渋谷らくごプレビュー&レビュー
2017年 4月14日(金)~18日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
◎トークゲスト:トミヤマユキコ(ライター・少女まんが研究家)
一癖も二癖もある演者がそろったこの日、トリには「ポンキッキーズ」の新MCに就任した昇々さんがトリを務めます。2016年渋谷らくご大賞の昇々さんが、軽妙な小せん師匠、遊び心満載の遊雀師匠のあとに、どんな落語を繰り広げるのか。
一期一会の落語でみなさんを魅了します。
鳳笑さんは渋谷らくご初登場。病人のような出で立ちですが、「二人の人間の会話」で不思議な魅力を放ち続ける個性派です。ビックリしないように。
▽三遊亭鳳笑 さんゆうてい ほうしょう
28歳で入門、芸歴12年目、2010年10月二つ目昇進。アメブロをやっておられるが、一般的なアメブロの印象とは違っているような坂口安吾から忌野清志郎まで幅広い中身の濃い記事が続く。リンゴの皮がむけないとのこと。
▽柳家小せん やなぎや こせん
22歳で入門、芸歴21年目、2010年9月真打ち昇進。渋谷らくごにご出演の橘家文蔵師匠と入船亭扇辰師匠と音楽ユニット「三K辰文舎」としても活動中。旅先だと早く目が覚めてしまうとのこと。
▽三遊亭遊雀 さんゆうてい ゆうじゃく
23歳で入門、芸歴29年目、2001年9月真打ち昇進
とてつもない乗り物マニア。飛行機に関しては、「オールフライトニッポン」という本を出版している。楽屋でお会いしてみてるととても背が高いことがわかる。チワワを飼っていて、お名前は「大吉くん」とのこと。渋谷らくごスタッフまでも気を使われるほど、とても優しい。酔うと脱がれるとのうわさ。着物の色の組み合わせが独特でお洒落。
▽春風亭昇々 しゅんぷうてい しょうしょう
1984年11月26日、千葉県松戸市出身。2007年に入門、2011年二つ目昇進。
BSフジで毎週日曜放送「ポンキッキーズ」の新メンバー。LINEのキャラクターの「ブラウン」のぬいぐるみを抱きしめている写真がかわいい。その一方で、Youtubeで「アバンギャルド昇々」というチャンネルを立ち上げ、自作の曲をアップしている。狂気と愛嬌の絶妙なバランス。
レビュー
4月16日(日)16時から「渋谷らくご」
三遊亭鳳笑(さんゆうてい ほうしょう)-猫と金魚
柳家小せん(やなぎや こせん)-野ざらし
三遊亭遊雀(さんゆうてい ゆうじゃく)-初天神
春風亭昇々(しゅんぷうてい しょうしょう)-お見立て
レビューでは色々なテーマと絡めて書かせて頂いてますが、今回のテーマはズバリ飛行機。遊雀師匠が航空マニアと聞いて選びました。私も用事が無くても羽田空港のデッキでビールを飲むのが趣味なくらいには飛行機好きですが、よく言われるのが飛行機なんてみんな同じなのに、どこにハマる要素あるのかと。でも、旅行の時の航空会社によってテンションは変わりますよね。どの航空会社も相当個性が強い。噺家さんのイメージって、この感覚と似てるかと思います。きちんと落語を聞くまでは着物を着たおじいさんが江戸弁で面白い噺をする…と、失礼ながら思ってましたし、落語は初めてという友人を会に連れて行くと、大抵雷に打たれたような顔をするほど噺家さんは皆様それぞれ独特の雰囲気を持っているので、何度見ても飽きないのです。
噺家さんが飛行機だとすると、シブラクはシンガポールのチャンギ国際空港のような存在です。各国のフラッグキャリアだけでなく、LCC や空軍までも同居する濃密さ同様、浪曲や講談といった落語以外も聴けるし若手から大ベテランまで出演するのです。乗り継ぎのハブ空港としての役割のように、寄席への入門編落語会として行くのもいいですが、空港なのに一日中遊んでも飽きないエンタメ性のように、何度来ても毎回新しい演芸の魅力に出会えます。
三遊亭鳳笑さん「金魚と猫」
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三遊亭鳳笑さん
圓楽一門会からシブラクへ初の出演者となった鳳笑さん。妙に不安になる出で立ち、喋り方、恐い目…。この不安と期待の入り混じり方は、初めてライアンエアに乗った時を思い出します。落語会もそこそこ行ってるし、強烈な個性の噺家さんもたくさん観ている。もう、ちょっとやそっとじゃ驚かないぞ…と思ってたところに鳳笑さんです。病人に間違われるエピソード等、ライアンエア同様ツッコミどころは多いものの、だんだん感覚が麻痺してきて目茶苦茶心地よくなるんです。乱気流で揺れすぎるとハイになってしまうあの感覚です。落語本編は「猫と金魚」。金魚を猫から守るだけの噺ですが、そこは落語の世界で一筋縄ではいきません。鳳笑さんの雰囲気が妙に噺に合っていてそのままマクラを聴いている感覚です。最後に強靭な男が出てきますが、きっと音声だけなら強靭さが伝わるのでしょうが、鳳笑さんを見てしまうと妙なギャップ。それがまたいい。か細い風貌でも屈強な役を違和感なく演じるのが落語の醍醐味だと思ってましたが、そうとは限らないようです。ライアンエアと出会って旅の楽しみ方がドっと開けたように、落語の魅惑の扉を開いてしまいました。
柳家小せん師匠「野ざらし」
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柳家小せん師匠
鳳笑さんによる乱気流フライトでハイになったあとの小せん師匠。安定飛行に入り何事もなかったかのように機内サービスが始まるように、スッと空気を変えました。釣りの小噺を幾つかやり、お…これは来るか?と思ったらやっぱり「野ざらし」。釣りからの予想は簡単かもしれませんが、マクラからネタが予想できると、より一層落語が楽しくなるんです。そんな自己満足をも包み込んでくれる心地よい高座。聴き終わって高座返しの間に余韻を味わっていると、後ろに座ってた方がヒソっと「サゲが違うねぇ」…と。ハッとしました。今まで野ざらしを聴く機会がそう多くなかったのもありますが、あまりにナチュラルすぎて後半が小せん師匠のオリジナルなのに一瞬気付きませんでした。JALのサービスレベルにさりげないのです。
三遊亭遊雀師匠「初天神」
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三遊亭遊雀師匠
前回遊雀師匠を観た時は、なんて小粋な師匠だろうと思ってました。エアフラのエスプリのような小粋っぷり。この回もそんな遊雀師匠を観るのを楽しみにしていました。そんな期待をいい意味で裏切られるとは…。「初天神」は強烈でした。子供がとにかく可愛くない。子供の頭の切れるしつっこいおねだりに対して、父親が疲弊しながら「お前腕上げたな…」と白旗を揚げるのですが、親子の過去から未来まで想像できます。この親子はずっとこうして戦い続けるんでしょう。小粋で軽い落語かと思ったのにこのネチっこさですもの。粋もエスプリも信用してはいけない。思わぬパンチを食らって抜け出せなくなります。
春風亭昇々さん「お見立て」
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春風亭昇々さん
落語界のエアアジア・昇々さん。一回の高座であの手この手で楽しませてくるので、すっかりリピーターとなってしまいました。「お見立て」はその中でもよく聴く機会がある噺です。登場人物がみんな濃い昇々さんの落語ですが、古典では誰かしら冷静にツッコミを入れる役がいて、噺がバチっとまとまってました。お見立てでは遊郭で働く若い衆・喜助がそんな役どころ。そんな喜助、ついに振り回されすぎて狂いました。元々の変人より、常人がキレ狂ったほうがえてして狂人になるもの。喜助の壊れてく過程は見応え抜群です。冷静なツッコミ不在の狂人だらけも絶妙なまとまりっぷりです。
エアアジアと昇々さんの大きな違い。冷房の強い飛行機の中でもひときわエアアジアは寒く風邪ひくレベルですが、昇々さんの落語は笑いすぎて汗ばみます。エアアジアにはブランケットを、昇々落語にはハンカチをお忘れなく。
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トークゲスト:トミヤマユキコさんと
「渋谷らくご」4/16 公演 感想まとめ
写真:渋谷らくごスタッフ