渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2018年 11月9日(金)~14日(水)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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11月13日(火)18:00~19:00 桂三四郎 橘家文蔵

「ふたりらくご」二つ目×真打 文蔵編

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プレビュー

 ベテラン真打と気鋭の二つ目が火花を散らす平日18時からの1時間公演。
 午後半休をとってでも行きたいこの贅沢な夕方、この日はムーブメントの震源地 文蔵師匠と、口から生まれた三四郎さん。
 どんな方でも安心して楽しめる、サービス精神旺盛なお二人です。こんな組み合わせは見たことない!
 初心者の方でも必ずや満足させてくれる二人です。どうぞお楽しみに!

▽桂三四郎 かつら さんしろう
22歳で入門、現在入門14年目。疲れた日はサウナに入ってリフレッシュする。この秋ニューヨークに行ってきた、海外の人が食べるご飯の量に驚いた。トランプタワーにも行った。体調を崩すと声が出なくなるタイプ。

▽橘家文蔵 たちばなや ぶんぞう
24歳で入門、芸歴33年目、2001年真打昇進。ツイッターで、朝ご飯や酒の肴など、日々の料理をつぶやいている。最近つくった料理は新しく見つけたパン屋さんで食パンを買ってきてつくった「厚切りハムと明太ポテサラのサンドイッチ」。家にラジオがたくさんある。ずっとつけっぱなし。

レビュー

文:漫才コンビ「キュウ」 ぴろTwitter:@piroguramu 芸人

11月13日(火)18-19「ふたりらくご」
桂三四郎(かつら さんしろう) 「竹の水仙」
橘家文蔵(たちばばや ぶんぞう) 「ねずみ穴」

桂三四郎『竹の水仙』

  • 桂三四郎さん

    桂三四郎さん

人生2回目の桂三四郎さん。 前回観た時は、恐らく創作のお話だったと思う。その時も心底思ったのだけれど、この人の話し方、声、間、表情、全てがわかりやすく、とてもポップだ。お話に出てくる役の使い分けの メリハリが凄いのは他の落語家さんもそうなのだけれど、この人の場合はそれプラスαの聞き取りやすさがある。これは上方だからなのだろうか、僕はまだあまり上方落語に触れた経験が少ないので何とも言えないけれど、恐らく、この人が元々持っているものは大きいと思う。実際、僕が初めて観に行った落語の寄席に桂三四郎さんが出ていて、僕は落語を初めて観たのに、落語を観ているというということを忘れてしまうほど、自然に観ていられたのを憶えている。 極端な話、桂三四郎さんの落語は、落語に興味が無い若者が観ても楽しめる落語だと思う。本格的なのに、初心者向け。まぁ、ちょっと違うかもしれないけれど、例えば、サザンオールスターズの様な落語。ちょっと違うかもしれないけれど。とにかく初心者にオススメ。 この日お話されていた竹の水仙というお話も、お話自体は古典落語なのに、マンガ日本昔話を観ているようなわかり安さがあっ た。元々は難しい話を三四郎さんがわかりやすくアレンジしてくれているのか、元々わかりやすいお話だったのか、前者なら、 その技量と心意気が好きだし、後者なら、その自分に合った話をチョイスするセンスが良いなと思った。竹の水仙をまた違う人で見てみたいな。 あと、全然関係ないけれど、例えとかじゃなく実際に、公演中ずっと三四郎さんと目が合ってる気がした。気のせいかな。

橘家文蔵『ねずみ穴』

  • 橘家文蔵師匠

    橘家文蔵師匠

落語を見始めて間もない僕は、落語家さんは必ず”枕”をするものだと思っていた。漫才で言う”つかみ”と呼ばれる部分だ。 しかし、この日の橘家さんは違った。 出囃子が流れ、まったりと舞台へ登場すると、すかさず羽織を脱ぎ、いきなりお話に入る。”枕”無し。僕にとってはその行為がすごく異様に見えて、ゾッとすると同時に、「どういうことだ?」と一気に惹きつけられた。 そして、ねずみ穴が始まった。果てしなく教訓めいたものと、オチにはしっかりとシャレの効いた良い話だった。 結構長い話なのに、途中で出てくる色んな言葉の全てに無駄がないような、そんな感覚すらある。なんてことない前半の話から、こんな不幸な奴がこの世にいるのかと胸を締め付けられる ような中盤、そして予想を裏切る後半。 ねずみ穴をまだ知らない人の楽しみを奪うのが嫌なのであまり 内容には触れたくないけれど、”夢オチ”というものがこんなにも「ありだな」と思えたことはない。単なる夢オチで終わらないのがさすが落語。そして公演が終わり、会場を出て時間を確認した時、文蔵師匠が枕をしなかった理由がなんとなくわかった気がした。


【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」11/13 公演 感想まとめ

写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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