渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2017年 11月10日(金)~15日(水)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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11月11日(土)14:00~16:00 立川志ら乃 柳家わさび 三遊亭遊雀 橘家圓太郎

「渋谷らくご」必笑仕事人 ~圓太郎シリーズ~

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プレビュー

 どのような状況でも、置かれた立場によって確実に仕事をする「仕事人」が四名。
 持ち時間、出る順番、ほかの演者との演目のバランス、どこをとってもまちがいない仕事をしてくれる四名。
 「落語は楽しい!」そう思わせてくれる、カッコいい四名です。

▽立川志ら乃 たてかわ しらの
24歳で入門、芸歴20年目、2012年12月真打昇進。カエルのぬいぐるみをたくさん持っている。最近気になっているスーパーは、「Ona casita」。落語の裾野を広げるために、現在は26人同時に稽古をつけている。

▽雷門小助六 かみなりもん こすけろく
17歳で入門、芸歴18年目、2013年5月真打ち昇進。猫好きで4匹の猫を飼っている。最近ドラクエ11を始めるが、ベビーパンサーを倒すのが辛いことが悩み。猫アレルギー。渋谷らくごの楽屋で、いろはすのみかん味をゴクゴク飲まれている。

▽三遊亭遊雀 さんゆうてい ゆうじゃく
23歳で入門、芸歴30年目、2001年9月真打ち昇進。文部科学省のYoutubeチャンネル「かがやく先輩からのメッセージ」に遊雀師匠が取り上げられている。とてつもない乗り物マニア。飛行機に関しては、「オールフライトニッポン」という本を出版している。

▽橘家圓太郎 たちばなや えんたろう
19歳で入門、芸歴36年目、1997年3月真打ち昇進。オヤジの小言マシーンぶりは渋谷らくごでも爆笑を生んでいる。スマホではSNSなどはやらず、雨雲レーダーだけを完璧に使いこなしている。この時期は可愛らしいパーカーを着て楽屋にいらっしゃる。

レビュー

文:とも朕 Twitter:@dejidj2016 最近面白かったこと:神楽坂まち舞台2017で、シリル・コピーニさんのフランス語落語を聴きました。ジュゲム・ジュテーム~。

11月11日(土)14時~16時「渋谷らくご」
立川志ら乃(たてかわ しらの)「親子酒」
雷門小助六 (かみなりもん こすけろく)「紋三郎稲荷」
三遊亭遊雀 (さんゆうてい ゆうじゃく)「不動坊」
橘家圓太郎(たちばなや えんたろう)「試し酒」

絶対音感ならぬ「絶対物語感」!?

この世には同じ話をしても、より面白くて思わず聞き入ってしまう言葉の魔法使いのような人がいます。何が違うのでしょう?
美しいコード進行のように丁度良い温度とリズムで、一つのお噺を素晴らしく盛り上げていく術を絶対的に知っているような達人たち。

絶対音感ならぬ「絶対物語感」を持っている人、とでも言うのでしょうか? 今日はそんなことを考えさせられました。。

プレビューの「落語は楽しい、そう思わせてくれるカッコいい四名」、本当にその通り。今日は全員真打、古典落語に正面からぶつかるダイナミックさ、王道。

タツオさんの表現をお借りすれば、「窮屈でもなく寂しくもない、程良い入り」の会場で、「気は抜かないけど、力の抜けた」達人の芸に、のびのびじんわり感動した午後でした。

立川志ら乃師匠 「親子酒」


  • 立川志ら乃師匠

    立川志ら乃師匠


歯の治療をしたばかりで、口の感覚がないまま高座に上がったという師匠。ゆったり話すと歯の痛みが和らぐそうですが、そうすると「師匠、一皮剥けましたね!?」と逆に評価が上がっているとか。
でも今日はゆったりどころか、かなりの勢いでの「親子酒」でした。

酒呑みの親子がお互いに禁酒を約束したものの、ちょっと一杯だけなら‥と先ず親父が誘惑に負けてしまいます。禁を破って呑むお酒の美味しさは格別。美味しそうに吞み干す師匠の表情に、喉からお腹に向かって熱くなります。久しぶりのお酒にハチャメチャな感じで、はしゃぐ親父さん。そこに同じく約束を破って呑んできたであろう息子が帰宅し、親子で超ハイテンションなへべれけバトルに突入して行く。。

酔っ払いが登場する落語は数々あれど、今日の師匠は目が異次元にイっちゃってるような酔っ払いぶりでした。普段は凄く真面目な方らしいけれど。

(観客と演者が)「お互いがちょっと幸せになるといい」という、まくらでのお言葉通りに、私もちょっと(大分?)酔っ払ったような幸せな気持ちになりましたよ。


雷門小助六師匠 「紋三郎稲荷」


  • 雷門小助六師匠

    雷門小助六師匠
    ※写真は別公演のものです


保守本流が逆に新鮮で、高座姿が美しいと言われる師匠。志ら乃師匠によれば、小助六師匠はピュアで繊細なヒト。動物アレルギーで愛猫を抱きしめられないのが悩み、という師匠が猫ちゃん達と暮らす松戸が舞台の物語。

笠間から松戸まで狐の胴巻を着たお武家様が籠に乗ります。あまりの気前の良さに「まさかお狐様を乗せてしまったのでは!?」と駕籠屋さんは勘違い。お武家様も面白がって、そのまま狐の演技をして、とうとうお賽銭まで飛んでくる始末。それを見ていた夫婦狐に「人間は化かすのが上手いねぇ」と感心されてしまったりして、クスッと笑えます。

ひょうきんで可愛らしいお話の内容と小助六師匠の声の温度がぴったり合っていて、とっても暖かい気持ちになりました~。

三遊亭遊雀師匠 「不動坊」


  • 三遊亭遊雀師匠

    三遊亭遊雀師匠


二日酔いだという師匠。「酔っ払いが出てくる話なら、今日は名人級の演技が出来るよ」とのこと。本当は「替わり目」を演る予定だったのに、お酒の話は志ら乃師匠に先を越されてしまって、ご機嫌斜め。小助六師匠の高座時間が短めだったのにも、ご立腹。

そして、ちょっと不機嫌に凄みながら始まったのが「不動坊」。
憧れの人妻の夫が亡くなり、色めき立つ男達。再婚相手となった男のニヤニヤデレデレの妄想と、妄想の中で交わされる色っぽ~い会話。 会話が進むにつれ、白髪の師匠がエロい後家さんに見えて来るのがホントに不思議~。再婚を妬んで邪魔する男達のドタバタにも大爆笑。ダイナミックな表情が魅力的な師匠の見せ所たっぷりでした。ガラスの仮面ではないけれど、本当に「千の仮面を持つ」師匠ですね!

橘家圓太郎師匠 「試し酒」


  • 橘家圓太郎師匠

    橘家圓太郎師匠


今日はトリの圓太郎師匠も、お酒のお話でした。
喉を鳴らしてゴクゴク、プハァ~という飲みっぷりが美味しそう。お酒が呑みたくなります。上手い演技を観ていると、本当に喉が渇いたりお腹が鳴ったり、肉体が反応するので不思議です。観客の心身に影響するような上手い落語とは本当にこういうこと?と実感しました。

お話は、酒好きの下男が五升のお酒を呑めるかをめぐって主人達が賭けをします。大好きなお酒が呑めてお小遣いも貰えるの!?と喜ぶ下男。舌をペロっと舐める師匠の表情に、ああ~この下男は本当っにお酒が好きなヒトなんだな!と納得。でも負けたら主人に散財させてしまって悪いなぁ、と心配する主人思いな可愛らしいところも。。

盃を愛でたり、味わったり、世間話をしながら余裕で飲み干して行く下男。徐々に酔っ払って陽気になって行く変わりようも見ものです。五升目を飲み終えた時には、思わず会場から拍手が湧き起こりました!

今日はトップバッター&トリに大酒呑みのお話で、私も酔ってしまいそう。というか本当に落語に酔ってしまった、気分の良い帰り道でした。。


**** 本日はトークゲストとして、神保町に十年あるという落語カフェ主宰・青木伸広さんも出演なさいました。行きやすいカフェの形式で、おじさんパラダイスだった落語に女性や若者を呼び込んだパイオニア、とのこと。「ミュージシャンにおけるライブハウスのような存在でありたい」、という思いを語っておられました。

落語のみならず、「落語周辺」のお話は大変に興味深いです。日曜日には、落語家のヨーロッパ公演を手がけるドイツ人プロデューサーさんのトークもあるとのこと。落語に魅了されるファンは世界中にいて、様々の方が関わっているのですね。今後も色々な方がトークに登場してくださると楽しみですねぇ。

【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」11/11 公演 感想まとめ
写真:渋谷らくごスタッフ