渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2017年 10月13日(金)~17日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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10月17日(火)18:00~19:00 林家きく麿 春風亭百栄

「ふたりらくご」 創作らくごの真打

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プレビュー

 未来にも残るかもしれない落語。落語を作り続け、キャリアを積んできて真打になったきく麿師匠、百栄師匠。
 しかし、古典にも通じる「のんきさ」や「バカバカしさ」をこれほど創作で表現している真打もほかにおりません。
 手堅い笑いもあれば、不思議な感覚にさせてくれる落語もある。その引き出しの多さは、最初に落語を聴いてみる方にもきっと頼もしい存在となるでしょう。

▽林家きく麿  はやしや きくまろ
24歳で入門、芸歴20年目。2010年9月真打ち昇進。観光地などにおいてある顔ハメ看板には、必ず顔を入れる。仲間内から「顔ハメのカリスマ」と呼ばれている。最近はめたものは、千貫石温泉に行った際に立ち寄った「鬼の館」の看板。

▽春風亭百栄 しゅんぷうてい ももえ
年を取らない妖精のような存在。静岡県静岡市出身、2008年9月真打ち昇進。
不思議な風貌で、危ないネタをかけつづている。落語協会の野球チームでは、名ピッチャーとして活躍する。
アメリカで寿司職人のバイトをしたことがある。猫が大変お好きという意外は日常生活の様子を見せない。

レビュー

文:pem(ペム) Twitter:@shina1220  性別:女 年代:20代 趣味:宝塚・舞台全般観劇、時々ハロプロその他諸々 落語歴:10ヶ月

10月17日(火)18:00~19:00
林家きく麿(はやしや きくまろ)『ベタ刑事』
春風亭百栄(しゅんぷうてい ももえ)『落語家の夢』

『落語聴くなんてシブいねって言われるけど本当にそんなことないよっていうおはなし』

落語を聴き始めてからそのことを言うと必ずといっていいほど言われる台詞がある。
それが「(落語を聴くなんて)シブいね」
初めて言われた時とてもじゃないが説明ができる自信がなかったためその人には伝えはしなかったがその時ちょうど行った公演が今年1月渋谷らくごの鯉八さんがトリの回で”おはぎちゃん”であったことを・・・。(むしろ今だって”おはぎちゃん”の説明をしてと言われても考えあぐねてしまうのだが)

やはり私を含め周りの人間の落語初心者たちももれなくこの言葉を落語未体験の人たちのから口にされているらしい。でも一度でも落語を体験したらそんな考えは吹っ飛んでしまうことだろう。特にこの公演のふたりらくごに関してはシブいという概念すら頭によぎることすらないであろう、そんな1時間でした。

開演10分前からキュレーターのサンキュータツオさんが壇上へ–「10月の渋谷らくごは5日中4日間が雨という(毎月シブラク期間中は降水確率かなり高いような気がするが)お天気に恵まれいきなりシブラク存続の危機に立たされた、来月はとりあえずある」といきなりヘビーな現実を突きつけてくるタツオさん、トーンが洒落とガチのを混ぜたようなほぼガチなやつです。この時間は公演グッズ・来月のシブラクを含めた公演のお知らせ・観劇マナー・今から始まる公演の見所をタツオさん自ら伝えてくださいました。公演やグッズに関してはオススメポイントを観劇マナーに関しては理由もきちんと添えてくださるので聞いていて気持ちがいいです。個人的にはサクラ大戦歌謡ショウ(※10年以上公演していたサクラ大戦のミュージカル)の前説に総合プロデューサーの広井王子氏が掃除人という役に扮して主に観劇マナーを伝えるあの雰囲気に似ています。確実に会場アナウンスより、形式的な言葉を並べて言わないといけない劇場スタッフよりその公演をまとめている人の生の声で形式的ではない言葉で伝えることによってグンッとちゃんと耳を傾ける人が増えるので大変だと思うが、いい形だなと強く感じます(ちなみにこれ毎公演の開演前に必ずあるわけではないので悪しからず)


林家きく麿

  • 林家きく麿師匠

    林家きく麿師匠

きく麿師匠はお初にお目にかかります。第一印象は”林家”っぽい!!です(※人の良さそうな憎めないタイプなお顔立ちで陽気質の快活なイメージ)
個人的な話をするとあまりにも初心者過ぎてレビューを書くときまず古典落語の噺をネットでググッた後、お勉強してから書いてるんですがお二人とも創作落語なんでその過程がなくとても精神衛生上とても心が軽いです(笑)

『ベタ刑事』 舞台はヨコ○ン警察署(※自主規制)に配属された新人刑事と一緒に組むことになったタナベ刑事、通称ベタさん。ベタさんはお笑いに厳しくベタなことが大の嫌い。この二人が一緒に張り込みをすることになり、ベタさんは自分のギャグやネタがベタかベタじゃないか新人刑事に問いかけをしだしストーリーが展開していきます。とにかく笑いが直球で気持ちよいです。客席はきく麿師匠くらいの年代の男性ファンが多いなと思ったのですが確かに男性受けが良さそうです。そのおかげで男性ファンの方が大声で笑うので女性陣も気にせず大声で笑える環境でした、最高です。シュールのくだりがカオスで面白く、脳内で私もベタさんにどうやってシュールという意味を伝えればいいのか考えてしまいました(笑)


春風亭百栄

  • 春風亭百栄師匠

    春風亭百栄師匠

前方列の最下手側から今回聴いていたのですが、出囃子が鳴る–背景のモニターに”春風亭百栄-shunputei momoe-”と映し出され、それをしばらく眺めてから歩き出す百栄師匠がなんとも言えず愛らしかったです。そして高座に向かう足取りは足音に効果音が付きそうな独特っぷり、第一声”えぇぇ~こんにちぃぅわぁぁ~”と、とにかくゆるい。だがそこがいい。それにしても、きく麿師匠の元気ハツラツ!からの落差がすごい。

『落語家の夢』
「ベタ刑事!!これがシュールです!!!!!!!!」と言わんばかりの超シュールな噺をもってきた百栄師匠、さすがです。ベタ刑事に聴かせたい一席。寄席にあることを尋ねに来た母と娘。まわりくどく、中々本題に入らないのがリアルです。母親が物腰が柔らかいのにどことなく狂気さが滲み出ていて本題を早く知りたい思いつつ知りたくないという矛盾に掻き立てられます。そして明かされる尋ねたい内容—落語家ちゃんを買いたい(飼いたい)—落語家が好きな娘のために母親が寄席で落語家ちゃんの販売を行っているのかと訪れたのであった。返答に困ったお茶子は対応を若社長にバトンタッチ。そして若社長の口から放たれる衝撃のひと言–売りますよ–もう最後まで展開が読めず笑いとドキドキが収まりませんでした。実際の落語家さんの名前が続々飛び出してくるので落語好きのほうがより楽しめるのでしょうが初心者の人間でも本当に楽しめました。今後その落語家さんに触れる機会が訪れたら確実にこの噺が脳内によぎることでしょう・・・(笑)


同じ創作落語のという枠組みでいながら笑いの質が違う落語の可能性無限大を最大限に感じられる笑いに包まれた1時間でした。


来月のシブラクは3周年記念興行ということで通常は5日間10公演のところが6日間12公演となっております!多分いつもより当日券早めに並ばないといけないような豪華なラインナップがずらっと並んでいるので前売り券を購入しておいた方が安全です(タツオさんも前売り買っておいた方が良いよとおっしゃっておりました。あと友達とか連れてきてね!だそうです)来月はどこの回でも落語デビューにはピッタリな興行だと思います。公演日程は11月10日(金)~15(水)ですので気になった方は足を運んでみてはいかがでしょうか?来月まで待てないよ!・落語に少し興味湧いてきたよ!という方はPodcastや動画が1席丸ごと配信されてますので渋谷らくごHPのトップページにURL貼ってありますのでぜひご覧ください。

【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」10/17 公演 感想まとめ

写真:渋谷らくごスタッフ