渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2017年 6月9日(金)~13日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

イラスト

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6月12日(月)20:00~22:00 三遊亭鳳笑 柳家小八 橘家文蔵 入船亭扇里

「渋谷らくご」落語の演じ方を味わう会

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プレビュー

 古典落語と一口にいっても、演者さんひとりひとりに独自の解釈があり、また独自の味があります。
 また、解釈とは別に「演じ方」もそれぞれちがっていて、最初から歌のように聴かせる人もいれば、自分の腹から今出たようにしゃべる人もいるし、リアルに演じる人もいれば、極力演じない、という人もいる。
 すべてはお客さんが「想像」する芸だから、それもアリ!という世界になりました。この四名はとくに「演じ方」に注目して聴くとより味わいが増します。最初の鳳笑さんから気が抜けませんので要注意。


▽三遊亭鳳笑 さんゆうてい ほうしょう
28歳で入門、芸歴12年目、2010年10月二つ目昇進。アメブロをなさっていますが、一般的なアメブロの印象とは違っているような坂口安吾から忌野清志郎まで幅広い中身の濃い記事が続く。最近の心配事は、鳳笑さんのお父様がスイセンをニラと見間違えて食べてしまい食中毒になってしまうこと。身体が細く目がギョロついているが、薬をやっているわけでも病気でもない。

▽柳家ろべえ 改め 柳家小八 やなぎや こはち
25歳で入門、芸歴14年目、2017年3月真打ち昇進。
東京農工大学工学部卒業。物理学を学ぶ。私服がおしゃれ。おかみさんは、渋谷らくごにもご出演の三遊亭粋歌さん。粋歌さんの尻に敷かれている。お笑いを相当に見るそうで、気に入った芸人さんがいると粋歌さんに力説する。そんな小八師匠を粋歌さんはあたたかく見守っている。

▽橘家文蔵 たちばなや ぶんぞう
24歳で入門、芸歴31年目、2001年真打昇進。
ツイッターで、朝ご飯や酒の肴など、日々の料理をつぶやいている。最近は松本清張を読み続けているとのこと。最近のお料理は「前の日からお酒に漬けておいた鶏肉でつくった親子丼」とのこと。ホッピーと焼きトンが好き。日本で一番顔が怖い三代目。雨の日、コンビニで傘を買うと、とたんに雨が止んでしまうとのこと。

▽入船亭扇里 いりふねてい せんり
19歳で入門、芸歴21年目、2010年真打ち昇進。
趣味は競馬と野球観戦。絵本作家。熱狂的な横浜DeNAベイスターズファン。「扇里師匠が球場に行くと、ベイスターズが勝てない」というのは本当か検証中。渋谷らくごのポッドキャストから「扇里ファン」が急増中。2015年8月に渋谷らくごに初登場してから2017年3月までの全高座がつまった「渋谷らくご扇里USB」は会場分は完売しました。笑顔が可愛い。

レビュー

文:えり Twitter:@eritasu30歳 女性 事務職 趣味:フラメンコを踊ること

6月12日(月)20時~22時「渋谷らくご」
三遊亭 鳳笑(さんゆうてい ほうしょう)「饅頭こわい」
柳家 小八(やなぎや こはち)「お見立て」
橘家 文蔵(たちばなや ぶんぞう)「笠碁」
入船亭 扇里(いりふねてい せんり)「応挙の幽霊」


古典尽くし膳


  • 三遊亭鳳笑さん

    三遊亭鳳笑さん

インパクトが強い!表情筋120%!街で見かけたら瞳の大きくお顔立ちの整ったお兄さんという印象になりそうなのに、なぜこんなにも強烈なのか。最前列で拝見していましたが、まるで飛び出す3D映画のようで一瞬も目が離せませんでした。噺もよく知っている「饅頭こわい」のはずなのに「まんじゅう」という単語が出てくるまで気が付きませんでした。全体的に口調は柔らかいのですか、台詞と台詞の合間の「うー」とかちょっとしたところまですごく力がみなぎっている感じがします。(主に眉間のシワ!) 「饅頭こわい」がこんなに印象が変わって面白いのなら、他の噺もまた全然違った雰囲気で聴けるのでしょうか。癖になりそうな濃さです。

  • 柳家小八師匠

    柳家小八師匠

映画の吹き替え声優さんみたいに素敵な小八師匠の声に耳を傾けていたら、落語に入った途端“立て板に濁流”かというほど大興奮で喋るもくべえさんに。間の抜けた雰囲気の声と訛りの強い早口で、あまりにもイメージ通りの完璧なもくべえさんすぎて笑ってしまいます。かと思いきや、花魁のお使いでさらさらと嘘ついたり、堪えきれず笑ってしまうお調子者な喜助さんのイメージも小八師匠と重なって、嘘なのか本当なのかわからない“いい加減さ”がたまりません。のらりくらりと自由自在に変化していく様子に身を委ねて、とても心地よい時間です。

  • 橘家文蔵師匠

    橘家文蔵師匠

やったー文蔵師匠の笠碁!また観たいと思っていたので嬉しいです。碁を打っている中、相手に不利な場所に打たれてしまい、今のなかったことにしてほしいな~という感じのしぐさ。もどかしい気持ちがひしひしと伝わってくるのに、セリフはほとんどなし。すごい!これからさらにおもしろくなるの知ってるぞーという期待でニヤニヤが止まらなくなります。見ているうちに、碁を打つ文蔵師匠vs文蔵師匠という凄みのあるパラレルワールドに一瞬トリップしました。菅笠を被って首を振りながら歩く姿のおかしさと、意地っ張りな大人のかわいらしさにたまらず悶えます。音はないはずなのに、碁石を碁盤に置くときにパチンと音が聞こえたような気がしました。繊細でどっしりと深い味わい。大満足の一席です。

  • 入船亭扇里師匠

    入船亭扇里師匠

微笑んで話しかけてくれるような雰囲気にすっかり心を開いて聴いていました。扇里師匠がもしも高級な壺を販売すると仰ったならきっと私は買ってしまうことでしょう。初夏と扇里師匠と幽霊の噺、とても素敵。渋谷の坂を登った甲斐がありました。落語ならではの楽しさと、扇里師匠のサラリとした語り口。幽霊とは言っても怖がらせたりはせず、涼しく柔らかい雰囲気にほんのひとつまみミステリーを混ぜたような感じ。明治の探偵ものとか、妖怪が出てくるミステリーも似合いそうです。「百鬼夜行抄」みたいな感じの。掛け軸に描かれた幽霊は一体どんな絵なのか、気になって後日、円山応挙の幽霊画を調べてみたりしました。知らなかったことに新鮮な気持ちで興味を持てるのも、想像力を刺激してくれる落語の醍醐味だなぁと思いました。

【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」6/12 公演 感想まとめ

写真:渋谷らくごスタッフ