渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2016年 6月10日(金)~14日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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6月13日(月)20:00~22:00 桂伸三、柳家わさび、春風亭百栄、神田松之丞

「渋谷らくご」松之丞シリーズ! パワーをもらえる月曜日

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プレビュー

 講談のことは知らなくても、神田松之丞を知ってくれれば、よいのです。そういう会です。
 そこに、ほんわかした空気にしてくれる癒し系とでもいうべき伸三さん、結核をわずらった小説家のようなわさびさんという、骨太な二つ目さんがいる。一見奇妙で、噺を聴いたらちゃんと奇妙な百栄師匠がいる。創作落語で抜群の安定感を誇る百栄師匠のあとに、神田松之丞がどうでるか!?
 テニスというジャンルには錦織圭がいる。野球には大谷がいて、ラジオというジャンルには伊集院光がいる。ジャンル自体に注目を集めさせる人材がいるように、講談には神田松之丞がいる。だから、観にきてほしいです。
 だれひとりつぶしあわないであろうこの番組が、どういうハーモニーを奏でるのか。憂鬱な週明けの月曜日。仕事帰りにぜひいらして気分転換してください! パワーがもらえるはずです。
 
▽桂伸三 かつら しんざ
23歳で入門、芸歴11年目、2010年二つ目昇進。落語芸術協会の二つ目ユニット「成金」のメンバー。
▽柳家わさび やなぎや わさび
23歳で入門、芸歴13年目、2008年二つ目昇進。古典だけでなく新作落語という隠し刀を持つ実力派。エゴサ恐怖症。
▽春風亭百栄 しゅんぷうてい ももえ
芸歴22年目、2008年9月真打昇進。年は取らない妖精のような存在の師匠です。可愛い猫の写真をブログにあげている。
▽神田松之丞 かんだ まつのじょう
24歳で入門、芸歴9年目、2012年5月二つ目昇進。「過去美人評論家」を自称。独演会多数。プロレス好き。よく汗をかく。

レビュー

文:文:桜もち Twitter@kasiwamoti55 

6月13日(月)20時〜 渋谷らくご

こんにちは、桜もちです。
レビューお読みいただいてありがとうございます。
反応をいただいたりして、読んで下さる方がいらっしゃるというのは、こんなにも嬉しいことかと思います。
さて、今回は初めて4席あるところに伺ってみました。ドキドキ。今回もよろしくお願いいたします。
桂 伸三(かつら しんざ)       「竹の水仙」
柳家 わさび(やなぎや わさび)    「茗荷宿」
春風亭 百栄(しゅんぷうてい ももえ) 「怪談話しベタ」
神田 松之丞(かんだ まつのじょう)  「天保水滸伝 三浦屋孫次郎の義侠」

【まくら】 この日は雨の降りも激しい、風も吹いて横なぐり。こういう日に限って駅から遠くの仕事先。おまけに間の悪いことは重なるもので、わざわざこのために休みをあてた、暗証番号を忘れちゃったキャッシュカードの再生もまた次回、住民税納付書は忘れてきたようだし、バスに乗れば反対回りに乗ってしまって遅刻。
えーい、バシッ!となるところを「今日はシブラク行くんだ。」思えば気持ちフワッとゆるんで何てこともなくなります。おかげさま。
さて、会場に着いてみると月曜日の20時にもかかわらずお客様いっぱいです。すごいなぁ…

【レビュー本編】

今回は私が発見しかけの、今までとは違う楽しみ方の視点について、うまく書けたらいいなぁと思います。
まず最初は伸三さんです。先日の「成金」で伸三さんデビューを果たしていますから、ほどなくお聞きする2回目。初めての方はワクワク期待感大の楽しさがありますが、もうすでに知っている方は安心していられる、私は何回も同じことを楽しむのが好きな質なので、今日のように「四人中お一人お初」ぐらいの割合は自分的にはありがたいです。「竹の水仙」、左 甚五郎。これがまたお馴染み。落語ではなくて浪曲ですが。知らないおじさんだけど、何回もお題で出てくるとお馴染みのおじさんになっている。似た感じとして思い出すのは「野狐三次」、身近のヒーローだったんですかね。市井の人々にとっての共通の知っている人、気持ちをスカッとさせてくれたり、正義の味方だったり、憧れだったり。共通認識のもとに聞く話芸。そういう背景があって落語聞いたり歌舞伎見たりだったと思うんです。赤穂浪士なんかどこにでも出てきますよね。機会があったら赤穂浪士は何かで見ておくと演芸を見る楽しみがより豊かになると思います。私は歌舞伎座で昼夜それぞれの公演で見て、とりあえず赤穂浪士大ジェスト版を経験しています。それは単に歌舞伎が観たくて行ったのですが、そのあとの演芸見るのにすごく役立っています。そんなの知らなくたって十分楽しめますが、より楽しいですよ、ということで。

  • 桂伸三さん

    桂伸三さん

そして、わさびさん。お初の人はわさびさんでした。また独特ですね、楽しいです。「今日は漫談みたいになってしまってますね!」(マクラでの言葉)とのことでしたから、いつも以上にそうだったのかな。漫談好きとしては大歓迎です。今日は落語やらなのかな?と思うぐらいのノリの良さ。でもするりと落語へ。茗荷ね、大好きなのでつい美味しそうだな、と。

  • 柳家わさびさん

    柳家わさびさん

ちょっとだけインターバルがあり百栄師匠です。落語聴き始めの頃からのファン歴なので、実際にお聞きしている回数はまだまだなのですが、今日の四方の中では、というか落語家さん方の中では、一番長いお付き合いですね!感覚です。お話のリズムやらゆっくりした間合い、いや説明してしまうといいと思っているところが逃げて行ってしまいそうな、いいですね〜百江師匠。ということを日頃思っているのですが、お座りになって一言発せられた時に、「あぁ、百栄師匠だ〜!この感じ、こんなだよなぁ、やっぱりいいなぁ。」としみじみ。ちょっとお久しぶりだったので思い出すと同時に「あれ、こんな感じだったっけ?」の新鮮感も混じる、でした。
シブラクのおかげで二つ目さん達にたくさん出会い、この日の伸三さん、わさびさんを聞きながら「これまで師匠と言われる人ばかり聞いていたけれど、二つ目さんの魅力が少し分かってきたなぁ、みんなそれぞれの個性があって、そして若々しくこれからの自分に向けて頑張ってる感じがいいなぁ。」と思っていたのです。それがですよ!百栄師匠の雰囲気を感じた途端、「師匠」の余裕みたいなものを感じて「いいなぁ。」と思っている私。(節操なさすぎやんか。)単に百栄師匠の話し方がゆっくりしているからだけではない、「そうか、そういうことなんだぁ。」と思っていると私の感性がピカピカ。「でも、それってこうして芸歴やら個性やらジャンルやらいろいろが混じって出てきてくれてるからだ!寄席だからだ!」ということが、すごくピッカリ!光ったのです。
月並みですが寄席だからですよね。比べて見せてもらえるからこそ感じられるもの、またそれぞれの会では決して出てこないかもしれないもの、それは意図的であったり思わずだったり。お互いの駆け引きもあるだろうし相性とか。そこへその日のお天気、星回り、お客さん達が掛け算になってその日だけのもの。今までこういう場で、とにかくお一人お一人を一生懸命吟味しようという聞き方だったのをちょっと置いておいて、今ピカッと感じたものを軸に聞いてみようと新しいワクワクを胸に。

  • 春風亭百栄師匠

    春風亭百栄師匠

最後、松之丞さん、講談です。今日はなんだかお客さんも演者さんも躍動的というかザワザワしているなぁ…。そのときふと思いまして、「しまった!忘れてたよ!」実は今度何か観る機会には「心を合わせて見たり聞いたりしてみよう。」と思ってたんです。すっかり忘れてた。一つでも残ってるときに思い出してよかった。
きっかけは、小なライブを観に行ったときのこと。小さな会場で演者さんのすぐ横にも椅子が。そこに座って向いている方向も演者さんと同じ、お客さんの方を向いている、ということがあったんです。お客さんの見ている顔が見えてしまう。その時にふと「やってる側にいるってすごいことだな。」と改めて思った。すごいですよね。見ている方は気楽。面白かった、面白くなかったなどなど気楽に言ってりゃいいわけで。私もひたすらその視点で見ていたのですが、「面白くないぞ!」と言われるかもしれない、それでもやる方に立って「私ってこんなんなんだ!」と見せてくれている、それを見ている。その時に「中身が面白い面白くないかの他に、その人の、私ってこんななんだ度合いを感じるつもりになったらどんなだろう?何を感じるのかな?」って思いついたんです。で、その時に一緒に「心を合わせて見てみる」も思いついたんですよね。ここに書いたから、もう忘れないようにして。私にとっての新しい見方。

松之丞さんの話に戻りますね。「天保水滸伝」これも私は先に浪曲で知っていた演目、と言っても全部聞いてはいなくて最初のところとあと一つぐらいかな?かっこいいんですよね。「利根の川風袂に入れて月に棹さす高瀬舟〜♩」講談だとこのセリフはあるのかな?この時代に渡世ものの何に私達は魅力を感じるのでしょうね。清水次郎長も大好きです。虎造のテープの音源を持っているのですが、何回聞いてもいい、石松も大好き。石松の仇討ちに次郎長一家が出張る前のひとくだり、不覚にもぼろっと涙してしまったりすると自分でもびっくりする。この涙は一体?演芸や歌舞伎はこの不意にぼろっとくる涙の出方なんだけど、これは何なんだろう…。皆さんはいかがですか?

松之丞さん、「今日はそんなに面白くない談(講談だとこの字になるのだろうか?)ですが、余韻が残るものにしました。」おっしゃるとおり、帰り道、気が付くと上野茂都さんの「京葉水滸伝」を口ずさみながら渋谷の坂を下っている私。プレイヤー連続再生でずっと唄いながらてくてく。今日初めて知ったのですが天保水滸伝の舞台は銚子なんですね。上野さんのご出身が千葉なのでそれで京葉水滸伝だとばっかり思っていたのですが、ちゃんと天保水滸伝ともかけてあったんだ、さすが。

客席で一緒に舞台を味わっていた我々はそれぞれじわっとしたものを胸に帰路へ。胸にある思いは散らばっていくのでした。

  • 神田松之丞さん

    神田松之丞さん

【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」6/10 公演 感想まとめ

写真:山下ヒデヨ Twitter:@komikifoto