渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2017年 10月13日(金)~17日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

イラスト

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10月13日(金)20:00~22:00 林家たこ平 三遊亭粋歌 桂春蝶 柳亭小痴楽 

「渋谷らくご」 若手胎動 二つ目 柳亭小痴楽トリ公演

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プレビュー

◎ニコニコ公式生放送「WOWOWぷらすと」中継あり(http://www.wowow.co.jp/plast/

 渋谷らくごのコンセプトのひとつに「若手の奮闘を見守る」というのがあります。
二つ目が寄席でトリをとることはありません。ですがどこかで30分、トリをとる経験は成長には不可欠です。
しかも、最高の真打の後に出番を迎えるのにはそれ相応のプレッシャーにも勝たなければいけません。
 こうしたスリリングな番組を、はじめて落語を聴くという方、あるいは最近聴きはじめたという方にも味わってほしい!
 春蝶師匠は40代前半にして上方の看板真打。18(水)にはここユーロライブで「桂春蝶上映上演の会」もあります。

▽林家たこ平 はやしや たこへい
1979年7月4日、大阪府出身、2003年11月入門、2007年二つ目昇進。ツイッターのアカウントは存在しているのだが、8ツイートしかつぶやかれておらず、4月に「…そこにありますよ。」とツイートされてから、更新が途絶えている。平成30年秋真打ちに昇進することが決定した。

▽三遊亭粋歌 さんゆうてい すいか
2005年8月入門、現在12年目、2009年6月二つ目昇進。28歳で突如会社勤めをやめて、落語家になる。子育てのまっただ中。この夏は、ウィダーinゼリーの0カロリーをとにかく買った。いまバラエティー番組でのIKKOさんの会話応答にはまっているとのこと。

▽桂春蝶 かつら しゅんちょう
19歳で入門、芸歴23年目、2009年8月、父の名「春蝶」を襲名する。今月10月18日(水)「渋谷らくご特別興行 桂春蝶上映上演の会」が開催されます。関西テレビ制作のドキュメンタリーを上映、その後ドキュメンタリーの中で取り上げられている落語1席を上演。東京では、この会だけです。

▽柳亭小痴楽 りゅうてい こちらく
16歳で入門、芸歴12年目、2009年11月二つ目昇進。落語芸術協会の二つ目からなる人気ユニット「成金」メンバー。。スマホがよく壊れ、知らず知らずのうちに師匠に電話してしまっているとのこと。目的地と逆方向の電車に乗ってしまうおっちょこちょいな一面も。

レビュー

文:余白 Twitter:@kuroiyohakuネットもリアルも引きこもり脱却を画策中

10月13日(金)20時~22時「渋谷らくご」
林家たこ平(はやしや たこへい)「やかん」
三遊亭粋歌(さんゆうてい すいか)「落語の仮面 第一話三遊亭花誕生」
桂春蝶(かつら しゅんちょう)「ご先祖様」
柳亭小痴楽(りゅうてい こちらく)「宿屋の仇討」


この日は雨でした。雨の渋谷はカラフルな傘で埋め尽くされ、いつも以上に種々様々。そんな喧騒を抜けると、別世界! 
渋谷の街並みとは対象的に黒と赤で統一されたお馴染みのユーロライブ。
さらに今日は、雨の日特有のすーっとした空気が漂い、凛とした雰囲気が非日常感をいつも以上に演出していいて、最高にワクワクが止まらない様がそこにはありました!

開始前に、サンキュータツオさんから、音や所作に対するアナウンスがあり、その中で「落語は演者さんと会場の皆様で作り上げるものです」と言う様な話をされていて、凄まじく初心者(最近聴き始めた超ド級の初心者です…)の私は、そうなんだ!落語って素敵!と ぐっときました。
(最近ぐっとくるとウルウルしてしまいます。加齢って怖いですね…)

そんな右も左も分からない落語超初心者な私なのですが、
誠に恐縮で御座いますがレビューを書かせていただきます。

林家たこ平さん「やかん」


  • 林家たこ平さん

    林家たこ平さん


来年、真打ち御昇進決定されたのこと、おめでとうございます!!

まくらでは、真打御昇進の話や、開始前にサンキュータツオさんが「落語家さんは真打に昇進される前と直後が一番面白い」とおっしゃった事などにプレッシャーを感じる話や、林家一門で代々飼育されている九官鳥の話をされていました。
中でも、入門された頃、お世話係を担当されていた時の話には驚きました!体調が悪すぎて、あしたのジョーの矢吹のように燃え尽きてしまった様子のキュー太郎さん(九官鳥)を、兄弟子さんの下手くそな運転で動物病院へ連れて行くお話です。たこ平さんの穏やかな声色でさささっと進んでいく話の先には、衝撃的なラストに客席中がどよめき一色。

お話は「やかん」。
世の中に知らないものは何もないという先生に、弟子?(愚者と呼ばれる方)がいろいろな言葉の由来を聞くお話。途中に出てくるお経のような長〜〜いセリフを止まらぬ速さで唱え続けて、そこから落ちへ繋がって行くのがたまりませんでした!
かーやーやかんーと叫ぶところでは、お世話されていたキュー太郎さんも後ろで一緒に叫んでいるんじゃないかと錯覚してしまうような、人知を超え気味の大迫力さでした!
たこ平さんの声は、とーっても癖になりますね。
そして、プレビューにツイッターの事が書いてあったのですが、チェックしてみると8ツイート中の5ツイートに「…」が使用されている、そのミステリアスさにも惹かれ、次いつ呟かれるのか気になって、ツイッターからも目が離せません!


三遊亭粋歌さん「落語の仮面」第一話 三遊亭花誕生


  • 三遊亭粋歌さん

    三遊亭粋歌さん


お話は「落語の仮面」。三遊亭白鳥師匠が美内すずえ先生のガラスの仮面を元に創作れたお話だそうです。
このお話をされるという事がわかると、落語ファンの方々からはクスクスと笑い声が広がり、期待度大なのかと思い、勝手にハードルをあげて聞いてしまったのですが…ん?なんだこれ!予想の遥か斜め上を行き過ぎて、何かを突き抜けてしまっているかの様な面白さです!

今回はお話してくださったのは、第一話で、三遊亭月影が持ちネタである「無限桜」の伝承者を探していた時、落語を知らないのに自然と落語ができてしまう天才少女花ちゃんと出会い、花ちゃんの才能を見出していくお話です。
話自体事が面白いことはもちろんのこと、粋歌さんの素晴らしい技術力で、面白さに拍車がかかります!
花ちゃんを演じる粋歌さんは、表情はとても柔らかで、声も可愛らしく、
そして、着ている格子柄の着物が、より町娘のように演出しています。
月影先生を演じる粋歌さんは、表情も声も高貴ですし、
羽織の赤と高座の赤色が一体化して一つの巨大な衣装に見える上に、
月影先生の伝承したい持ちネタが「無限桜」なことも相まって、あの「千本桜」を思い出し、
ラスボス小林幸子氏を彷彿させるオーラを放っていて、貫禄満点でした!

調べたところ、「落語の仮面」は2017年7月の時点で、第八話まで完成されているようなので、全話見てみたいです!
そして、2016年にシブラクでの「創作大賞」を受賞されたという、粋歌さんの創作落語もぜひぜひ聞いてみたいです!

桂春蝶師匠 「ご先祖様」


  • 桂春蝶師匠

    桂春蝶師匠


会場は終始大盛り上がりで、ずっと大笑いしていました!
淡いグレーの羽織を翻し、颯爽と登場した桂春蝶師匠。
渋甘いダンディーなルックスに、セクシーな声!
かっこ良すぎて、一目惚れしてしまいました!
まくらで女性をいかに短い言葉で口説くかというお話をされていたのですが、
春蝶師匠ならどんな女性でも「な。」の一言で落とせてしまうのではないでしょうか。

他に、まくらでは、三代目有名人ランキング、ツイッター炎上、上方落語の重鎮である師匠の方々のお話など色々話されていて、まくらで終わってしまっても大満足してしまいそうなボリュームのある面白さ!
座布団とはなんなのかと思ってしまうほどに、春潮師匠はグイグイ客席の方に寄ってきはる、その関西人らしいフリーダムさも大阪で育った私としてはたまりません!

お話は「ご先祖様」。死んだばかりの新参者が先にお墓に入っているご先祖様に挨拶回りをするお話。歳をとると昔の武勇伝を誇張して話してしまいたくなる人が多いですが、もう死んでしまったとなればさらにその欲望は止まるとこ知らず。
まくらとは違った雰囲気の面白さなのですが、まくらからの熱が冷めず、さらに客席中が一丸となって、全力で笑っている感覚も本当に楽しくて、大熱狂でした!
ツイッターの炎上をキャンプファイヤーというハイパーポジティブ発言されたり、観客の方々も参加させてさらに盛り上げられたり、周りの方を巻き込んで大旋風を巻き起こし続けていく男気溢れる方なのだなと感じました!
本当にかっこよすぎます!めっちゃ素敵です!!

柳亭小痴楽さん「宿屋の仇討」


  • 柳亭小痴楽さん

    柳亭小痴楽さん


先月、色々あってペナルティー的な流れで、トリを務められることとなったという柳亭小痴楽さん。
休日はフットサルをやって、原宿・表参道あたりでストリートスナップを撮られてそうな、今時イケメン男子風な方でした。

先月の色々あった事からなのか、真打ちの方の後のトリという事からなのか、
鶯色がかって見えるようなグレーに黒い羽織を着て登場された、小痴楽さんは神妙な面持ちです。
高座に上がるなり、謝罪会見かのように各方面の方々に謝罪され、客席からはフラッシュの代わりに笑い声が浴びせられます。

サーっとその場が流れ、「宿屋の仇討」というお話が始まりました。
宿屋に宿泊してどんちゃん騒ぎをしているハチャメチャな三人組と、そのうるささに対してブチギレている隣の部屋に宿泊中のお侍さん、そして双方の仲介役でどぎまぎしている従業員の源兵衛さんで話が進みます。
途中までは、謝罪の匂いがプンプンする雰囲気だったのですが、
黒い羽織を脱がれて、ド派手な蛍光オレンジの裏地があらわになった途端、
笑いの封が切られたのかごとく、小痴楽さんワールドに客席が引き込まれていく様が痛快でした。
また、お話の中で土下座と謝罪をする場面があるのですが、そこでも柳亭小痴楽さん自身の謝罪も重ねられていて、会場の笑いが起き、
謝罪を笑いに変える強さとセンスにプロのすごさを感じました!
公演後のツイッターで、時間オーバー確信犯だとおっしゃっていた事にも共通するものを感じました!

やー、本当に落語って面白いですね!
面白さの中に学びもあり、色々な旨みを感じます。
初心者すぎて、「真打」なのか、「真打ち」なのか…(調べても両方使われてますね…正解は?)それすら理解できてない自分を悲観していましたが、
初心者だからこそ楽しめる部分も楽しみつつ、これから色々深く知っていければなと、ハイパーポジテイブな気持ちになれました!楽しい時間をありがとうございました!

【この日のほかのお客様の感想】 「渋谷らくご」10/13 公演 感想まとめ
写真:渋谷らくごスタッフ