渋谷らくごプレビュー&レビュー
2017年 4月14日(金)~18日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
粋だの洒落だのを説明するのは難しい。ならばそれを体現している人を生で聴いてもらうのが一番いいです。
無駄はないけど照れはある。芸はある。
▽古今亭志ん八 ここんてい しんぱち
28歳で入門、芸歴14年目、2006年11月二つ目昇進。渋谷らくごのどがちゃがで、志ん八さんの4コマ掲載中。今年の秋真打ち昇進決定!魚好きで、釣りも好まれる。3月のTOKYO FMにゲスト出演した際には、「船釣り」が初心者にもおすすめだと力説してくださった。 2月22日から、メダカを飼いはじめた。
▽立川左談次 たてかわ さんだじ
17 歳で入門、芸歴50年、1973年真打ち昇進。読書好き。
談志師匠とおなじ病気にかかり、病院に出たり入ったり。その様子がツイッターにアップされており、痛々しいというよりは、ほほえましい。
談志の弟子として、「立川」という亭号ではじめて真打になった人物。まもなく芸歴五十周年。多くの落語家からリスペクトされている、かもしれない酒豪。多くの昭和の名人に触れ、若き日の談志の空気感を知る数少ない人物でもある。
左談次落語は、そのまま昭和から平成へと動いてきた落語の歴史、というほどではないかもしれないが、唯一無二の魅力にあふれている。人は、こういう噺家をさして「粋」という。
レビュー
文:さとーちずる Twitter:@chinnensadak 年代:30代、職業:普通の会社員、趣味:ビュッフェに行く。水泳。吉本新喜劇のすち子シリーズを見る。
4月24日(月)18時
立川左談次-五人廻し
古今亭志ん八-ん廻し
左談次師匠と志ん八さんのふたりらくご。「粋」を体感する会。
落語歴の浅い私にとって、お二人の落語を拝聴するのはこの日が初めてでした。
「粋」…。もし「粋とは何か説明せよ」と問われたら、ちょっと閉口してしまう。「粋だねぇ」なんてセリフを生まれてこの方、実感を伴って口にした記憶があまりない。私はそもそも粋を知らないのかもしれないし、知っているけど、それが粋とは意識していないのかもしれない。
そんなことを考えながら、小雨の降る夕方の渋谷を傘をささずに歩いていました。そして「えい!小難しいことは考えず、それを体感しに行ってみよう!」と開き直り、ユーロライブに飛び込みました。
この日は開演前にサンキュータツオさんが物販の宣伝のために壇上でお話をされ、最後に、今日は急遽順番が入れ替わり志ん八さんがトリを務めます、とおっしゃいました。9月に真打ちに昇進される志ん八さんのお祝いだ、と左談志師匠からのご提案とのこと。「お、早速これが、粋を体感するってやつの始まりですか?」とニヤニヤしながら開演を迎えました。
まず、トリを志ん八さんと交替した件について、まくらにてこう説明されました。
ふたりらくごは終演が19時。天気予報だと19時前頃から雨足が強くなるということだから、自分が先に上がることにした。
そんな憎まれ口にも左談次師匠から志ん八さんへの愛情を感じました。
左談次師匠が登場する前、前座さんがお茶を運んでいらしたのを見て、以前YouTubeで拝見した談志師匠を思い出しました。左談次師匠は結局お茶には口をつけませんでしたが、後から登場された志ん八さんによると、どうやって飲めばいいか分からなかったとのことでした(笑)。
演目は「五人廻し」。場所は吉原の遊廓。一人の花魁が一晩に複数の客をとり、順番に部屋を廻ることを「廻し」という。人気者の喜瀬川花魁。今夜は4人もの客が待ちぼうけ。イライラ、イライラ…。そんな客から文句を言われる役目の喜助。客は4人それぞれ個性豊かな変り者。共通して口にする言葉は花魁が来ないなら「玉(ぎょく)返せ」。喜助が4人の部屋で散々な思いをし、やっと喜瀬川花魁を見つけたのは田舎者の大尽の部屋。大尽曰く、喜瀬川が自分のそばを離れたがらない。玉代を返せという客には自分が1円ずつ払ってやろうと。大尽が喜助に4円を渡してやると、喜瀬川ももう1円ねだる。そして、大尽から今もらったばかりの1円を突き返して「この1円あげるから、あんたも帰って」というのが下げ。
基本、もらった仕事は断らないようにしているという志ん八さん。ある日ファンと名乗る女性からメールをもらい、その女性の友人の結婚式の二次会で落語を披露することに…と、この続きは一般人女性の具体的なエピソードになるので自粛します。が、その二次会ではかなり珍しいものを高座の代用として落語を披露されたそうです。さて、その珍しいものとは何でしょ~か?なかなか思いもよらないものです。正解は…皆さんがいつかどこかで運良くこのまくらに巡り合えた時のお楽しみということで(笑)。どうしても気になるという方がいれば、Twitterでご連絡ください(笑)。
演目は「ん廻し」。若い男衆の一人が、みんなで集まって酒を飲もうと思いつくが、揃いも揃って金がない。仕方がないので、めいめい酒や肴を調達してくることにする。集まった若い男衆は粗忽者ばかり。よくもまあ、こんなにおバカばっかり集まったものだ。そんな中ヒヤヒヤしたのは、いかにも頭の弱そうな口調の与太郎が道端で拾ってきた味噌。道端に落ちていた味噌?!それってもしかして…。これは本当に味噌なのか。それを恐るおそる確認する場面は何とも言えない気落ちに。いや~、結果味噌であって良かった(笑)。これがちゃんと味噌であったから、不快にならずに済む。五人廻し同様、キャラクターの濃い粗忽者達が目白押しの滑稽、愉快が詰まった噺。大好きになりました。
この日のふたりらくごを通して「粋」というものを自分が実感できたかどうかは正直分かりません。
しかしながら、左談志師匠からは、半世紀もの間落語と共に生き、身に染み付いた芸とはこういうものなのか、ということを見せていただきました。左談志師匠の存在そのものがお客さんを幸せにする。本当に嬉しそうに大声で笑うお客さんと左談志師匠の絆を感じました。
志ん八さんからはテンポの良さ、絶妙な間、いわゆる天丼(つまり、同じ笑いを繰り返すことでより面白味が増す)、押韻など職人技を感じました。落語、笑いをよく研究し、実践し、体得されてきた方なのだろうなと勝手に想像しました。
そして、左談次師匠の「五人廻し」からの志ん八さんの「ん廻し」。
終演後に演目を文字で見て、初めに「五人廻し」を選ばれた左談次師匠と「ん廻し」でそれに続いた志ん八さんのセンスの高さを感じました。
あら?これって、和風に言うと「粋だねぇ」ってことではないでしょうか。
私の中にもちゃんと「粋」という概念が存在していたようです。めでたし、めでたし、ということで筆を置くことにします。
【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」4/17 公演 感想まとめ
写真:渋谷らくごスタッフ
4月24日(月)18時
立川左談次-五人廻し
古今亭志ん八-ん廻し
左談次師匠と志ん八さんのふたりらくご。「粋」を体感する会。
落語歴の浅い私にとって、お二人の落語を拝聴するのはこの日が初めてでした。
「粋」…。もし「粋とは何か説明せよ」と問われたら、ちょっと閉口してしまう。「粋だねぇ」なんてセリフを生まれてこの方、実感を伴って口にした記憶があまりない。私はそもそも粋を知らないのかもしれないし、知っているけど、それが粋とは意識していないのかもしれない。
そんなことを考えながら、小雨の降る夕方の渋谷を傘をささずに歩いていました。そして「えい!小難しいことは考えず、それを体感しに行ってみよう!」と開き直り、ユーロライブに飛び込みました。
この日は開演前にサンキュータツオさんが物販の宣伝のために壇上でお話をされ、最後に、今日は急遽順番が入れ替わり志ん八さんがトリを務めます、とおっしゃいました。9月に真打ちに昇進される志ん八さんのお祝いだ、と左談志師匠からのご提案とのこと。「お、早速これが、粋を体感するってやつの始まりですか?」とニヤニヤしながら開演を迎えました。
立川左談次師匠
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立川左談次師匠
まず、トリを志ん八さんと交替した件について、まくらにてこう説明されました。
ふたりらくごは終演が19時。天気予報だと19時前頃から雨足が強くなるということだから、自分が先に上がることにした。
そんな憎まれ口にも左談次師匠から志ん八さんへの愛情を感じました。
左談次師匠が登場する前、前座さんがお茶を運んでいらしたのを見て、以前YouTubeで拝見した談志師匠を思い出しました。左談次師匠は結局お茶には口をつけませんでしたが、後から登場された志ん八さんによると、どうやって飲めばいいか分からなかったとのことでした(笑)。
演目は「五人廻し」。場所は吉原の遊廓。一人の花魁が一晩に複数の客をとり、順番に部屋を廻ることを「廻し」という。人気者の喜瀬川花魁。今夜は4人もの客が待ちぼうけ。イライラ、イライラ…。そんな客から文句を言われる役目の喜助。客は4人それぞれ個性豊かな変り者。共通して口にする言葉は花魁が来ないなら「玉(ぎょく)返せ」。喜助が4人の部屋で散々な思いをし、やっと喜瀬川花魁を見つけたのは田舎者の大尽の部屋。大尽曰く、喜瀬川が自分のそばを離れたがらない。玉代を返せという客には自分が1円ずつ払ってやろうと。大尽が喜助に4円を渡してやると、喜瀬川ももう1円ねだる。そして、大尽から今もらったばかりの1円を突き返して「この1円あげるから、あんたも帰って」というのが下げ。
古今亭志ん八さん
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古今亭志ん八さん
基本、もらった仕事は断らないようにしているという志ん八さん。ある日ファンと名乗る女性からメールをもらい、その女性の友人の結婚式の二次会で落語を披露することに…と、この続きは一般人女性の具体的なエピソードになるので自粛します。が、その二次会ではかなり珍しいものを高座の代用として落語を披露されたそうです。さて、その珍しいものとは何でしょ~か?なかなか思いもよらないものです。正解は…皆さんがいつかどこかで運良くこのまくらに巡り合えた時のお楽しみということで(笑)。どうしても気になるという方がいれば、Twitterでご連絡ください(笑)。
演目は「ん廻し」。若い男衆の一人が、みんなで集まって酒を飲もうと思いつくが、揃いも揃って金がない。仕方がないので、めいめい酒や肴を調達してくることにする。集まった若い男衆は粗忽者ばかり。よくもまあ、こんなにおバカばっかり集まったものだ。そんな中ヒヤヒヤしたのは、いかにも頭の弱そうな口調の与太郎が道端で拾ってきた味噌。道端に落ちていた味噌?!それってもしかして…。これは本当に味噌なのか。それを恐るおそる確認する場面は何とも言えない気落ちに。いや~、結果味噌であって良かった(笑)。これがちゃんと味噌であったから、不快にならずに済む。五人廻し同様、キャラクターの濃い粗忽者達が目白押しの滑稽、愉快が詰まった噺。大好きになりました。
この日のふたりらくごを通して「粋」というものを自分が実感できたかどうかは正直分かりません。
しかしながら、左談志師匠からは、半世紀もの間落語と共に生き、身に染み付いた芸とはこういうものなのか、ということを見せていただきました。左談志師匠の存在そのものがお客さんを幸せにする。本当に嬉しそうに大声で笑うお客さんと左談志師匠の絆を感じました。
志ん八さんからはテンポの良さ、絶妙な間、いわゆる天丼(つまり、同じ笑いを繰り返すことでより面白味が増す)、押韻など職人技を感じました。落語、笑いをよく研究し、実践し、体得されてきた方なのだろうなと勝手に想像しました。
そして、左談次師匠の「五人廻し」からの志ん八さんの「ん廻し」。
終演後に演目を文字で見て、初めに「五人廻し」を選ばれた左談次師匠と「ん廻し」でそれに続いた志ん八さんのセンスの高さを感じました。
あら?これって、和風に言うと「粋だねぇ」ってことではないでしょうか。
私の中にもちゃんと「粋」という概念が存在していたようです。めでたし、めでたし、ということで筆を置くことにします。
【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」4/17 公演 感想まとめ
写真:渋谷らくごスタッフ