渋谷らくごプレビュー&レビュー
2017年 4月14日(金)~18日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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4月18日(火)20:00~22:00 立川こしら 桂三四郎 玉川太福* 春風亭昇々 林家彦いち
新作:林家彦いちプレゼンツ 創作らくごネタおろし「しゃべっちゃいなよ」
プレビュー
創作らくごの鬼軍曹・林家彦いち師匠が声をかけ、若手が世界初公開の「創作らくご」を披露する、創作らくごネタおろし会「しゃべっちゃいなよ」。
昨年12月の大賞を決める会に登場した桂三四郎さん、春風亭昇々さんをはじめ、一昨年の創作大賞 玉川太福さん、真打での参戦 立川こしら師匠と、史上最高レベルの定例会となります。
やるほうも聴く方も、はじめてだから、脳が痺れる、疲れる。そのぶん、感動も大きいです。
歴史的な演目が生まれるかもしれません。立ち会ってください。
▽立川こしら たてかわ こしら
21歳で入門、芸歴20年目、2012年12月真打昇進。
日本のみならず世界中で落語会を開いている。ドニー・ブリスベン・メルボルンで公演を行う「立川こしら豪州ツアー2017」からの凱旋帰国を果たす。オーストラリアでの生活の様子がツイッターにアップされている。そして4月はヒューストンで独演会が開催される。
▽桂三四郎 かつら さんしろう
22歳で入門、現在入門13年目
ツイッターで苦心しながら創作らくごを書いている様子が日々アップされている。東大から早稲田までで落語の講義をおこなっている。手相では。フェロモン線がすごいらしい。サウナで身体の調子をリセットされる。
▽玉川太福 たまがわ だいふく
1979年8月2日、新潟県新潟市出身、2007年3月入門、2012年日本浪曲協会理事に就任。
「わかりやすい浪曲」を目指して日々奮闘中。大学までラグビーを続けていた熱血漢。2015年「渋谷らくご創作らくご大賞」を受賞している。DVDを発売中。楽屋でも常に師匠方にさりげなく気をつかっている。背が高い。銭湯好き。
▽春風亭昇々 しゅんぷうてい しょうしょう
1984年11月26日、千葉県松戸市出身。2007年に入門、2011年二つ目昇進。2016年「渋谷らくご大賞」受賞。
Youtubeでアバンギャルド昇々として動画を配信中。オリジナル楽曲を歌ったり、「落語マン」というキャラクターを追ったドキュメント風の動画など、公開中。アバンギャルド昇々第二弾「そばロック」を発表した。しゃべる前の印象は「イケメン」。
▽林家彦いち はやしや ひこいち
1969年7月3日、鹿児島県日置郡出身、1989年12月入門、2002年3月真打昇進。
創作らくごの鬼。キャンプや登山を趣味とするアウトドア派な一面を持つ。BS番組「釣りビジョン」では、長崎で「船釣り」をされるドキュメンタリーが放送される。集中する朝は、土鍋でご飯を炊く。創作から生まれた絵本「ながしまのまんげつ」(絵 加藤休ミ 小学館)が発売中!
レビュー
「渋谷らくご」2017年4月公演
▼4月18日 20:00~22:00
林家彦いちプレゼンツ 創作らくごネタおろし会「しゃべっちゃいなよ」
立川こしら-桃太郎宗介
桂三四郎-サービス料
玉川太福/玉川みね子-地べたの二人~おかずの初日~
春風亭昇々-誰にでも青春3
林家彦いち-チャレンジエフェクト
前売は完売。当日も売り切れで超満員札止め。こしらさんが高座で言っていたように、面白いか面白くないか、一か八かの創作ネタおろしの会にこれだけの人が集まるなんて、ホントに異例のこと。お客さんの感想「まとめ」を見ると、新歓の一環で来ていたり、落語初心者の友だちを連れてきたりと、みなさんチャレンジングですね。創作落語の風は確実に吹いているような気がします。今回は立川流、上方落語協会、浪曲協会、落語芸術協会、落語協会の5派が揃い踏み。バラエティ豊かな番組となりました。
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立川こしら師匠
今や活動を海外に広げ、ゲームやアニメの特技を活かした「ポケモンGO」つながりで、オーストラリアやバルセロナでも落語会を催しているこしらさん。ポケモンマスターとしての海外でもオタクの心を奪う活躍ぶりをしゃべったマクラは爆笑でした。
トップバッターの今回は子供(16歳!)に聞かせるための「昔話」を教えて欲しいという男に対して、兄貴の男が「桃太郎」を教えてあげるというストーリー。導入部は古典の「ちはやふる」であり、中身は昔話の「桃太郎」の超改作です。ですがそこはこしらさん。ただの桃太郎では終わりません。桃太郎が軍事マニアで「高性能ナパーム弾」で鬼ヶ島を焼き尽くそうとします。桃太郎、犬、猿、キジの「桃太郎軍」と、鬼軍団たちとの戦いはハリウッドの戦争アクション。しまいには、お爺さんもお婆さんも参戦してもはちゃめちゃになります。自由に突っ走って突然エンディングを迎えるという嵐のような一席でした。
古典落語をやれば創作落語に近い超改作になる「こしら落語」が、創作になると意外にも古典落語に寄っていくのが興味深かったです。
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桂三四郎さん
三四郎さんの創作落語の面白さは、昨年4月の「しゃべっちゃいなよ」と、「創作大賞」の決勝戦でやった「YとN」でも実証済み。今回もどんな落語が聞けるか期待でいっぱいでした。
「サービス料」のタイトル通り、ホテルのレストランのサービス料をめぐる、お客さんと店員さんの静かなバトルを描いた落語。クレーマーのお客さんVSお店という図式ながら、ねちねちとしたマダム口調で嫌みたらしく迫ってくるお客さんの言い分にも理解ができる部分があったり、クレームを受け付けるお店の側にもダメな人が出てきたりで、単純な「悪と善」の対立に留めていないところが三四郎さんのすごいところ。
先の読めない戦いがしばらく続いたと思ったら終盤は、店員さんの繰り出す攻撃(ギャグ)の連発でたたみかけて見事な着地。予想の先を行く展開で三四郎さんが運んでいく物語に乗せられていく快感がありました。雑誌のインタビューで「ベートーベンを聴きながらネタを創っている」と答えているように、三四郎さんの落語はどの作品もクラシック音楽のような起伏があるのですが、今回の作品も静かに始まって最後は怒濤のごとく攻めてくるオーケストラのようなダイナミズムを感じました。
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玉川太福さん・玉川みね子師匠
「地べたの二人」シリーズは、工場街にある「日の出電気」で工員として働く金井くん(30代)と齋藤さん(50代)の2人の些細な日常を描く創作浪曲です。太福さんによると、シリーズは「10年」「おかず交換」「湯船の二人」「配線ほどき」「道案内」まで5作あるそうですが今回は6作目。2作目の「おかず交換」でチキン南蛮(タルタルソース掛け)とシャケの切り身を交換した2人が、今回はなんと「おかず交換せず!!」。太福さんがそう言ったとたん、会場内がざわつきました。
太福さんがツイッターでも書いているとおり「地べたの二人」シリーズは日常を描くのが基本で、何も起こりません。今回も先輩の齋藤さんが、後輩の金井くんの持参した手作り弁当に興味を抱くだけのものです。
齋藤さんはイオンで買ったばかりの3段重ねのお弁当箱(正式名称はフードコンテナらしい)に熱々の味噌汁入り。金井くんは「お母さん」の手作り弁当。それぞれがお弁当の「デビュー戦」で、ドラフトルーキーのピッチャー同士の投げ合いのような緊張感があります。「お母さんが作った」金井くんの弁当に興味津々の齋藤さんによる、探り探りの攻めが続きますが、ひたすらガードに徹する金井くんと齋藤さんの自重によって、最後まで2人の間の結界が破れることはありませんでした。シリーズが進むにつれて、ちょっかいを出す齋藤さんと、それをうっとうしくも思いながらていねいに対応する金井くんのコントラストがくっきりしてきて、その間やニュアンスだけで笑ってしまいます。
浪曲独自の節(メロディ)の部分も、キュウリのぬか漬けをただ噛むだけの「ポリポリポリ」を延々うなったり、金井くんの心情を「(齋藤さんの)味噌汁冷めろ~」と訴えたりと、抜群のアクセントになっていて、浪曲ってホントに楽しいものなのだなあ、とひたすら高座の大福さんに身を預けて聞いていました。
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春風亭昇々さん
「誰にでも青春」はパート1が2015年10月、パート2は昨年4月の「しゃべっちゃいなよ」で披露されました。パート3の今回は、主人公たちの留年歴がさらに1年増えて、10年生の高校3年生になっています。不良のタロウくんと、幼なじみのタロウくんに恋するナナコさん、ナナコさんに思いを寄せるキザでお金持ちのシラトリくんの3人も健在。今回はバレンタインデーへのお返しを巡る三角関係が繰り広げられました。シラトリ(白鳥)さんの名前を巡って鳥でぼける「鳥づくし」のギャグなど、シリーズものならではの面白さもありますね。 4月から昇々さんが出演する「ポンキッキーズ」も見たのですが、どんなところでも本気で遊んではじけてみせる昇々さんのらしさが発揮されていました。シブラクの高座も昇々さんがより本気で遊べる場所のひとつなのかもしれません。30歳を過ぎても高座で本気で遊んでいる昇々さんが、いい年になった大人が高校生活を満喫しているネタを演じるのだから、面白くならないはずがない。頭からっぽな高校生たちの物語を見て、自分自身も日常生活の雑事を忘れて楽しむことができました。
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林家彦いち師匠
シブラクの「鬼軍曹」の代名詞が世間に浸透してきたことに戸惑いと嬉しさを見せる彦いち師匠。今回も後輩たちに鬼軍曹らしさを見せつけてくれました。
「挑戦」をテーマに作ったそうで、何かに挑戦したい人々が、お寺の和尚さんに背中を押してもらいにやってくるという落語です。今回は、9人のチャレンジャーがやってきましたが、登場するのはレビューで書けない話題の人ばかり。そんな人たちにも和尚さんは優しく声を掛けてくれます。全部がバラバラのチャレンジと思いきや、最後はすべてが収束していく。彦いちマジックが見事に決まって余韻の残る落語になりました。
彦いち師匠自身も現在老眼鏡にチャレンジしているそうで、誰にでも青春があるように誰にでもチャレンジがあり、誰にでもおかず交換の思い出があるのです。シブラクに足を運ぶことも実はチャレンジだったりします。「しゃべっちゃいなよ」なんかは特に。今回の作品のトップに出てくる「コンタクトレンズ」に挑戦したいという一番目の人の話を聞いて、自分自身がコンタクトを初めて付けた日のことを思い出しました。確かに、コンタクトを入れること自体が最初は信じられないし、実際に付ける時は相当緊張しますよね。
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恒例オープニングトーク 林家彦いち師匠と
【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」4/18 公演 感想まとめ
写真:渋谷らくごスタッフ