渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2017年 4月14日(金)~18日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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4月15日(土)17:00~19:00 瀧川鯉斗 柳亭市童 橘家圓太郎 桂春蝶

「渋谷らくご」古典:がっぷりよつ! 噛み応えMAX!

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プレビュー

上方落語の俊英、桂春蝶師匠。渋谷らくごで春蝶師匠を知り、ハマる人続出!
親しみやすくてわかりやすいマクラ、人情味と批評精神のバランスがそのまま落語にも連なり気付いたら引き込まれている。まさに軽妙でありながら重厚な「名手」です。
橘家圓太郎師匠は、渋谷らくごの「お父さん」。毎回爆笑の渦を起こす圓太郎師匠の凄腕を体感して、後ろの春蝶師匠との激突にも注目してみてくださいね。
元暴走族の鯉斗さんは今回は古典をちゃんと稽古してきているのか!? 市童さんは二つ目昇進して2年、まだ初々しさが残るなかにも大胆に攻めてくる挑戦精神を見逃さないでほしいです。


▽瀧川鯉斗 たきがわ こいと
21歳で入門、芸歴12年目、2009年4月二つ目昇進。
元・名古屋の暴走族総長。バイト先の居酒屋で鯉昇師匠に衝撃を受けて、入門。インスタグラムをやっている。春蝶師匠のご自宅へ遊びにいかれているとのころ。「暴走族の元総長が、落語に落ちた日」という特集記事がウェブで公開中。

▽柳亭市童 りゅうてい いちどう
18歳で入門、芸歴6年目、2015年5月二つ目昇進 
「痩せたいなぁ」というのが最近の口癖だが、にっこり笑う市童さんにつられてニコニコしてしまう。頬に手をそえて、口を大きく空けるかわいらしい決めポーズをもつ。サインの文字がとても綺麗。指が長くて綺麗。

▽橘家圓太郎 たちばなや えんたろう
19歳で入門、芸歴35年目、1997年3月真打ち昇進。高校までラグビーをやり、現在もトライアスロンをやる熱血男。オヤジの小言マシーンぶりは渋谷らくごでも爆笑を生んでいる。「わたしも圓太郎師匠に叱られたい!」という感想も。私服のトレーナーが毎回可愛い。独演会「圓太郎ばなし」「圓太郎商店」シリーズがライフワーク。

▽桂春蝶 かつら しゅんちょう
19歳で入門、芸歴23年目、2009年8月、父の名「春蝶」を襲名する。
関東と関西を行き来される生活をする。インスタグラムの写真がひとつひとつ美しい。落語心中イベントの「声優落語天狗連」で、「たちきり」を披露される。会場が涙で包まれた。関西テレビでは春蝶師匠のドキュメント番組が放送された。鯉斗さんのご自宅で、くつろがれているお写真がみうけられる。

レビュー

文:月夜乃うさぎTwitter:@tukiusagisann 趣味:茶道、映画鑑賞 特技:東京都内を古地図で歩くこと

4月15日(土)17時―19時   「渋谷らくご」

瀧川 鯉斗 (たきがわ こいと)         「強情灸」
柳亭 市童 (りゅうてい いちどう)       「天災」
橘家 圓太郎(たちばなや えんたろう)      「花見小僧」
桂 春蝶  (かつら しゅんちょう)       「崇徳院」


 花吹雪が舞い散り、葉桜の緑が目立つ暖かな土曜日、今月も渋谷らくごへ行って来ました。新年度も始まりまして、客席では、新しい環境にいる学生さん、社会人さんも、いらっしゃるのでしょうか。はじめていらっしゃったらしき会話や、関西弁が小声で聞こえてまいりました。圓太郎師匠の出囃子では「圓太郎囃子」と声が聞こえてきたので、新しい方から落語通の方までいらっしゃった気がいたします。

瀧川鯉斗さん「強情灸」
  • 瀧川鯉斗さん

    瀧川鯉斗さん

 程よい茶髪、人懐っこそうな綺麗な瞳に、優しげな声の鯉斗さんです。その風貌は少女マンガで全ての女の子に憧れられる王子サマ的な男子そのものです。甥っこさんと行かれた中目黒のパンケーキはどこかしら?いずれにしてもここまでは、女子が好きそうな話題です。ところがまくらが進むにつれ、雲行きが怪しくなって来ました。
落語の縦社会と暴走族の縦社会の話題になり、ここから、一気に、少女マンガから、テレビの「密着24時」というドキュメンタリータッチのまくらに変わりました。
たくさんのバイクが走っている中、「停まりなさい!君達!」という声とパトカーのサイレン音が!それを追うカメラとリポーター達、転んだバイク。特攻服を着た鯉斗さん等、私の脳内には、殺伐とした妄想が広がります。中身はバイクが趣味の少年らしさを残した方なのかも知れません。バイクのお話をしている鯉斗さんはとても楽しそうです。
そんな鯉斗さんですが、以前、素敵な「紺屋高尾」をかけられたことがあります。それは、今迄拝聴したどの「紺屋高尾」よりも心があたたまる「紺屋高尾」で、涙がこぼれました。たどたどしく拙いけれど一途な愛に、感情が揺さぶられたのです。
 今回の鯉斗さんの「強情灸」は、「紺屋高尾」の時とは打って変わって、元気でチャキチャキした江戸っ子風でした。仕草にもキレがあり楽しませて頂きました。
 熱いと評判のミネの灸がどれだけ熱いか、腕に乗せた灸がどれだけ熱いかが、カチカチ山のタヌキや八百屋お七、石川五右衛門の例えで面白おかしく伝わって来て、それでも灸にチャレンジする無鉄砲さが爽快な落語で、大笑いしちゃいました。

柳亭市童さん「天災」
  • 柳亭市童さん

    柳亭市童さん

 二つ目昇進から2年目で、渋谷らくごのご出演もまだ数回目だというフレッシュな市童さん。柳亭市馬師匠のお弟子さんで、若手二つ目ユニット「ラクゴレンジャー」のお一人です。(ラクゴレンジャーのメンバーは、林家けい木さん、柳亭市童さん、柳家吉録さん、柳家やなぎさん、林家なな子さん)少しだけ鯉斗さんの話題に触れたものの、自己アピールをせずにすぐ落語に入られました。落語に入ってから驚きました。自己アピールは少ない公式モニター泣かせの市童さんですが、落語は二つ目昇進から2年目とは思えない程達者でした。名乗らなくても落語で充分自己アピールになりそう。声もよく通り、迫力のある「天災」でした。ラクゴレンジャーのユニットで楽しむのも良し、市童さんお一人を追いかけてみるのも良しの、有望な古典落語の方で、今後どんな風に活躍されるのか楽しみです。

橘家圓太郎師匠「花見小僧」(おせつ・徳三郎・上)
  • 橘家圓太郎師匠

    橘家圓太郎師匠

 「渋谷らくごのお父さん」と言われる圓太郎師匠。ご本人もそれを快く感じていらっしゃるのか、一生懸命練習する浅田真央ちゃんが可愛い、浅田真央ちゃんのお父さんになりたいというまくらでした。トライアスロンが趣味の圓太郎師匠と浅田真央ちゃんなら、お互い一生懸命同士で気が合いそうに思います。「一生懸命という言葉が好き」だとおっしゃる圓太郎師匠の気持ちは、はじめて圓太郎師匠の落語を拝聴した「芝浜」にも感じられました。お財布を拾ったのが夢だと思った魚屋八五郎が、心を入れ替えて一生懸命働く姿に感動し、圓太郎師匠は、気になる落語家さんになったのです。
 今回の演目「花見小僧」は、前編の花見の出来事を小僧が旦那に問い詰められる攻防戦で成り立っていますが、幼い小僧役にも、貫録ある旦那役にもなり切る圓太郎師匠がお見事です。噺の中に出てくる長命寺の桜餅は、現在でも人気の品です。徳川家光公由来の桜餅だったのですね。桜は葉桜になりつつありますが、最後に圓太郎師匠の落語でお花見が出来て嬉しかったです。今後も「渋谷らくごのお父さん」の人生訓も落語も拝聴して行きたいです。

桂春蝶師匠「崇徳院」
  • 桂春蝶師匠

    桂春蝶師匠

 感受性が豊かで色々なことがあるとおっしゃる春蝶師匠。けれど、起こったことをまくらで笑いに変える才能をお持ちで、芸の肥やしへとしていらっしゃるのでしょう。お陰さまでこの日も、春蝶さんのまくらで笑わせて頂きました。演目の「崇徳院」は、上方落語と江戸落語とは場所が違っていて、江戸落語は上野の清水さま、上方落語では高津山へお参りなのですね。息子を心配する父親によって一目惚れした娘を探してもらうというのが、まくらの2世親子と間接的にリンクしているのも笑いの伏線になっていて、「だから2世とかボンボンとか」という箇所で会場が大爆笑でした。春蝶師匠も2世なのもツボです。そして、「崇徳院」という落語の中で別な落語を入れての歌いながらの花嫁探しは、大変だなあと主人公に同情しながらも、また「だから2世とかボンボンとか」という前の叫びを思い出して笑ってしまいました。他の春蝶師匠の上方落語も、もっと拝聴したいです。
【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」4/15 公演 感想まとめ

写真:渋谷らくごスタッフ