラグビーで鍛えられた大きな身体から放たれる声には、ご自身の迷いから生まれた懐の深さのようなものが感じられ、心を揺さぶられること間違いなし。ポッドキャストでの「大浦兼武」の配信も大好評です! 日常の些細な心の動きや、人との触れ合いで起こった心の機微もさりげなく浪曲に注入しています。あなたは鯉斗タイプか、太福タイプか。

レビュー

文:瀧美保 (Twitter:@Takky_step 女 事務職 趣味:演劇・美術鑑賞、秩父に行くこと  )

3月15日18時~19時
瀧川鯉斗(たきがわ こいと)「紺屋高尾」
玉川太福(たまがわ だいふく)・玉川みね子(たまがわ みねこ) 「忠治山形屋」

瀧川鯉斗 – 紺屋高尾

  • 瀧川鯉斗さん

    瀧川鯉斗さん

今回鯉斗さんを初めて見させて頂きました。
なんというか、全体的に軽い雰囲気で、イマドキとでもいいましょうか(笑)。
人情噺でほろりとさせるというよりは、日常の中である日の出来事をおかしく聞いた、そんな見せ方が面白いですね。
紺屋高尾という大ネタを、鯉斗さんらしく調理されたのかな、と思いました。
特にここが鯉斗さんならではなのかなと感じたのが、キャラクターの作りです。
与太郎のような主人公・久蔵は、純朴というよりは、うまくしゃべれないけれど、その分こだわりは半端なかったり、
紺屋-染物屋の旦那は現代の中間管理職という雰囲気で、奥さんと久蔵の間で頑張っている。
それからその染物屋の奥さん・おさきさんが、旦那をうまいこと操っている(笑)。
おさきさんはかるーい感じだけれど、意外に大事な押さえるところは押さえているようで、でも押さえきれず。
その押さえきれないところは調子良く旦那に責任転嫁しちゃったり。
やっぱりイマドキの女性といいましょうか。おさきさんのキャラクター好きです。
大ネタを構えて見るというよりは、こんな人たちがどうなっちゃうんだろうという気持ちで見させて頂きました。
後半疲れてきたのか、少しテンポが落ちてしまったかなというところもありましたが、今後の更なる成長に期待したいですね。
いろんな噺を鯉斗さんがやったらどうなるのか、これからが楽しみです。


玉川太福 玉川みね子 – 忠治山形屋

  • 玉川太福さん・玉川みね子師匠

    玉川太福さん・玉川みね子師匠

鯉斗さんに紺屋高尾をたっぷりやられ、時間がないから短く、とみんなを笑わせてから始められた太福さん。
そんなことを言いながらも、話が始まってからはすっかり引き込まれて、それこそあっという間の素敵な時間でした。
役人に追われ、一人旅を続けている国定忠治が、年老いた男が首をくくろうとしている所に出くわします。
その男を自殺から助けたのに、「命だけはー」と命乞いしてくる男とのやりとりの面白さにニヤリ。
実は、男は娘を身売りして手に入れた50両を、追いはぎ(山形屋の子分)に取られてしまっていたのでした。
忠治は男を助けるため、一緒に山形屋を訪れます。
そこから忠治が落ち着いた迫力の中で、山形屋をやり込めていくのですが、その太福さんの独特の低い声と語り口がズンと迫って来て、え、そこまでやっちゃうの!?と思いながらどんどん聞き入ってしまいました。
啖呵をきる忠治の声の渋さ、表情が魅力的で、もうなんとも格好いい。
太福さん自身はお若いはずなのに、長年点々と流浪してきた、年を重ねた忠治の顔に見える瞬間が何度もあって、ドキリとさせられました。
新作もたくさん笑わせてくださるけれど、古典もしっかり面白い。
浪曲をもっとたくさん聴きたいと思わせられてしまう太福さんに、今回も楽しませて頂きました。

【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」3/15 公演 感想まとめ