渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2015年 11月13日(金)~18日(水)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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11月14日(土)17:00~19:00 昔昔亭A太郎、三遊亭歌太郎、立川左談次、柳家喜多八

「渋谷らくご」 左談次 VS 喜多八!奇跡のオジサマ競演

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プレビュー

渋谷らくごに、左談次師匠が登場です。いままで生きてきて、「うわ!このおじさん、むちゃくちゃ面白い」という、面白くておしゃれな雰囲気を持っているおじさんいませんでしたか? 日本全国の面白くておしゃれなおじさんの頂点が左談次師匠と言っても過言ではないでしょう。どこか親しみがあって、照れ屋で、江戸の香りをたっぷり含んでいる空気。毒が効いた現代的な刺激もある。最高です。

それに対するのは喜多八師匠。喜多八師匠が放ち続ける、いかがわしくてちょっぴり大人な雰囲気。こちらはダンディーといった感じ。落語を愛し、そして落語に愛される男。毎回毒づきつつも、お客さんを感動させる高座はこの「渋谷らくご」の名物です。

お二人とも、お酒が大好きでしたが、訳あって今はお酒を飲まず、身体が細くてセクシー! 普段はなかなかおなじ会に出られないお二人ですが、ついに渋谷らくごで競演です。

A太郎さんと歌太郎さん。端正な顔つきのA太郎さんから放たれる不協和音さえ感じてしまう新作は、渋谷らくごの客席で毎度のように笑いの渦が巻き起こっています。古典もなさいますよ。歌太郎さんの、正当な古典落語に見えるのに、いままでの古典落語とは違った新しい視点を提供する落語。客席と古典落語との距離感を縮めようと戦っている落語家さんです。

レビュー

文:えり Twitter:@eritasu 20代女性 事務 フラメンコが趣味のOL

11月14日(土)17時~19時「渋谷らくご」
昔昔亭 A太郎(せきせきてい えーたろう)「文七元結」
三遊亭 歌太郎(さんゆうてい うたたろう)「磯の鮑」
立川 左談次(たてかわ さだんじ)「天災」
柳家 喜多八(やなぎや きたはち)「もぐら泥」

「今、この瞬間、この場所にいるという贅沢」

【メガネぶん投げ文七元結】

  • 昔昔亭A太郎さん

    昔昔亭A太郎さん

Twitterで「高座で立ったまま見下ろされた」「メガネ客席に投げた」「生着替え見た」「女装してた」「女装写真のクリアファイルもらった」「前歯がうさぎっぽい」などなど気になる情報がたくさん流れるA太郎さん。
ずるい!気にならずにはいられません。嘘みたいな情報の真偽を確かめたくなります。

「様子がいい」ってこういうことだろうなという感じの姿勢の正しい男前。個人的には、イケメンというよりハンサムって感じのイメージです。変わったことをしていても、見た目の実直そうなイメージとのギャップで、不思議と魅力的に映ります。今日はまさかの「開口一番、文七元結」!ちょうベテラン師匠がお二人も控える中、あえて開口一番で大ネタをかけちゃうというその状況がたまらなくおもしろい!

変わった演出のサプライズも、「新作」と「マジの古典」のギャップも、凝ったプレゼントも、ファンが喜ぶことを一番に考えている感じがして、そこがブレないからかっこいい。男性ファンも女性ファンも虜になるのがわかります。

正直言うと、今まで文七元結は「長兵衛に共感しづらい」とか「文七が嘘つきでなんか嫌な感じ」とか、納得いかない部分が多く、あまり好きな噺じゃありませんでした。
でも、長兵衛さんが文七に50両をあげるかどうか悩む場面。それはそれは辛そうにたーっぷり悩んでいて、すごくリアルで、一緒にやきもき。結局あげちゃうわけですけど、なんだか(長兵衛さん粋でかっこいい…!)って思えました。
ついでに文七のことも(なんか、しょうがなかったのかな。きっと真面目で良い人なんだろうな)って思えました。

ちなみに、ぶん投げたメガネですが、投げる用(?)の安いメガネなのかなと思ったらガチメガネだったようで、高座降りた後、前座さんが「メガネを拾った方いらっしゃいますかー!」と保管してたお客さんの元へ回収しに行ってました。
メガネの代わりに、オリジナルクリアファイルをプレゼント。優しいです。
高座降りるとき、メガネ投げたことを忘れて(メガネメガネ・・・)と座布団の辺りを探しちゃったA太郎さんにグッときました。

【歌太郎さんの笑顔の裏の情熱】

  • 三遊亭歌太郎さん

    三遊亭歌太郎さん

「磯の鮑」っていう噺があるのは知っていましたが、聴くのは初めてでした。
磯の鮑って「片思い」っていうロマンチックな意味で使う言葉だと知って驚きました。下ネタだと思ってました。

「(文七元結長すぎて)持ち時間15分しかないじゃねーか!」なんて愚痴りつつも、にっこり笑顔でいい雰囲気。
噺に入ると、まるでその時代にタイムスリップしたかのようなしっくり感。
歌太郎さんの良く通る、はつらつとした声が、当時の登場人物たちの粋な雰囲気を感じさせてくれます。
そして与太郎の気の抜けた声や表情とのギャップが激しく、もう何を言ってもおかしくて仕方ない!

その後「次は俺が文七やるよ!」というツイートを拝見しました。
メラメラと情熱的でかっこいい!歌太郎さんの大ネタ、今からとても楽しみです!

【渋谷で左談次師匠】

  • 立川左談次師匠

    立川左談次師匠

「ここまで来るの大変でしたよ。ここへ来て高座に座っただけで良いもん見たなーと思っていただければ」と、今年の春に足を骨折された左談次師匠。

雨の中、人混みの渋谷の上り坂は20代の私もウエーと思います。
でも、それを乗り越えればシブラクが待っている!初めて左談次師匠の高座が見れる!と思うと、移動時間さえワクワクタイムです。

左談次師匠は映画俳優さんのような整ったお顔立ちでいらっしゃるけど、にこにことお茶目な感じもして素敵。
笑ったら不謹慎かしらと思いつつも、骨折したときのお話がとにかくおもしろい!!
まくらと言うか漫談のような雰囲気で、途中扇子で床をバシバシ叩いていたりして、なんだかすごく「噺家のお師匠様」感にうっとり。

そして「天災」へ。
「べにらぼうなまる」って凄いインパクトのある名前だよなぁと改めて思いながら、心地よいリズムにさらにうっとり。
「お・わ・か・り・か?」
「わ・か・り・ま・せん!」
という何気ないやりとりにもキュン。
喜多八師匠とご一緒に出演されたレアな会。とても贅沢な気分です。

【今、絶対見ておくべき人】

  • 柳家喜多八師匠

    柳家喜多八師匠

私、今、喜多八師匠を絶対に見に行くべきだと思っています。

喜多八師匠はすごく格好つける方というか、「こういう噺家でありたい」という明確で強いイメージをお持ちだと思うのです。
弱いところは見せたくない。かっこ悪いところは見せたくない、見るな、と。
そして、高座ではすごくエネルギッシュなお姿を見せてくれます。そういうところが、かっこいいと私は思います。

今!見に行くべきです!

というわけで、かっこいいところだけお伝えしようと思います!
(1)ニヤリと笑った時の口元の皺

(2)眉を上下に動かすおどけた表情

(3)セリフのない場面の仕草
泥棒が丁寧に地面を掘り進める場面はセリフなし。エアコンの微かな音や自分の唾を飲み込む音でさえ邪魔に感じるほどです。会場全体がシンと耳をすませて仕草とその音に集中していました。

(4)低く深みのある声
腕を縛られた泥棒が酔っ払いに「おい…」って声かけるときの低い声。たまりません。

(5)「噺家は謙虚さがなくちゃぁ」と仰るところ。

見れば見るほど、喜多八師匠がどれほど落語を深く愛しているか、佇まいから伝わってくるような感じがします。
仕草のすべてを見逃したくなくて、まばたきするもの惜しいほど、心酔して見つめていました。至福の時間でした。

【この日のほかのお客様の感想】
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