渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2016年 5月13日(金)~17日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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5月17日(火)18:00~19:00 雷門音助、神田松之丞

「ふたりらくご」松之丞シリーズ! feat. 音助

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プレビュー

 独演会SOLD OUTを連発する若き獅子、神田松之丞を平日の夕方から聴いてみる。そんな生活があってもいい。
 高まる期待のなか、注目の二つ目 雷門音助が空気を作っていく。その格闘ぶりに注目。

 音助さんは渋谷らくご初登場。1987年11月30日生まれのまだ20代。そして2016年2月に二つ目になったばかり。
二つ目というポジションは、落語界の荒波に立ち向かえるともいうべき、一人前になるためのスタートラインになったということ。渋谷らくごにそんな若手の音助さんをお呼びした理由は、同世代感を味わっていただきたいからです。いま学生さんであったり、社会人になりたての方は、音助さんと同じものを見て、同じものを受容して、生きてきた可能性があり、音助さんにおにいさん的感覚が持てると思います。そして音助さんよりも年上の方には、見守るような気持ちで見てもらいたい……、といいたいところですが、この年齢と芸歴にしてすでに音助さん、やばいことになっています。末恐ろしい才能です。
 松之丞さんは音助さんとはおなじ落語会に出演していましたが、このほど卒業、音助さん初出演回には、頼もしい存在にもなってくれるはず。と、思う一方、松之丞さんは後輩思いの方だからこそ、本気でぶつかり容赦なく叩き斬るかもしれません。
松之丞さんは、いま講談というジャンルで戦っている若手講談師。静かに動く車ではなく、大容量のエンジンを積んで加速し続けている男。一度でいいので、松之丞さんを聴いてみてください。講談じゃない、松之丞を見てください!
このふたりの空気感を味わえるのは、今回の「ふたりらくご」だけです。

レビュー

文:桜もち Twitter:@kasiwamoti55
東京在住7年目、小さな「ハコ」で生きた芸を感じる見方が好き。かっこいい(粋)かどうかが最大のチェックポイント。芸はないけど芸人気質。
(前回のレビューもよろしくお願いいたします!4月11日(月)「ふたりらくご」です。)

5月17日火曜日18:00~「ふたりらくご」
雷門 音助(かみなりもん おとすけ)  「宿屋の仇討」
神田 松之丞(かんだ まつのじょう) 「小幡小平次」

「生活の中に、ライブを見に行くことを自然に。」「主観的な落語と講談。」

【まくら】
講談好きです。私が話芸や江戸日本の伝統的なものに興味を持つようになったきっかけは「上野茂都」さんなのですが、上野さんのMCにちょくちょく講談の話が出てくる、その影響で講談に興味を持つようになりました。とは言っても熱心に自分から出かけていくところまではいかず、ほんの数回聞いたことがある程度です。
あのパンパンと叩く道具、張り扇。張り扇の叩き方が大変気になってしまう。張り扇のパンパンの風情が、自分にとってうっとりするかどうか。元気すぎるとそれが耳障りになってしまう。一龍斎貞水先生の講談に連れて行ってもらったことがあるのですが、さすが!素敵な叩き方でした。
松の丞さんの講談は、前に独演会に行ったことがあって、ちょうど私が演芸見に行くことをちょっとお休みしていた頃に頭角を表すようになられてたみたいで、私がまたポツポツ演芸の楽しみに戻ってきたときには、既にかなり話題になっておられました。あんなにもう風前の灯かのようであった講談界(ごめんなさい。)に、捨て身で講談に賭けているような若者。自称講談好きは気になってしまいます。折よくいつもお世話になっている方の企画で松之丞さんの独演会があるとのこと。これは一石二鳥と予約して、早いうちから楽しみに日を待つ。
さて、始まります。気になるのは張り扇。どんな風に叩くのか、間合い、音。張り扇がダメだったらだめなので…。程なく叩かれる張り扇。あぁ、いい音です。
そんな前置きがあったのですが、この度シブラクモニターとなり、ふと松之丞さんのブログでの今月のネタ帳を見る。こんなに話しているんだと驚く。面白そうな演目が並んでいます。全部追いかけるのは無理でも、機会が許してくれるならちょいとこれは…と思ったという、そんないきさつでございます。

【レビュー本編】 「生活の中に、ライブを見に行くという楽しみが自然と思い出されることをぜひ。」

今日は渋谷ユーロスペースにシブラク「ふたりらくご」を見に行く日。前々日くらいから時々思い出してはソワソワ。歌舞伎を観に行くんだ!の期待感が芍薬の立ち姿なら、シブラクのソワソワはもっと道端の花のしあわせなのだけど、道端が劣っているかというとそれは違う。身近で何回も味わえるからこそだんだん親しみが増えたり、安心して一緒にいてくれるような良さがあるのです。

その前の仕事場は墨田区曳舟。終わってすぐ向かえばちょっと余裕のあるちょうどと思ってたところ、渋谷慣れしていないことを忘れてた。5分前ぐらいのぎりぎりに到着。どこの席にしようかな。自分が落ち着いていられるところ。こういうところに来慣れてない頃は、みんなに見られているようで落ち着かなくて(自意識過剰)そそくさと座っていたが、いまやウロウロ、キョロキョロ。自分のおさまりのいいの、大事です。今日は出遅れたことだし最後部中央に決定。程なく始まりの太鼓から出囃子。多分シブラクのは生演奏ではないと思うけど、やはりテンション上がる、ワクワク。

まずは雷門 音助さん登場。

  • 雷門音助さん

    雷門音助さん

なんでもシブラク本日デビュー、音助さんよりご年配者は見守る気持ちでお願いしますとある。任せて任せてと母の心に。(笑)こういう記念日的なところに居合わせられるってすごいよね、ありがたい。後にまた音助さん聞くときに今日は布石となる訳だ。これからの人なのだから変化も大きかろう。あまり変わらず風格や練れ度合いのみが深まったらそれはそれですごかろう。今日だけでなく未来に楽しみをくれているのです。
今回「宿屋の仇討」、正当な落語で聞かせてもらったのは初めて。正当じゃない(笑)のはあった!それはモロ師岡さんのサラリーマン落語。モロさんは俳優であり、ピン芸人でもある方。いろいろ多才な中に「サラリーマン落語」というものがあって、ベースは古典落語なのですが、シチュエーションが現代になっている、お話も現代風にモロさんが変えているのです。落語素人の私には元の噺がすぐ分からないのですが、今回「イハチ!」で分かりました!あれは宿屋仇討だったのかー!こういうリンクがあった時って嬉しくなる。音助さんありがとう!

そして、お次は松之丞!待ってました!(心の中で声掛け。)

  • 神田松之丞さん

    神田松之丞さん

ふたり落語なのでこれで終わりなのが寂しくもあるし、このサラッとした軽さがふたり落語のオシャレなところ。でも本日の松之丞様の演目(講談では何て言うのでしょう?)は、どろーっと重たくて、一席分が1.5席分ぐらいあったかも。音助さんの爽やかな軽さとこの日の講談は対象的だったかもしれません。
私の乏しい経験からの印象による主観性100%の見解ですが、講談には血生臭い場面が結構出てくる。人間の暗い部分になるのかなぁ、今回の読み物でもアッサリ殺人計画は成立する。お塚はそんなに魅力的なの?と思いませんか?すごい悪女。何故2人から言い寄られる?(世の不条理を感じます。)でも恋路に入ってしまったら後にはは引けなくなるのも何となく分かる。案外悪事ってこんな感じで出来上がってるのかもしれないなど、いろんなことが頭の中に。これが講談の怪談なんです。多分落語で番匠皿屋敷とか四谷怪談とかやってもこんなに怖くないんじゃないか。講談って必ずしも「人間ってよいよね。」と思えないで最後を迎えたりする。ツイッターかなぁ、「今日の松之丞さんは爽やかでした。」とのつぶやきを見かけてびっくり。非難じゃないですよ、この感じ方の違いを楽しむのが私は大好きなんです。もしかすると私の中に一歩間違えば親方の左九郎を沼に突き落としてしまうものがあるから、どろーに感じたのかもしれないんですよね。
もう、松之丞さんの顔が三変化。お塚の顔(いかにも悪女、こんな女こわいー。)、左九郎の顔(ほんとはがっしりしたいい男のようだが、お塚にいいように操られて情けない男になっている。)、小平次(気のいい人。お塚の悪ぶりが分かっていない。と見せかけて本当は分かっていたのか?)の顔、全部違うんですよ!()の中は松之丞さんの顔から私が思い浮かべた人物像。
もともとこわい話苦手なので、船べりにかけられた指が…と聞こえてきた時はとことん怖がってしまいました。目もつぶっちゃった、こわいよ…。
お塚はをほんとにを左九郎を愛していたのかな?なぜ小平次と平和に暮らさなかったんだろう。この後、左九郎も殺しちゃうんじゃないかと思えてなりません。

さて、舞台はけました。このまますっと帰るのはちょっと惜しい。前回は「神座」でラーメン食べて。(関西人なので久しぶりで懐かしかった。)また「神座」にしようかなと思ったのだが、たどり着けない。ウロウロしているうちに目の前に昭和な中華料理屋さん。このところ食べたいなぁと思っていたスーラータンメンがあるので入ってみる。なかなかいい感じ。こういうのもライブ見る楽しみに含まれる。渋谷の街が身近になって好き度合いがちょっと増える。メニューいろいろ、次回は盛岡冷麺かなぁ。

【おまけです。】
落語はほぼセリフのみで出し物は進みます。たっぷり人情噺も独演会ではありますが、主には日常を切り取ったようなものが多い印象。講談は状況説明で読み物が進みます。歴史物とか有名な人の話が多いと思っています。
実は落語はレビューがすごく書きにくく、私は落語に嫌われてるのかなぁと思って、大先輩に話してみたところ「分かるよ。」
おそらく落語は日常的で軽いんだと思うんです。(軽いは褒め言葉とのサンキュータツオさんの文読んでね。あれはすばらしい資料ですよ。)そのサーっと爽やかなところが落語の良さ。言葉にしにくい風情をもっと楽しみたいです。

【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」5/17 公演 感想まとめ

写真:山下ヒデヨ Twitter:@komikifoto