渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2017年 4月14日(金)~18日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

イラスト

イラスト

4月16日(日)17:00~19:00 立川志の太郎 桂三木男 瀧川鯉八 隅田川馬石

「渋谷らくご」古典:隅田川馬石を聴く会

ツイート

今月の見どころを表示

プレビュー

 40代半ばは落語家にとって勝負の年代。体力的には一番充実していて、覚えたネタもまだ抜けるほどではない。40代をどう充実させるかが、その後の落語家人生を大きく変えます。
 馬石師匠は、そんな40代に自己記録を更新し続ける達人です。落語、よく知らないけど、古典っていうを最初に聴きたい、という方には本当にオススメです。スケジュールのあう日曜日、ぜひ隅田川馬石師匠を聴きにきてくださいませ。
 渋谷らくご初登場の志の太郎さんから、毎月渋谷らくごの勉強会で研鑽を積んでいる三木男さん、2015年渋谷らくご大賞の瀧川鯉八さんと、三人の二つ目も見どころたっぷりです。


▽立川志の太郎 たてかわ しのたろう
24歳で入門、芸歴8年目、2015年4月二つ目昇進。日本テレビの「はじめてのおつかい」でナレーションを担当している。帽子が好きとのこと。ニッスイの大きな大きな焼きおにぎりが好きとのこと。梅酒をつくられているとのこと。

▽桂三木男 かつら みきお
19歳で入門、芸歴14年目、2006年11月二つ目昇進。この秋に真打ち昇進、おじいさまの名前である「桂三木助」を襲名することが決定した。「渋谷らくご公開稽古会」では「桂三木男を見守る会」として、おじいさまの得意としたネタと格闘していただいている。サバイバルゲームが趣味。

▽瀧川鯉八 たきがわ こいはち
24歳で入門、芸歴11年目、2010年二つ目昇進。2015年第一回渋谷らくご大賞受賞。WOWOW動画では、鯉八さんの落語とインタビューが配信中。かわいい見た目とは裏腹に、ハートが熱い男前の鹿児島男児。この時期は常にマスクをしている。前座修行中は、ずっと優しい先輩だったとのこと。そして後輩想いがすごい。

▽隅田川馬石 すみだがわ ばせき
24歳で入門、芸歴24年目、2007年3月真打昇進。二つ目時代は、落語協会の野球チームのピッチャーでエース。前座時代から紹興酒を好んで召し上がられるらしい。毎日5キロを20分未満で走っている。手が意外とごつごつしているが、指が長く綺麗で、みとれてしまう人多数。渋谷らくごのポッドキャストで、馬石師匠の落語配信中、絶品です。

レビュー

文:えり Twitter:@eritasu29歳 女性 事務職 趣味:フラメンコ

4月16日(日)17時~19時「渋谷らくご」
立川 志の太郎 (たてかわ しのたろう)   「大根の思い出」
桂 三木男 (かつら みきお)        「へっつい幽霊」
瀧川 鯉八 (たきがわ こいはち)      「笑う太鼓」
隅田川 馬石 (すみだがわ ばせき)     「花見の仇討ち」


【品の良い不謹慎】

  • 立川志の太郎さん

    立川志の太郎さん

渋谷らくご初登場の志の太郎さん。まくらは志の輔師匠と新幹線で移動中の話。志の輔師匠のプライベートな部分はお弟子さん方からしか聞けないのでとても貴重です。
新作の「大根の思い出」まるで作文の題名のようですが、笑いあり、人情ありの濃密な物語です。埼玉の小さな葬儀会社での、課長と部下二人の会話がメイン。大手のライバル社に負けないようにと意見を出しあっていくのですが、目上の課長に対し部下が言いたいことをズバッと発言しているので、聞いていてなんだかとても清々しい。前座修行中はほぼ運転手だったという志の太郎さんのイエスマン精神の心の奥に潜む願望のようなものを感じます。不謹慎なことって面白いんだなぁと再認識しました。“笑ってはいけない”という心理がよけいにおもしろく感じてしまうのでしょう。笑いから一転しんみりする場面になり、最後はホッとして終わるという贅沢感。終わった後、後ろの席のご夫婦らしきお客さんの「よかったわね」「うん」という会話が聞こえ、物語と少しリンクした感じがして、さらにほっこりしてしまいました。

【立て板に水にアップルパイ】

  • 桂三木男さん

    桂三木男さん

三木男さんといえば少し早口でサラサラと喋るイメージです。流れるようなリズムで聴いていて心地が良い。もうすぐ真打になられますが、年齢はお若く見た目も爽やかなお兄さん。落語協会の二つ目で香盤が一番上になったと仰っていましたが、謙虚な方だなぁといつも思います。へっつい幽霊という噺はその名の通りへっついから幽霊が出る噺ですが、そもそも、私はへっついを部屋の中にある塀(?)だと思っていました。かまどなんですね。そんなに塀必要かな?と思ってました。幽霊の出てくる噺って涼しげで、シュッとした方によく似合うなぁと思います。爆笑系の噺や人情噺とも少し違う感覚で、怪談とは言いつつおもしろいので怖いわけでもない。この絶妙バランスはまさに、おしゃれです。刈上げではなくツーブロック!という感じ。土曜夜の会でひたすら芝浜をかけていらっしゃるなかで短期間で変化がわかるのがおもしろいと評判ですが、へっつい幽霊もまたこの先、進化したものを聴かせてもらえるのか、今からとても楽しみです。

【言葉の魔術師】

  • 瀧川鯉八さん

    瀧川鯉八さん

いきなり“世界一面白い映画は○○です!”と堂々と宣言。堂々っぷりがなんだかかっこいい。断言する言葉の魅力って凄いです。強く断定するほど、それ以外の部分を排除することになってリスクを伴います。普段私は「~かも」とか「~ですかね」とか保守的な語尾で会話をしがちなので、語尾を濁さず凛としてはっきり断定する言葉の強さに惹かれました。とある師匠が鯉八さんを褒めていたという話を楽屋で聴いたそうで、とても嬉しそう。ノリにノッてる様子で、聴いている側もわくわくします。冒頭は太鼓持ちが旦那を褒めるという『幇間腹』のような場面から始まります。鯉八さん独特のファンシーな雰囲気を醸しつつ、幇間腹のイメージから“悪ノリしちゃう若旦那”と“かわいそうなたいこ持ち”を想像。しかし、いつの間にか不穏な空気が流れ出し形勢逆転。笑いつつもゾクッとする不思議な感覚。思いきり鯉八さんの手のひらで転がされてました。

【春の似合う人】

  • 隅田川馬石師匠

    隅田川馬石師匠

馬石さんが高座にあがった瞬間(いい匂いがしそう)と思いました。
「梅だって、人情ですよ」とわかるようなわからないようなこの感じ!このふわふわした感じが最高です。私はこの梅と桜のまくらだいすきです。去年聴いたときのことが一気によみがえります。春のシブラク、桜は散った後くらいで、18時の回のため会社を早退し落語会に行くのが初めてという先輩方を案内して、気に入ってくれるといいなーおもしろい回だといいなーとドキドキしながら会場に来たのでした。そわそわしてなんとなく落ち着きがないまくらの雰囲気。まさに春って感じで印象的でした。その後の“花見の仇討ち”がめちゃくちゃおもしろくてたくさん声だして笑って、後日レッスンの帰りに山手線のホームで電車を待ちながら深見笠の紐が取れない場面再現して何度も笑って、味わい尽くしたこと。鮮やかーに思い出しながら、また同じ場所で見れることの幸せを噛みしめて聴いていました。何度聴いてもおもしろい。そわそわしてる人物たちがみんなかわいくてかわいくて、不快指数0%の気持ちの良さ。聴きにきた人を春の陽気にしてそっと帰してくれる馬石師匠はかっこいいです。これから先も長く見続けたいです。
【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」4/16 公演 感想まとめ

写真:渋谷らくごスタッフ