渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2015年 11月13日(金)~18日(水)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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11月13日(金)18:00~19:00 瀧川鯉八

「ひとりらくご」 天才鯉八、一時間!

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プレビュー

11月の渋谷らくごは、1周年御礼興行です。その御礼興行の開幕公演は瀧川鯉八さん。
鯉八さんだけが出演する「ひとりらくご」。鯉八さんのためだけにある1時間です。鯉八さんは、この1年間の渋谷らくごで、たくさんの逸話とたくさんの鯉八中毒者を生み出してきています。「初のナマ寄席だったけどPodcastで聴いてた時から鯉八さん好きすぎて実際観たらほんとに独特な世界観でひとつの現代美術作品っていうかパフォーマンスアートっぽかった めちゃめちゃ笑った」「センスの塊」「鯉八ワールドをくらってしまった」と言った感想がツイッターで溢れているように、落語初心者の方でも、一度聴いてしまうと独特な世界観に圧倒され、突然日常生活で、鯉八さんの落語の台詞が再生されてしまうくらい脳内は鯉八落語に浸食されます。

物語の拡張。いままで常識と思われていた落語や物語のテンプレートを忠実に守りながら、これまでの古典の演出方法さえ無駄に見えてきてしまうほどの鯉八流落語は、無駄がなく、また何度聴いても面白い普遍性と強度を持っています。お約束事で描かれていた世界をあえて描かず、いままで描かれてこなかった世界をこれでもか!と濃く描いてしまう狂気ともいうべき表現力の高さ。今回の「ひとりらくご」でも確実に伝説が起こるでしょう。

レビュー

文:noboru iwasawa Twitter:@taka2taka2taka2 50代男性 職業:会社役員 落語歴:少々 趣味:クライミング

11月(霜月)初日 寿 一周年記念公演
11月13日(金)18時~19時 ひとりらくご「落語を拡張し続ける天才」
瀧川鯉八(たきがわ こいはち)「空耳」「狼おっさん」「食事」「新日本風土記」

「落語を拡張し続ける天才」(Genius to continue to extend the “rakugo”)

  • 瀧川鯉八さん

    瀧川鯉八さん

鯉八さんに付いては、10月9日シブラク20時の会、7月11日のシブラクの柳亭小痴楽さんのレビューにて紹介させて頂きました。最近のトピックでは、やはり平成27年度NHK新人落語大賞決勝ですね。10月26日大阪・堺市美原文化会館で行われました。4年前の平成23年度に続いて2度目の決勝進出です。何が前回と違うのか? 一番は若手落語家の中での鯉八さんのプレゼンスでしょう。審査員のお一人でもある、浅草演芸ホール松倉会長から「鯉八ワールド全開でしたね!・・・」とサラッと口に出る辺りは、存在感を増した証でしょう。

ユーロライブのシブラク会場では、ゆったりとした空間にジャズピアノが心地よく流れていた。11月、一周年記念公演初日、開口一番での「ひとりらくご」、続々とお客様が席を埋め始めていた。配られたチラシを確認する人、プレビュー、レビューを読み込む人、友人と最近の出来事を話している人、アンケートを配るスタッフ、様々な思いをもって集まったお客様、一つだけ共通しているのは、「今日の鯉八さんは何をやってくれるのだろう?」「どう楽しませてくれるのだろう」・・と。なんとなくのんびりした空気に包まれていた。楽しませてくれるのは、既知事項だから変な緊張はない。体を紅色の椅子に深くうずめ、大きく息を吐く。シブラクスタッフによる注意事項のアナウンスが流れた。この時間のジャズピアノは、スイングに代わっていた。

“トーントーントーンドド”と二番太鼓がなり始めた。出囃子にのって、ゆっくりゆったり、上手より鯉八さん登場。

「チャオ! 渋谷らくご一周年記念興行でございます。いつもは5日興行ですが、今月だけ6日間です。その記念すべき初日のトップバッターが、この瀧川鯉八の”ひとりらくご”華々しくいきます、ごゆっくりおたのしみ頂きたいとおもいます」といつもの様にハードルを上げ、鯉八ワールドを展開していきました。

「みなさん、ご存じですか?〇〇〇兄弟が5人兄弟だったこと!僕は昨日知りました」
マエフリは、兄弟のお話から、”長男はこうでなくてはいけない””優秀な三男、四男を弟に持つ二男のお話”です。

「かあさん、僕自殺しようと思うんだ!」

本年4月22日(水)渋谷uplinkにて”ニュー・ラクゴ・パラダイス” 第2回「ニューお題噺」、瀧川鯉八さん、立川吉笑さんが、2014年講談社エッセイ賞を受賞したベストセラー『自殺』をテーマに落語を創作し、著者:末井昭さんをむかえて、披露する会がありました。その時の鯉八さんの”創作らくご”が今回の「空耳」です。

『自殺』と言うちょっぴりセンセーショナルな字面、落語の”笑い”からは対極的な言葉です。強いて言えば「ネガティブワード」です。落語の手法でいえば、「ポジティブワード」を対比させる(ぶつける)ことによって発生する”差”が笑いの種となり、サゲへと繋がります。今回の「空耳」の下げは2段構えに構成され、1段目はマエフリで”ネタバレ”をさせています。(「一文字聞き間違えした男の話です」と)。そうすることによって、最後の”オチ”(サゲ)がより強調され笑いは増幅されていくのです。テーマ『自殺』から、噺の構成は、サゲが決まり、そこから川の上流に遡行するように噺をマエフリまで、巻き戻しながら、作り込んでいったのではないでしょうか。作り込む中で、偶然かもしれませんが、『(自殺)みんながするから、僕もする』「多数が善」という社会的矛盾をも投げかけていました。非常によくできた、一話となりました。

「シブラクスタート当時はお客様も少なく、シブラク自体が自殺したい状況でした」
「NHK新人落語大賞決勝に大阪にいってきました、結果は残念でした。みんなが慰めてくれるのです、審査員が20代だったら優勝だよって。でも審査員が全部年下のコンクールなんて出たくない」

「この世は男も女も嘘ばかり」聞き覚えのあるフレーズから始まった『狼おっさん』
「ね~かあさん、僕ほんとは、ほんとは、黒人さんだよ」
このお噺は、イソップ寓話のひとつ「狼と羊飼い」別名「オオカミ少年」を下敷きにして作られたのでしょう。登場人物は、狼に囲まれている少年と、そのおじさんのお噺です。
狼に囲まれて命の危険を感じている少年、助けを求めおじさんのところへ。その切迫した緊張感ある少年の状況と、まったく意に反さないおじさん、その認識の”差”が笑いの種になってました。
「おじさん、狼が出たんだ、正確には狼の群れに囲まれてます・・・ワシントンの桜の木といってな~・・・・・」
文字通りの”緊張と緩和”笑いの基本原則を配置した、シュールで、楽しいお噺でした。

「遠くから薄眼で見ると、僕結構太ってます、スパゲティーが好きだから・・・・今夜ナポリタンスパゲティーとミートソーススパゲティー、どちらがおいしいか論争に、終止符を打ちたいと思います」と始まったのは「食事」

「じっさま、今年もご苦労様でした、収穫したばかりの新米、ばっさま今年も上等、上等、新米を食べるそれは儀式みてえなもんだ」で始まったのは『新日本風土記』

オムニバス的に4話を一席に。よく計算された、行間の面白さ。これからどんな活躍を見せてくれるのか、ポテンシャルを感じさせてくれる一席でした。感謝

  • 瀧川鯉八さん

    瀧川鯉八さん

出演が予定されている定席
浅草演芸ホール12月上席 前半 12月1日~5日
新宿末廣亭12月中席 12月11日~20日
出演が予定されている落語会
2015年11月26日お江戸日本橋亭定席 日本橋成金
2015年11月27日新作落語せめ達磨Vol.59
2015年11月28日新宿末廣亭 深夜寄席
2015年11月29日エニスホール開館20周年記念 ”えにす寄席”
2015年12月26日大成金 第二部

【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」11/13 公演 感想まとめ